眼鏡男と団子女。
パン馬鹿
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桜も散り始めた。ほんのりと暖かさが身を包む。
午前の授業も終わり、待ちに待った昼休み。いつものように、パン馬鹿が語っていた。
「やっぱ、ヤマザ●のパンは最高だよ!分かるか?春にパンまつりをする権利は・・・いや、義務があるね。このクリームパン。大体コンビニで百五円。あ、でも五丁目のスーパーでは八十七円で売ってるんだけど。近年のクリームパンはクリームがずっしりと入ってる。それは良いことなんだけど、どうも甘ったるすぎて飽きやすい。小麦本来の旨味も引き立たない。しかし!ヤマザ●のパンは程良い甘さ・分量のクリームにバニラビーンズまで入っていて、なおかつ飽きが個人差によるが来ない。現時点のクリームパンの中でも一位二位を争うな。これは。」
ボサボサの肩につくぐらいの黒髪をなびかせながら、パン馬鹿こと、純は息継ぎをせず一気に言った。
伊達眼鏡でもない、黒縁眼鏡と肋骨辺りまで上げているズボン、そしてさっきのような真剣な表情でプレゼンでも無いってのにひとつのことについて語る姿も加わり、「オタク」とは言えないがクラスでも学年でも少し浮いた存在となっている。
「で?友、聞いてんのか。魂抜けた顔してんぞ?」
それでも、純の周りに人がいるのは、良くも悪くも口の悪さだ。思ったことを口にする性格は社会で上手くやっていけるのかは別にしても、面倒見もそれなりに良いし冗談だって通じるから。
あたしも、純の周りにいる一人だ。
「おい、友!無視かよ?へこむぞコラ。」
「え、あ、ごめん。」
気付かないうちに純の言葉を聞き逃していたらしい。眉間に皺を寄せた顔と目が合う。
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