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極楽蝶華

 

自分の不甲斐なさに欝々として落ち込んでいると、いつの間にか智美さんが戻って来たみたいだった。

そして何やら、手に何枚か白い紙……写真の裏地か?らしきものを持っている。



「はい、自己紹介を希望します。ユウちゃんとライちゃんは知ってるけどね。残りの子達ね。
私は渡部智美。そこにいるカゴメさんの妻ね。
職業は小説家で5歳になる娘が一人います。歳は20代ってことでもう触れないで。」


はい、と指を揃えた手の平を向けられて、一瞬ほうけてしまった。
その時1番智美さんの近くに立ってたからなんだろうけど、いきなり話を振られるとは思ってなくて、変な声まで漏れた。


『は?』


「え?やーねぇ。敵意剥き出しにしないでよ。」


少し眉を寄せた美女が不満そうに腕を組んで俺を軽く見上げた。

いや、別に、アンタに敵意があるって訳じゃ……

ただ考え事してただけで、と伝えようとしたら横から入ってきた人物にそれを遮られた。


「失礼ながら先に自己紹介をしても宜しいでしょうか。
初めまして、村上隆也と申します。歳は17、高校2年、悠紀仁様の家に代々仕えている家の者です。以後よろしくお願いします。」

深々と頭を下げた村上に、かなりの違和感を感じた。礼儀というものを何よりも重んじるこの人が、たかだか自己紹介とは言えど話してるところに割って入って何かに急ぐように矢継ぎ早に自分の言葉だけ喋ってるとか……その光景はかなり異様なものだった。



「え!仕えてるって……主従?!執事?!秘書?!」

「私はまだ学生ですが、ゆくゆくは。
質問を遮って大変申し訳ないのですが、手に持ってるその写真は私達への【餌】ですよね?
喜んで釣られるのでもらってもいいでしょうか。」


村上が、不自然なほど口早に智美さんをまくし立てている。

そして、その口元は、堪えてはいるが……しかし確かにうっすらとだが嬉しそうに口角が上がっている。



……智美さんは、俺に話をふったとき皆には背中を向けていた。つまり皆からは写真に写ってるものが何なのか見えていたことになる。


村上が、こんなになって、嬉しそうになる、そんな写真。



…………悠紀仁のか!!
(ここまでの思考わずか0、2秒)

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あきゅろす。
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