極楽蝶華 裏表。 □■□■□■□■□■□■ こんこん 「失礼しまー……す。」 少し控え目に引き戸から顔を覗かせたのは、悠紀仁。 斎と今後の事情の口合わせを行っていた所だった隆也が不機嫌そうにしかめられていた顔を綻ばせた。 『悠……ユウ様、何かご用でしたか?わざわざ出向かせてしまって申し訳ありません。』 「いえ、隆也さんの怪我、ちょっと心配で……お見舞い?したかったんで。」 裏方の仕事を悠紀仁に見せたくないらしく、改ざんしていた途中のカルテをそれとなくファイルに仕舞って悠紀仁の視界から遠ざけた。 後ろを向いた背中、悠紀仁に笑いかけながら指先で 【片付けておいてくれ】 とファイルを叩いて使役動詞。 「…………はいよ。」 別にいいけどさぁ、と言った風に鍵のかかった引き出しに書類を戻す斎。 「隆也さん、怪我平気ですか?」 『はい。……特に痛みもしませんし、この分ならすぐに治りそうです。 心配をかけてしまったみたいで……すみません。』 「や、やだなぁ、隆也さん!!自分の大切な人が怪我したら心配するの当然じゃないですか……そんな、申し訳無いとか考えるのやめてくださいよっ。」 ちょっとむっとした様に怒る悠紀仁様。 本当にこの人は……可愛らしい。 『では……わざわざ心配してくださって、ありがとうございます。』 「ふぇ?……あ、あの…… ……どういたしまして。」 真っ赤になって照れながら俯く悠紀仁。 そんな反応に顔を綻ばせながら隆也君満面の笑み。 斎はまたも目を剥いてそんな隆也を見る。 やっぱり隆也笑わないことで有名。 [*前へ][次へ#] [戻る] |