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創作
嘆涙(彼女持ち→ネコ/悲恋/バッドエンド)


聡(サトシ)が『お前に話があるんだって』とニヤニヤ笑いながら連れてきた女の子は俺の友人の久美だ。



「あのね、私…克哉(カツヤ)が好きなの。それで…よかったら付き合ってくれない?」

久美は小さくて可愛くて、たぶん他の男からしたら完璧な女の子。倍率も高い。


…けれど俺にとってはどれもどうでもいい事。

重要なのは聡か、そうじゃないか。

「ああ、俺でよければ。よろしく。」



それから一週間。聡が俺の肩を叩いてじゃれつく。

「よー克哉飲み会行くかー?」

「あー悪い今日行けねーわ。」

「んだよ〜久美ちゃんかー?んー?いーねー。」

「馬鹿今日は違ぇよ。」

ニヤニヤしながら冷やかす聡をどついてからまた、ツレ連中と騒ぎ始める。

聡がいつものように大きな声で笑ってる。常からハイテンションの周りの奴等が突然聡にハグした。

ハラワタが沸騰するほど嫉妬にかられた。
もう俺にその資格は無いとわかっていた。


わかっていた。

わかっていても、どうしようもないほど、全身に焼けるような思いが走る。

引き剥がしてやりたい。
俺だけが聡に触れていたい。


叶わない。



彼女は知っている。
俺が聡を好きなこと。

『それでもいいよ。』

『私があなたを好きな気持ちは変わらないよ。』

『彼を好きなままでいいよ。』

彼女は泣きそうになるのを必死で堪えて震える声で言った。堅く手を握り締めて、きっと久美の手には彼女の爪痕がくっきり残ってたんだろう。それを隠すように俺に手の甲を向けたままで、暫く彼女は黙っていた。もう一度、両手を握り締めて顔を上げた彼女は強い女の顔をしてた。

『そんなに好きなんだもん、素敵なことじゃない!』

『いつか私のこともそのくらい好きにさせてみせるよ。』

彼女は笑って俺を抱き締めてくれた。彼女の方がずっと辛いのに、彼女の方がずっと強くて、俺は彼女の腕の中で声を殺して泣いた。震える俺の肩を彼女は優しく擦ってくれた。

俺は非情にもこう言った。

『俺は聡以外愛せない。』

久美は泣かなかった。
目に涙をいっぱい溜めて、一筋も溢さなかった。

『知ってる。』

彼女は俺の陳腐な言葉じゃ表現出来ないような複雑な表情で話し始めた。

『聡君の事、凄く好きなんだよね。』

きっと彼女の言葉はこう続く。

《私よりも》

そう言われたなら俺は答える。

《何よりも》

『もし…克哉君のその想いがかなったら、私の事…気にしなくていいよ。』

《聡君の事を忘れるために私を使おうとして、付き合ってるんでしょう?》

《ごめんね》

俺の返事はお見通し。
久美は肩をわなわな震わせて、それでも声を荒げる事無く浅い呼吸を繰り返してる。


これ以上傷付かないように
これ以上傷付けないように

彼女は泣かない
俺は言わない


聡が好きだ。

世界中の全てをなげうっても釣り合わないくらい。

聡が好きだ。

このまま聡を好きでいたらきっと聡を傷付けてしまう。
聡を傷付けないように、とやったことで彼女を傷付けた

構わない。

聡以外、いらない。


叶わないのはわかってる。
だからきっと、俺はこのまま
聡以外の奴と恋愛して、
聡以外の奴にキスして、
聡以外の奴とセックスして、
適当に結婚して、
子供ができて、
ジジイになって、
聡を好きなまま、死んでいく。



嘆きは未だに尽きなくて
涙も渇れてくれないけれど


全部隠してしまえるくらい大人になれるのならいいのに。
聡を好きでも苦しく無いくらい人生を悟れるならいいのに。


聡の事を好きでいるのは辛いけど、
どうやら、聡の事を好きじゃなくなるのは俺には出来ないようだから。



どうか好きでいる事を許してくれ。







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あきゅろす。
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