極楽蝶華
確認と理解
「…………。」
『……悠紀仁様?』
俯いたまま押し黙られて、何をすべきか判らず悠紀仁様の顔に垂れた髪の毛を一束指に絡めて耳元に囁いた。
「……キスは、しなくて良いのですか……?」
瞬間、ぴく、と身じろぎした悠紀仁様が顔を上げて少し不機嫌そうにこちらを見つめて来た。
キスを、しなくていいなら、……今自分の感情が決壊する恐れは無いから、
今度口付けが欲しい、と言われる時までに(もしまた言われるなら、だが)思考力と判断力を取り戻しておこうと思ったのだが。
「……して、欲しい……」
『……キスを?』
「ん。」
確認を取らないと、不安だったから。
本当に触れていいのか、と、確信が持てなくて。
その返事を聞いて、無言のまま唇に触れるだけの口付けを落とした。
『……どうなさいましたか?』
唇を離して顔を見ると、不機嫌そうな、不満そうな顔で自分を見上げている悠紀仁様と目が合った。
「…………キス。」
『今、しましたよ?』
正直、これ以上悠紀仁様に触れていて、自分がこのまま襲いでもしないか不安だった。
「…………。」
『どうしました?』
襟近くに手が置かれ、下から覗き込まれる。
『……もう部屋にお送りしますね。』
「ちが……違う。」
その目は何かを訴えているようだったが、要求に見当は付かなかった。
この場を離れたくないとしたら、一体悠紀仁様は何を求めているのか。
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