極楽蝶華 触れた体温 □■□■□■□■□■□■ 『……ユウ……?』 突然、腕の中のユウが脱力したように崩れ落ちそうになる。 『……、おいっ……!』 肩に腕を回して何とか抱きとめた。 「……つぅ、……」 右肩にある噛み傷が痛んだらしく、顔が歪む。 悲痛な声が形の良い紅い唇から漏れた。 『……ごめん。』 さっきは嫉妬に我を忘れて手加減をし損なった―― いや、どこか意図的にしなかったのかもしれない。 ――とりあえずユウの体には俺の跡が3つ残っている。 虚ろな目をして宙を見つめていたユウに、もう一度口付けた。 「――っ、」 唇が触れた瞬間に、体中がバネになったかの様に跳ねて腕の中から逃げられた。 『――おい、待てよ―っ』 今、唇が触れたとき……体は冷えていたのに、上気した顔だけ――凄い熱かった。 ――熱がある。おそらくさっき水に落ちて、濡れたからだで冷房の効いた中を動き回ってた所為だ。 ……次に腕を伸ばした時よりも速く、走り出して行く 追い掛けるよりも遥かに先を行く銀色…… 二階の窓から踊り出て、まるで質量なんか無いみたいに地面に降り立つ。 ――あの時と一緒だ。 また手を擦り抜けて逃げて行ってしまう。 でも……今度は逃がさない 捜し出して……。 絶対に、放さない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |