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極楽蝶華
彼女の脳内では一体何が……
 


「秘書なの?!執事なの?!それが大切なの!!」

「父は悠紀仁様の御祖父様の秘書ですが、邸宅の執事長を兼ねています。
私は学生なのでまだその役にはついていません。」

「執事服は?バトラーが着てるヤツ!!持ってる?」


「持ってます。あの、写真いただけますか。」



珍しく余裕がない村上。
何だ、どんな写真なんだ?


散々な焦らしプレイに堪えて、ようやく念願の物を手に入れた村上。
いつもは無表情な温度の無い仏頂面が、……ポーカーフェイスに徹し切れず、明らか喜びを隠し切れず嬉しそうに口の端を歪めている。
……怖ぇ。


軽蔑だとか嫌悪だとか、負の感情以外表に出してるところ見たことなかったから(しかもそれですら普段の無表情と比べて、という微々たる差異だが)嬉しそうにしてるとか楽しそうにしてるとか満面の笑みとか見慣れなさすぎてマジビビる。


あれだよ、「今夜はN.Y.で一件も犯罪が起きませんでした」とか言われても喜ばしいことの筈なのに逆に怖ぇだろ?
それと同じだ。



『で……それ、悠紀仁のですよね?写真。どんなのっすか?』

「あら、意外とフレンドリーね君。そーよユウちゃんの写真。
名前聞いていい?」

『春日不動、下の名前は不動明王の不動、です。
悠紀仁と同い年で学校の寮は同室っす。』


何気に「今現在1番近くにいるよアピール」をしつつ村上の方を視線だけで確認した。
が、もらった分すぐに手帳に挟んで鞄にしまっちまったもんで、どんな感じに写ってるのかよく見えない。


「……寮が、同室……!」
『はい。……俺も写真貰っていいっすか?』


「あ……うん、ごめんね、あんまりの神設定に意識を失いかけてた。」


……かみせってい?


ハッ、と何かに自分を取り戻した様子の智美さんがキラキラした瞳で俺と……悠紀仁を交互に見た。
なんだよ。なんなんだよ。

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