これの続きです!
―you got a mail.―
【ブログ見ました。学校忙しそうですね。たまには息抜きも必要だと思いますよ。無理をしないでくださいね。】
【ありがとな。気遣い嬉しいよ。っていうか、こんな時間にメールくれるなんて思わなかった。今どこにいるんだ?】
【え、駅の近くです】
【なら近いな。昼はまだか?】
【まだです】
【だったら、近くのファミレスで何か食わねえ?
一緒に。】
「・・・え?」
それは青く果てしなく。
学校の帰り道、ブログを見ていた沖田は思いきってメールを打った。本当はそのブログのコメント欄にかきこめばいい話だが、何にせよ他の人に見られるかもしれないという恥ずかしさが襲ってくるので、コメントはいつもメールで済ませてしまうのだ。
数週間ほど前、ひょんなことで憧れのそのブログ主と友達になってしまった。その時交わしたアドレスは、今も大切に沖田の携帯に記録してある。そのアドレスを使って、今日もメールをやり取りをするのだ。
そのブログ主の名を、土方という。
土方は自分とは一つ年上の、他の高校に通うという所まで知った。他の高校なので、めったに会うことはできないがメールで会話もできるので、今はそれで満足している。
そして今日のメールの内容。【一緒にお昼を食べませんか?】
かぁぁっと顔が赤くなるのが分かる。
ちょっと待っててください!と急いで打って沖田は周りを見渡す。
たしかに駅近くだが、あまりファミレスなどに寄ったことがない沖田は肝心のその場所がわからなかった。たしかこのへん、ときょろきょろすると、信号を挟んで真向かいに黄色い建物。
あった・・・!
ファミレスを見つけて携帯を開く。またメールが着ていた。
【今から寄るから。中で待ってろ】
ぶっきら棒にも見えるその内容を読んで、もう一度その建物に目をやる。
すると、
「あっ、土方さん!」
「ん?あぁ、総悟」
丁度ファミレスに向かう途中の土方に会う。沖田は安心した。ファミレスで待ち合わせをしたことがないのだ。どうすればいいのか分からなかった。
「えと、お昼ってここで食べるんですかぃ?」
「うん。迷惑じゃなかったか?」
「全然でさ」
ふるふると首を振りながら歩く。今日の昼はコンビニでおにぎりでも買って帰ろうかと考えていた矢先に土方に誘われたのだ。むしろ嬉しい。久しぶりに会う土方に、ほころぶ顔は止められなかった。
「っていうか、何で今日は昼までなんだ?学校」
「あ、今日テストだったんでさ。だから四限目まで」
「だからか。あ、俺のとこもテストだったんだけどな」
学ランを指差しながら土方は言う。
うんうんと頷く。ブログを読んでいた沖田はもちろんそのことを知っていた。今日で長いテストがやっと終わったことも。
「総悟は、テストの途中とかじゃねェよな?」
「はっ、大丈夫でさぁ。今日で終わりましたよ」
心配そうに沖田を見る土方にはっとなる。ぼぅっとして見惚れてしまっていた。
恥ずかしい奴でぃまったく・・・。と心の中で呟き、片頬をぺちぺちと叩いた。
「おいしかったでさ!」
「そうだな」
昼も食べ終わり、二人は住宅街を歩いていた。
会話を交わしながら帰っていく。
「土方さんいっぱい食べるからびっくりでさぁ。あんなに頼むなんて」
「普通だろ。お前は食べなさすぎ」
ぽふりと頭を叩かれて、痛ぇと文句を言う。もちろん痛くないのだけれど、嬉しくて恥ずかしくて、その気持ちを隠したかった。
クスクスと笑う土方を見て、やっぱり年上だという事実を突き付けられる。その余裕が羨ましい。自分はいつも、緊張と動悸の狭間にいるのに。
・・・そう、沖田はもう、憧れで済まないほど土方に惹かれていた。
そろそろ分かれ道に入る、というところで突然悲しくなる。もっと話していたいのになぁ・・・。同じ高校だったら、まだ状況も変わっていたはずなのに。
「総悟?」
「・・・。」
いきなり黙ってしまった沖田を不審に思い、土方は覗きこむ。
見ないで、とでも言うように沖田は顔を反らした。
「おい・・・どうしたよ?」
「っ・・・」
勝手すぎる。
本当に、自分でも呆れるくらい勝手だ。勝手に不機嫌になって、勝手に悲しくなって、勝手に・・・好きになって。
「総悟ー」
「・・・、」
その優しさが憎い。頭を撫でるその手が優しすぎて、勘違いしてしまいそうだ。
勘違いしてしまうのだ。律儀にすぐ返してくれるメールや、真面目すぎる故少しの愚痴を漏らすブログ。嬉しそうに、総悟、と呼ぶ、その、口元・・・。
「そ、
!」
引き寄せる。
学ランの襟元をつかみ、そのまま寄せる。口を、口元を。唇を。
ふわりと土方の匂いがして、ぱっと離れる。
ああ、泣きそうだ。馬鹿じゃないか。勝手すぎるその行動は、土方を傷付けたに違いない。
「う、ぁ・・・」
「・・・・・・。」
珍しく驚いた顔の土方を見ていられなくて、下を向く。じわじわ浮かんでくるのは涙だ。止まればいいのに、止まればいいのに、馬鹿だ。本当に。ここで泣かれたらさすがに土方も呆れるだろう。
それより前に・・・嫌われてしまった。
「ごめ、ごめ、なさ、」
「・・・。なんで、キスした」
はっきりしたその言葉にびくりと沖田の肩が跳ねる。
冷静に、淡々と吐くセリフが怖い。謝るしか手段はなかった。
「ごめ、なさい・・・」
「いいから。答えろよ」
「好きで、
本当は、憧れだったはずなのに、それなのに、いつの間にか、」
好きでたまらなくなってしまった。
この気持ちが憧れだったらよかったのに。ブログを見ていた頃には戻れない。会って話をしてしまったから。
とても素敵な人だったから。
好きになってしまったのだ。
「そうか・・・」
ふぅと息を吐き出す土方が視界の端に見えた。どん底に突き落とされたかのような気分を味わう。ごめんなさい。こんな人に、好かれてしまって、おとこに。ごめんなさい。
「ごめ、」
「黙れよ」
ぼろりと耐えきれなくなった涙が落ちる。
・・・すると同時に。
「・・・んっ、!?え、!?」
「ん?」
至近距離で首をかしげる土方が見えた。いや、それよりも、前だ。前に、何が起こった。たった今、何があった。
唇に触れたその感触は、たしかに、でも、期待して落ち込むのは嫌で、でも、でも・・・!
「!?、!?」
「悪、俺、混乱すると口調キツくなんだよ」
「混乱・・・?」
「あぁ。別に、さっきの嫌じゃなかったからな?」
土方の両手で頬を挟まれて、こつりと額同士をぶつける。
さっきのとは、もちろんキスのことだった。
「ふぇ!?」
「俺もな、実は総悟気になってたんだよ」
「!!?」
「はっきりとは自覚してなかったけどな、でも、さっきのキスで分かったわ」
嫌じゃなかったし、と笑みを向けられる。近すぎる整った顔立ちに、沖田の心臓は破裂しそうだった。
身体は熱くて、少し震える。
「嘘ぉ・・・」
「嘘じゃねって」
「う、ひじかたさん、ひじ、ひじ、」
「クク、かわいい総悟」
とんでもない台詞が飛んできて、すりよる胸の中で沖田が跳ねる。背中に手を回し、抱き合う。嬉しい。
夢のようだ。
「えと、その、も、も、もっかい、して、」
「ん?もちろん」
ゆっくりと顔を寄せてキスをする。
啄ばむように繰り返される唇から、溢れそうだ。嬉しい気持ちと、幸せが。
「ふぁ、ひぅ、うれしい、」
「ん、総悟」
土方のバックに広がった空は青く、果てしなく、最初に会った1759の出来事を思い出す。
住宅街ということも忘れて、二人はキスを繰り返していた。
***
ありすさまリクで、『"空"の続き』でした!あの話、本当に気に入っていたので続きを書けて嬉しいです。そしてすごく楽しかったです・・・!
どうでしょう、続きになっていますかね・・・。くっ付けてしまいましたが・・・総悟が後ろ向きすぎですね・・・!すみません。土方は混乱していただけです。実は心の中ですごく嬉しいと思ってます^^
ではでは、リクエストありがとうございました!
書き直し可です!
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