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SSS
好きだなんて
にょたいがー・月虎
ツイッターお題
好きだなんて言ってあげない(あげられない)




本当は好きだ。好きで好きでたまらないと思っている。
でも、俺は卑怯者で臆病者だからそんな言葉、簡単には言えない。言ってやれない。
俺には愛を誓った旦那さんがいるし、子供もいる。
守らなければならない沢山のものがあって、仲間だって相棒だって大事で、きっとあいつよりも優先してしまうだろうし、それに。
口にしてしまえば最後、俺はお前を縛り付けてしまうだろう。俺もその言葉に縛り付けられて、雁字搦めになって、それで。
もし、もしも、お前を失ってしまったら、俺はきっと辛くて苦しくて、きっと泣きくれてしまう。
でも。
俺はお前が好きだよ。好きなんだ。
口では言ってやれないけれど、どうすれば伝わるだろう。
どうしたらこの卑怯者で臆病者の俺を見捨てないでいてくれるだろう。

(ゆーり、ユーリ)

眠っているお前の隣で、俺はお前の整った顔を見つめる。
いつも気難しそうに眉を寄せて眠るお前の眉間に指を寄せて、皺にならないように伸ばしたり。絹のような、でも少し癖のある銀色の髪を手で梳いてみたり。
たまに擽ったそうに身を動かして、サファイア色の瞳がこちらを見つめる。
起こすつもりはなくて、ごめんななんて苦笑いする。
いや、本当は起きてほしかったのかもしれない。
俺は本当に酷い奴だ。
何一つお前にあげられるものなんてないのに、お前から色んなものを貰ってる。

「虎徹さん」

色素の薄い、しかし男らしい筋張った指先が俺の背中を優しく抱き込む。
俺の褐色の身体を引き込んでお前は俺を引き締まった胸の中へと捉えた。
低い体温が、ドクドクと鳴る鼓動が、俺の全てを熱くさせる。
けれど俺の手はお前を抱きしめることが出来なくて、宙をさまようばかり。
それでもお前は気にすることなく、笑う。
まるでそれでも良いと言わんばかりに、お前は俺を強く抱きしめた。

(ごめん、ごめんな)

本当はお前が好きで、どうしようもなくて。
お前の為なら何だって出来るのに、なのにお前が一番ほしい言葉を俺は言ってあげられない。

(好きだよ、お前が、好きだ)

ユーリ。
だから。
宙をさまよった腕はお前が眠った頃に、お前を抱きしめるよ。






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