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極楽蝶華
軍師の真意はいかに
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からんころんからーん

入るときと同じ、優しいベルの音の余韻を残して智美さんが階段下に消えていくのが見える。

片手にデジカメを持って、随分と上機嫌だった。多分宣言通り悠紀仁と周りの人の写真を撮りに行くんだろう。




で、



「…………。」


何でこの人は出て行かないんだろう。
透君がついて行かないのは、まだわかる。俺らと同じくここで注文するみたいだから。
ただ、久遠先輩は私服や性格見る限りここのジーンズ注文するような人に見えない。何で俺らと共に残ってるのか謎だ。


「……ねぇ。」

『ハハハイッ!』


いつの間にか席を立ったのか、俺の横に腰を下ろしてきて心底予想外でビビった。
自分でも無意識に、背筋が伸びて手足を揃えて姿勢を正して座り直していた。


「そんなにかしこまらないでよ。」

『は、ぁ……』


久遠先輩が少し困ったように笑う。
いつも顔に貼り付けてるヤツじゃなくて、悠紀仁が一緒にいるときにアイツの鈍感ぶりに呆れて漏らした顔に似ていた。彰と潤も何が起こるのかと俺達のことをうかがい始めた。

透君は、ちらと横目で俺と久遠先輩を視界に入れて、少し逡巡するような表情を見せて何かを思い付いたのかまた注文書に視線を戻した。


その右手で、楽しげにペンがくるくると回っている。



「僕の事、怖い?」


その、少し困ったような笑顔のまま、久遠先輩は姿勢を崩して組んだ足を投げ出した。
学校では見たことのない雰囲気に少し困惑する。


ただ、俺は、壇上の久遠先輩と、人から聞いた評判しか知らない。
いつも笑ってる。男か女か、時々わからなくなる。外見は中性的。人を利用する所がある。

怒ると、無表情になる。


俺が知っているのはこれだけ。
悠紀仁から聞く久遠先輩は、前情報と大きく違って正直同じ人間だと結び付けることすら難しい。



ただ、今日見てきた久遠先輩(目の前にいる今も含めて)は
すごく人間くさくて、今まで聞いていた何かの“役”のような人物像とは乖離していた。


悠紀仁から話を聞いていた時は、好きな相手の前だから悠紀仁に合わせてるって言うか、変えてるんだと思ってた。

……けど、

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