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SSS
青年とアンドロイド
バニーと海老



《ハッピーバースデー、バニー! お前にプレゼントがあるんだ。気に入ってもらえると嬉しいな》

無邪気な声が、僕に向けて明るく発せられる。もう子供じゃないんですから、プレゼントなんてもらったっても喜びませんよ、なんて、僕は彼に向かって何気ない顔をして告げて。
本当はとても嬉しいんだけど、恥ずかしいから本音なんて言わない。
そんな僕の様子に貴方はまるで子供みたいに頬を膨らませて、可愛くない奴だと呟くけれど、もう一度気を取り直しておめでとうと言って僕に微笑みかけてくれる。
僕はそんな彼にありがとうございますと答えて、彼が用意したプレゼントを開ける。
二十三回目の誕生日は両親を亡くした二十年間、彼と一緒で、二十四回目の誕生日もそうだと、変わらないと。僕は信じていた。

けれどそんな当たり前の出来事は、意図も簡単に崩れ落ちて、二十四回目の誕生日を祝う筈だった彼は僕の前には現れなかった。ただ、僕の携帯にハッピーバースデーというメールと、プレゼントを残して、僕の前から姿を消したのだ。


目の前を眠るようにして横たわるモノはまるで人間のようだと思った。そして、それは僕にとって最愛の、彼の姿とまるで同じ姿形をしていて。
時間が来れば起動するよう設定されたそのアンドロイドの姿に僕は戸惑いを隠せなかった。
まるで生きているかのように何度も瞬きを繰り返したそれは黄金色の瞳を持っていて、僕は驚愕の表情のままアンドロイドを見つめる。
少しだけ電子音が耳元に届いてそれが機械なのだと理解した僕は、何で彼はこんなものをプレゼントにしたのか意味がわからなかった。
どうしてここに彼が居ないのかもわからなかった。

『初めまして、マスター』

彼の声と全く同じ音を発して、彼は僕をマスターと呼んだ。
僕は彼の悪質な悪戯なのかとそう考えて、彼はどこに居るんだとそうアンドロイドに訊ねた。
こんなくだらない悪戯をする彼に何と嫌味を言ってやろうか。僕はそう悠長に思考していた。だけれど現実はとても残酷だった。

『虎徹、はもう、ここにはいない、彼は、もう戻らない』

この機械は今、何と言ったのだろうか。僕の思考が停止して、理解することは出来なかった。






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