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極楽蝶華

 



『なんで・・・・獅子緒先輩がライちゃん、なんですか?』

本名をもじってもライの二文字は出て来ないのに。
それにそのあだ名は敦さんがつけたものではないっぽいし。
(敦さんは別の名前で呼んでるから)


「あぁ・・・・それは・・・・
ライちゃん、話してもいい?」


「あ?何を?」

「ライちゃん、ってあだ名の事。」


「あぁ、それか。
こっちじゃそう名乗ってるんだよ。幼名のニコライからもじって。
【圭介】はロシア人の母親が死んでから親父に付けられた名前だ。」


母親は死んでいる。
初耳だった。顔立ちから純粋な日本人ではないとは思っていたけど、ロシア系の血が混じっているということも。


『・・・・でも、ロシア系ならニコライだったら愛称はコーリャになるでしょう。
何でそんなところで区切ってるんですか。』


あえて、母親については触れなかった。まだそこまで踏み込めるほど親しくはない。
それに、周りでは奈緒さんしか知らないがうちも家庭にややこしい事情を抱えているため内情をつつくのは気が引けたし。
別に隠してる訳じゃないけど兄貴達と俺の母親が違うとか聞かれたりすると俺だってめんどくさい。


「ちょっとバイト先に登録するのに名前が必要だったんだけど、本名は使いたくなくてな。
 ニコライもコーリャも他にいて、その場で適当に付けられた呼び名だよ。」



『バイト先?
そんな・・・・本名登録しないで済むとこで働いてるんすか。』

正直水商売か裏の世界ぐらいしか思い浮かばない。
だがしかし多分ではなく獅子緒さんに接客業は無理だから裏の世界の関係の仕事だろうか。



『・・・・ちなみにどんなとこですか?』


ちょっと好奇心が勝って尋ねてみた。恐らく以上の確率でそこは違法な仕事場であることが予想されるので一応声をひそめて。

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