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極楽蝶華
2
 



一瞬呆れたような顔をした獅子緒先輩に、何だろうとは思ったけど特には深く考えなかったのだが。


「ホラ、今日おるやんそこに。」

指差したのは、澤村さんが持って来たらしいステッカーだらけのパソコン。


「……彼女の画像、入ってるの?
でもさっき、悠紀仁の画像検索かけてた時は……写真のフォルダに女の写真なんて一枚も無かったけど。」

「何言っとるんじゃ。中身のデータのことやないで。」





そして今に至る。

確かに男じゃない。彼は言った。男ではないと。それは確かだった。

でも人間でもないじゃないか。


「コイツ、可愛いじゃろ?
画面はSHA×Pのそのまま使とるけど、ノパソのサイズながら俺に必要な機能はす!べ!て!入れてあるんよ。
残念ながらノパソとして使用する以上入れられるスペースには限りがあるけぇ、ビデオカードは代替付けたマザーボードで補って入れられなかったんだが、CPUはノパソとして異例の数のコア載せてあるんよ。
さらにオーバークロックさせてあるから演算速度はそこらのデスクトップの軽く倍はあるんちゃうかな

まぁ、温度上昇と電力消費激しくなるけどそこは!マサーボードの基盤弄って回線とチップ増設してなんとかしてるわ。
でも冷房効いたとこでしか使えんけど、そもそも俺のえーこちゃんのドライブに悪いから外なんかで起動せんし。
マザーは他にも色々手ぇ加えてあってな、さっき言ったみたいにIDEとPCIスロットの通路はモチロン、ノースのDDRDIMMに指してるメモリはこいつの為に特注したし、そもそものPCIには今後も増設の可能性を持たせて拡張スロットを通常より多く装備してんねん!


「敦。」

「何やねん今えーとこじゃろうが!俺の可愛い可愛いえーこちゃんの魅力をだな……」

「だから、……あのなぁ。」

「魅力をだな、小1時間……」


もはやまともに突っ込む気があるものは皆無だった。


「分かった、分かったから、信じるから、黙れ。」


少し疲労した表情をした俊ニィが右手を前に出して制した。
隣の春日さんも辟易とした表情をしている。



俺もまさかパソコンに名前付けて「恋人」にしてる人間がいるとは思わなかった。
とするとこれも所謂【惚気】に分類されるのだろうか。

そんな事をボーッと考えていた。
……世界は広いものだ。

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