過去拍手
無表情沖田シリーズ@
見ているだけでは何ともない。ただ心臓が激しく音をたてるだけ。
ほんの少しのそれで、
自分は人と比べて感情が極端に少ないらしい。
例えばクラスで何か盛り上がる出来事があったとしよう。周りの皆は笑ったり騒いだりしているのに沖田だけは無表情だというのだ。
別につまらないとか、騒ぐ皆を馬鹿にしているわけではない。
単にそこまで感情を出すまで気分が上がらないだけなのだ。
楽しいな、とか、面白いな、とは思う。だがしかし顔に出ない。出るまでない。
まったくつまらない人間だ。自分でそう思うのだからよほどだろう。
「総悟」
声をかけられ沖田はがばりと起き上がる。
がやがやと休み時間独特の音が聞こえる。
いつの間にかチャイムが鳴り授業が終わっていた。
居眠りをしていて号令の声も聞こえなかった。
「土方さん」
声をかけてくれたのは前の席の土方だった。
土方は沖田の昔からの幼馴染で、高校になった今でも常に一緒に行動している。
やけに整った顔を見てほぅと静かに溜息をついた。
「なんだまた寝てたのかよ。授業についていけなくなるぞ」
「・・・いいでさぁ。土方さんに・・・教えてもらう」
「また・・・人に頼って」
そんなんじゃ進級できねェぞ。
呆れたように微笑みかけられて沖田の心臓は急に騒がしくなる。ドクドクと鳴り、鳴り、顔に熱が集中する。
沖田は土方のことが好きだった。
それも昔から。思えば幼稚園の頃から好きだったかもしれない。
長い付き合いなのでその『好き』という気持ちにも慣れたから多分顔は赤くなっていない。少し熱いが、土方に気付かれるまではないだろう。
それほど沖田は表情の変化が少ないのだ。
だがしかし、一つだけ沖田でも慌ててしまう事がある。それをされるとどうしようもなく普段の自分じゃいられなくなる。
「あ、」
「?」
突然クスクスと笑い出した土方に沖田は慌てる。
な、なに、なにかしたの、俺。
「、?・・・?」
「あ、わり、ほら
寝癖ついてる」
そっと手を伸ばして髪に触れられた。
とん、とこめかみに土方の大きな手が触れる。
あ、あ、
あ!
「あ、あああああああ今、土方さん、なに、えぇっ、うわああああ!」
「うわっ、何だよ!?っていうかまたかお前・・・」
そう。土方に触れられるだけでもう駄目なのだ。冷静じゃいられない。ドキドキが止まらない。
触れられた今沖田は大パニックに陥っていた。
「あ、ああ、土方、土方さん、いま、ちょ、さわっ、さわ、うゃああ!」
「落ち着け!悪かったって!触られるのが苦手なのは分かってるから、悪りぃって、」
沖田は両手を頬に当てて真っ赤になる。
触った触った土方さんがおおおおおれの顔に触れたァァァ!!
「み、みないでェェェもう俺どうしよう恥ずかしい!どうしよう!土方さんどうしよう!」
「落 ち 着 け !ほら深呼吸!」
どうしようどうしよう言い続ける沖田につられて慌てる土方。
はぁはぁと無理矢理自分を落ち着かせ、沖田はいつも後になって後悔してしまうのだ。
「は、はぁはぁ(つ、つかれた・・・)」
「み、水飲むか?飲みかけだけど」
「・・・」
首を振って断る。か、間接ちゅーだなんてしたら、心臓、もたない。
ああ、こんな調子だったら憧れの両思いなんて程遠い。ただでさえ男同士なのに。
心配そうな土方の顔を見て、今度こそ顔が赤くなったのバレたかも、と沖田は少し不安になった。
(ほんの少しのそれで、私のこころはを狂喜の震えを報せるの)
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