[携帯モード] [URL送信]

眼鏡男と団子女。
なんだかモヤモヤ。
 俺は、朝の時間が大嫌いだ。



 新学期。いつものように友の隣を歩く。俺より頭一個分大きい友とでは歩幅がやっぱり違って、時々走らなきゃいけない。

 友は春休み中にも成長したのか、背がさらに高くなった気がした。なんとなく、それが酌に触る。



 いつもの二丁目の角の合流地点から約五分。一軒家が立ち並ぶ住宅密集地に入る。俺らの地域は、ほとんどがマンションだから異様に緊張するのは秘密だ。

 いつものように、満田さんが水を杓でバケツを片手に撒いている。別に、通るときに撒くのをやめてくれるから、水は、かからない。そう、水は。



「あら、カップルで登校?いいわねー。」



これだ。いつもこれだ。

 一度や二度なら、まだいい。でも、この人は違う。俺らが登下校の際、毎回、毎朝、毎晩、同じ質問をかけてくる。

 さらに、漫画のような悪意のない笑みを向けてくるからタチが悪い。絵に描いたような、くるくるのパンチパーマと、狐目。縦は狭く横に広い風貌は、陰で、漫画の漫を取って「漫田」さんと言われるほどだ。

 友は、いつもの質問にいつもの返事を返す。



「姉弟(きょうだい)です。」



それはそれは、漫田さんも真っ青な綺麗な微笑み。ただ、それが形だけなのは残念だけど。

 これに対しても、満田さんは、いつもの台詞。



「あら、そうなの?ごめんなさいねー。」



そして、いつものように昔話が始まる。当たり前だが、朝は時間配分が大事。聞いてる暇なんか無い。即座に退却する。

 俺らが目の前からいなくなったのに気付いたのか、満田さんが杓を振り回しながら、「いってらっしゃい」と見送ってくれた。これも、いつも通りなので挨拶を返す。



 いつも通りだ。まったくもって、何も変わっていない。ずっと繰り返しだった。なのに、最近はどうも、この繰り返しに腹が立つ。何も変わっていないのに。変わっていないのに、だ。

 胸にわだかまりを感じながら、友に置いてかれないように歩く。最近、やっぱり俺は変だ。こんなにも居心地の良い場所が、悩みごとの種になっているなんて。

 それのせいで、この時間が嫌いになってるだなんて。俺には物事の中間がないから、イライラする要素があると何でも大嫌いになる。



「純、どうしたの?」

「え?」



何が、どうしたっていうんだ?自分の心配をされたのに、心当たりが無い。

 すると、友は、満田さんに向けたようなものではなく、困ったような笑顔を見せてくれた。



 まさか、これが、すれ違いの発端だなんて、誰が気付くのだろう。



次頁→アトガキ

[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!