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極楽蝶華

 




怖いかどうかと聞かれたら、正直怖い。


ただそれは、獅子緒先輩みたいに物理的に怖いんじゃなくて、何と言うか……


「無理しなくていいよ。
そう思われるように振る舞ってきたから、当然だって。
……やっぱり怖いって、思ってた?」

ふふ、と小さく笑った久遠先輩が小さく首を傾げてもう一度悪戯っぽく尋ねてきた。

その仕種に少しドキッとして、
口の中が渇いて水が欲しくなった。



『……正直、怖かった……です。
でも、それは、……あの、獅子緒先輩に対してみたいに、何か理由があって怖かったと言うより……何となく怖がっていたと言うか、

……平社員が副社長の前で恐縮しちゃうとか、……そんな感覚の方が近いかと、思います。
そ……れに、灰斗から聞いた事なんですけど……イマイチ、何考えてるか分からないって言うか……』


悠紀仁は知らないけど、灰斗は悠紀仁が転校して来るまでは結構頻繁に久遠先輩に口説かれていた。
モチロン性的な意味でだ。

それは俺達が中等部に上がった直後から始まって、今に至る。
生徒会にも誘われていて、何度も断っているのに親衛隊にも目をつけられるから面倒だと言って灰斗は迷惑がっていた。

そのわりに、当時はただの友達同士だった将治をたきつけたり、灰斗に問答繰り返して恋心を自覚させたりと自分の利にならないようなこともしていた。
ほぼ久遠先輩がキューピッドになったようなものなのに、でもやっぱりその後も灰斗を口説いたりちょっかい出したりするのは止めなかった。


「あぁ……僕が相原の事かなりしつこく口説いてたってこと?
安心してよ、本気じゃなかったから。……モチロン、遊んでた訳でもないよ?」


『それって……どう言う……?』

遊んでたって言うか、暇つぶしに口説いてたって言うのは俺も考えた。
だって久遠先輩は、学園内で恋人を作ったことは無かったし、関係を持ったという生徒の話も聞いたことが無かったから。(耳に入る限りでは)
灰斗のほかにも、口だけちょっかい出してる生徒が2人ほどいるらしいってのを聞いて口説くのが楽しいんだと思ってた。

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あきゅろす。
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