極楽蝶華 触れる体温 □■□■□■□■□■□■ 「……ハッ、……ん…ぅ…」 俺に寄り掛かり、耳元で荒い呼吸をしながら服を脱いでいく…… ――俺が支えるために掴んでる体は、溶けそうなくらいに熱い―― なるべく、前及び下を見ないように――見ないようにして……静まりそうに無い心臓の鼓動と、触れているところから熱くなっていく自分の体温に混乱して、頭がおかしくなりそうだった。 ――今までこんなに動揺したことなんて無かった―― 人一倍あるはずの常識も理性も気を抜けば飛んでいきそうだ。 「……ッ、すいませ……っ。……抱え上げてもらえますか。 ――力、入んなくて――下脱げないんです。」 『……あ、あぁ……』 背中に腕を回して持ち上げる。 ……っ、 ……濡れて冷えた肌と湿った髪が直接触れて…… 熱と一緒に――俺から……奪っていく。何かを。 『……!』 腕の中の銀色が、身を捩ったので――拒絶されたのかと思い、……思わず体が強ばる。 ――心臓が、より一層大きく跳ねた。―― 体を捻った先で俺が用意した服を取るのが見えて…… ――心臓を鎖でがんじ絡めにされたみたいな緊張が解けた。―― 衣擦れの音がしばらくして、下着と制服のズボンを着替え終わったらしい銀色の力が抜けて、ソファに倒れこんで。 ……とりあえず俺は気を鎮めるために、彼が脱いだ服を拾って洗面所へ行き、洗濯機へ放り込んだ。 こんな格好でソファに転がしといたら熱が上がりそうだ…… 用意してやった長袖のパーカーを着せ、前を閉めようとジッパーを掴んで上に引き上げた。 「……っぁ、……」 ……途中、指が少し胸に触れて目の前の紅い唇から声が漏れた。 ずくん、と身体が熱く疼く。 ――俺らしくない……っ! 何故こんなに心を乱されるんだ…… そんな考えを払拭させるように頭を振ってガタガタ震える華奢な体を抱き上げて寝室に向かった。 ――力を入れたら壊れそうだ―― はかない、繊細な…… ……硝子細工。 腕の中の人物をベッドに寝かせ、クローゼットの中から備え付けの羽毛布団を出して体を覆ってやった。 顔が紅い――熱が高そうだ [*前へ][次へ#] [戻る] |