極楽蝶華 2 「……最初にしたみたい、にっ……俺に……俺の、口ん中、……舌で舐めて、深く、まで、してください……」 恥ずかしそうに、何かを堪えながら。 上気した頬が、涙をこらえているような目元が、真っ赤に色付いて 銀色から覗く耳の先まで、今にも溶けてしまいそうな位紅色に染まっていた。 私は、先程の言葉に理性を失わないよう、敢えてゆっくりとした動作で悠紀仁様の頬に触れた。 瞬間、瞼が少し伏せられ、何かを期待した目で下から見つめられる。 その瞳に気が急くのを必死で抑えて、また意思確認をするべく聞いた。 『……それは、ディープキスの事ですか?』 「……は、い……。」 答える悠紀仁様は、また不満そうだった。 『貴方の咥内を舐め回して、舌を吸って、歯列の裏まで粘膜でなぞる……その事を言っていますか?』 「…………はい。」 『……それを、して欲しいのですか?』 「…………。」 『悠紀仁様?』 ちゃんと、ちゃんと確認をしないと今すぐにでも全て奪ってしまいそうで……自分を見失いそうで恐ろしかった。 「……して、……して欲しい。隆也さん……」 既に薄く開いている唇を舌で掠めて、覆うように全体を塞いだ。 中に舌を入れてすぐ、絡んで来た悠紀仁様の粘膜に……自分でもぞっとする程大きい欲求が首をもたげて来たのに驚いて、急いで唇を離した。 「………なん、で……?」 詰問口調と少し咎めるような瞳に、もう一度保証を求めた。 『今から、貴方の口の中に舌を挿れます……いいですか?』 「……ん、。」 薄く開いた瞼の奥から、濡れた瞳が私の欲望の根元を掴んで思い切り揺さ振って来る。 本当に深い口付けをしていいものか、とキスを躊躇っていると、涙目のまま怒った表情になる。 「……俺の、口ん中……舐めて。隆也さん。」 何故してくれないのか、そんな剣幕で言われ、自分の状態も忘れ唇を押し付けていた。 ……好きな相手に求められて、断るには、まだ私は理性が足りないのだと思う。 [*前へ][次へ#] [戻る] |