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王子のソレッラ  
第三話  声なき少女





「ああ ここからが本題だ
 実は胎児…アイラと言うんだが
 彼女は・・・・・
 
 完璧なはずなのに、一言も口をきかないんだ」


苦々しげに口にするヴェルデ
その表情はいかにも不満だと訴える


「八年前、
 やはり本物の胎児のようにはいかず、
 長い年月カプセルの中で赤ん坊を成長させ、ようやく出産と呼べる日が来た。

 それからは城の、ごくわずかな者たちの手で一生懸命隠されてきた。
 アイラはあの国の次期クイーンにし、国を復興させるために。
 知能も良く、やはり幼さゆえかドジな面もあるが
 年相応のまさに立派ともいえただろう

 だがあの子はこの8年間。産声以外で声を出したことはない

 私の研究が失敗だったのでは
 障害持ちなのでは

 さまざまな事を言われ、私は腹が立つ。
 実際彼女を調べたが、異常が見当たらない」


ルッスーリアの入れた紅茶に口をつけ、自分を落ち着かせようとする。
よほど不満がたまっていたのだろう
しかし、ジルとベルには関係ない。

こいつは何しに来た?
愚痴こぼし?
さっさと結論を言ってほしかった。


「そこで、だ
 私はこう結論づいた
 彼女は心理学的なる問題で、声が出ないのでは?

 親もいず、肉親もいず
 ただ自分が一国のクイーンになる為に育てられていることに不満を感じ
 そのストレスゆえ声が出ないのでは…と」


「へー で?
 王子には関係ね―し。」

「そうだぜ、ベルの意見に同感だ
 お前の所為で生まれたんだろう?
 お前で責任とれよ」


「そう思ってるよ。
 だから君たちに教えた。」


普段どおり我ままづく王子二人に
あっさり承諾を意味する言葉を出す。
それを納得しない者が別にいた


「「それはどういう意味だ(い)?」」


リボーンとマーモンだ
彼らは信じられなかったのだ。

自分の間違いを認め、あっさり責任を持つと話した目の前の緑のアルコバレーノを。
絶対に裏がある


「そのまんまさ
 もう私の研究は済んだ
 あとは彼らにすべての権利を渡し、好きなおもちゃにしたまえということさ」


何を言ってる
そんな心の声が聞こえてきそうなくらいバッサリと言ってのけた

ユニや綱がふざけるなっと立ち上がるも 聞く耳持たず
ヴェルデに何を言っても無意味だった


「あーつまり消せって言いてえの?
 ベルお前にゆずるわ、
 妹として育てたきゃ連れて来い
 殺したけりゃ殺しとけ」

「ちっ指図すんな
 まあ了解するけどよ」


双子の兄弟がそう話し合い、弟は窓から飛び出していた
 

ヴェルデに気を取られ、止めるのが遅れてしまったツナ達はただ
異国の見知らぬ姫君に対し 不安を募らせた



「なぜです、ラジエル
 何故行かせたの」


涙を目にため、必死で訴えるユニ。
ひとまず彼女を落ち着かせることからラジエル始めた。


「まあまあ、落ち着いてくださいよ姫
 あいつは殺したりしませんよ。」

「へ?」

「あいつは昔とは違い だいぶ落ち着きを持つようになっています。
 本当に成長しているなら
 心から俺らを求める妹の手をつかんでここへ来るはずです
 今のあいつなら…」


ベルが飛び出した窓を
ただ見つめるラジエルは
本当の兄なんだと
その場に居合わせた者たちの胸に刻ませた。

 

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あきゅろす。
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