極楽蝶華
他人のフリが出来ない故に
「……あんなぁ、にぃちゃん、いくら好きゆうてもピンクのハート散らして囲って【俺の嫁】書いたの待ち受けにすんのは間違ぉとる思うんじゃが。」
「何がだよ。未来にはそうなる予定なんだから問題は無いだろ。」
「……そうゆうことじゃ……そうゆうことじゃないんよ……」
敦の叫びは猛の耳には届かなかった。
そうか。見たことはなかったが……猛のケータイの待ち受けは悠紀仁なんだろうな。
多分女装してる画像の。
で、それにハートを散らして【俺の嫁】と書き込んでる、と。
何だか無性に猛のケータイを握り潰したい。
いや、あいつが飲んでる烏龍茶の中に水没でもいいかもしれない。
俺も猛も透も無様な真似をしたことは一度も無かった。
成績は猛と奈緒としか争ってないし、兄弟揃ってスポーツでも敵と呼べる存在はお互いしかいない。
自惚れではなく見目も整っている。
女を(男もだが)寝とるのはいつも俺達だったし……物心ついた時から常に俺達は【勝者】だった。
みっともない言動をとったことも無いからこんなモノ今まで知らなかった。
そうか、これが【恥ずかしい】と言う感情か。
穴があったら猛を埋めたい。
自分とDNA配列が同じ目の前の弟をため息混じりで見遣る俊。
顔が同じ所為で、髪型や服の趣味が違うと言えど一目で兄弟と判別がついてしまうのが今だけは厭わしい。
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