それは赤い色をした手にすっぽり収まっちゃう折りたたみ式の電話だった。
元は戦時中アメリカ軍が使用していた回線がないトランシーバーが前身である。実用化されても普及はされないであろうと考えられていたそれは今や日本人の殆ど大半が持っているという驚きの結果になっている。まぁそんなこと持っている沖田は知ったこっちゃない知識だがとりあえず便利ということだけ言っておこう。

つまり携帯電話、無くてはならない代物なのだ。


「♪」

好きな曲をくちずさみながら慣れた手付きでお気に入りのサイトを覗く。
そのうち飽きて、どうしようかと考えた結果、一番好きなブログに直行することになるのは日常茶飯事。

さっき見たばっかりなのに。

だけれど決定を押してしまう自分。少しは期待したっていいじゃないか。
だいすきなブログなのだ。もしかしたら、もう更新しているかもしれない。

沖田の場合、携帯は無くてはならない代物だったがそれは電話やメールをする意味ではない。
今一番好きなブログ。それを覗くために携帯はあるようなものだった。


ふっと辺りが暗くなった。
手を止めて空を見上げてみる。
結構な大きさの雲が、太陽を遮る。暗い。
今日は風が強いから、またすぐ太陽も顔を覗かせることだろう。

沖田は学校の帰り道、携帯を弄っていた。


まぁちょうどいいかな。太陽の光が邪魔で、液晶が見にくかったんだ。
そう心で呟き、毎日欠かさず覗いているブログを見た。

おしゃれなブログだった。
全体的に黒をあしらったシンプルなトップ。
ところどころに赤い模様が入っていて、それがいい具合にマッチしている。

カチカチとスクロールさせ、最新の記事に目を通す。
そのブログの主は多分高校生で、沖田とひとつ年が違うくらいの人だった。
何故こうにも引きつけられてしまったのか、毎日このブログに来ちゃうのか、それは沖田自信にも分からない。
見た瞬間から気に入ってしまったのだ。

前に一度、ソウゴという名称でコメントを残したことがあった。しかし、その後ものすごく恥ずかしかったので、もう二度とコメントなんかするもんかと思った。


やはり更新されていないブログをもう一度読み返す。

掃除がダルいだの書いてあったが、最後まで読むと結局先生にはぐらかされてサボれなかった、
明日こそはサボってやると書かれている。
見て一人、クスクス笑った。

何だ、結局アンタも、真面目人間だよ。

もう一度トップに戻ると最新記事の時刻が変わっていた。


1736。


えっ、と思い急いでボタンを押す。黒いトップに光が差し込んだ気がした。青。




青、青、白、青。





―今ふと空を見上げたらすげぇ綺麗だったから、思わず写メした。―


それだけ書かれて終了。
沖田はどこかでドクドクと音が鳴っているのを聞いた。
自分の心臓だった。
だって、だって、これ、この写メ、


今見上げている空と同じだったんですもの。



「―・・・っ!」


急いで辺りを見渡す。
あの雲の切れ方、広がりよう、たしかに上にある雲と同じ形。
だったら、だったら、彼は、彼は、



「あっ」

走って曲がり角、
自分と同じ様に黒い携帯を弄っている男がいた。
前身黒。
黒い学ランもそうだが、髪の毛、携帯、バッグ、すべてが黒だった。


「え?」

「っ、」


その黒い彼が振り向いた。こっちを見ている、どうしよう。俺の息が荒いからだ。そして、そして、じっと見ているからだ。
沖田は慌てて目を反らした。


「あの・・・何か?」


しかし彼が話しかけてきたから、ビクッと体が震えてしまった。
言うべきか。しかし、間違って、いたら。

「ブログ・・・、してますか・・・?」

聞かなければ。そうだ、間違ってもいい、恥ずかしかったら逃げればいい。
逢いたかった。言いたかった。毎日見てます、楽しいです、こんなに、こんなに、


格好いい人だとは、思いませんでした。



「してるけど・・・、もしかして、前にコメントしてくれた・・・?」

「〜・・・!」


覚えてくれていた。
そうだろう。見ず知らずの人からいきなりコメントを貰ったのだ。
それだけ印象強かった。

「ソウゴ、です、あの、前に一度だけ、その」
「お前が・・・、ありがとう」

笑顔を見せられてきゅうと胸が締め付けられた様な気がした。
たまらない。黒い彼は見た目こそ怖かったが、優しい人かもしれない。

「み、見ました、さっき、たった今、更新しましたよねぃ・・・?俺も、空見てたから」

当然目を丸くすることになる。
言った後、うわ俺ストーカーかよまじきめぇと後悔したが無駄だったらしい。

だって、すごく嬉しそうな顔があったから。

「そんなに見てくれてるんだ。やべ、照れるな」
「お、俺だってすごい恥ずかしいんでさぁ・・・でも、気になってたから」
「・・・」

無意識に顔が下がって自分の靴を見てしまう。
でも勇気を出して言ってみた。知りたかった。

「本名何て言うんですかぃ?俺は、沖田でさ。沖田総悟。」

「俺は土方十四郎だよ」

ああ嬉しい、そんな気持ちが爆発しそうだ。
溢れる何かを抑えるように、胸に手をあてぎゅっと握った。

「あの、それだけでさ、では、」

恥ずかしくて、恥ずかしくて、いたたまれなくて、早くこの場から立ち去ろうとする。しかし。


「待て、あの、良かったら、」
「?」


携帯を片手に彼も、恥ずかしそうな顔をして、


「アドレス、教えてくれると助かるんだけど」


だってあり得ないくらい嬉しくて・・・とかブツブツ言っている。いやいや、こっちが嬉しくてたまんないでさぁ!沖田は手を顔に当てた。

「よ、よ、よ、喜んで・・・!」
「まじで!・・・えぇと、赤外線・・・!」





あたふたして交わした黒と赤。

ブログのトップを想像して、自然と笑みが浮かんだ。




それは信じられないくらい綺麗な空の下、
1759の出来事だった。















これからお付き合いが始まるんですね^^←
すみませぇぇん本当こういう運命的なパロ好きなんです・・・
ブログ主とたまたま会って恋に落ちるとか、私が好きそうなパターンじゃないですか・・・←
総悟の携帯赤とかよくないですか。かわいくないですか



あきゅろす。
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