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甘い甘いゔお゙ぉい。






「スクアーロってそこまで格好いい訳じゃないよね」

 扉に身を預けて窓越しに流れる風景を見ていたちなちは無表情で呟いた。電車の揺れに時々負けて扉へ体当たりしたり俺にしがみついたりして何ともガキっぽく可愛らしいと思ってたのに唐突にこれだぞ。今まで格好いい格好いいほざいてたのはどこのカスだおいコラ。

「万人受けしない顔って事だよ」
「世界の全住人が一人を格好いいと必ず思うわきゃねぇだろ」
「優しくない顔。厳ついよ」
「ホームの溝に放るぞ」
「ねぇギャグ狙ったの?」
「は?」
「あっしの思い過ごしでしたすみません」
「いや何だよ教えろぉ。気になるじゃねぇか。ギャグってなにがだ? どこがギャグ?」
「止めてくれあっしがおっさん臭いと思われるのは泣けるから」

 そう言って再びちなちは景色を見始め、俺はそのいつもより大人びた横顔を見つめた。意外と整ってんだなあとか肌綺麗だなとか、普段あまり気にしない事ばかりが目につくのはちなちが通常の四割増し程静かだからだろう。

「XANXUSがいねぇからか?」
「ボス? ボスは京野さんのところ行ったりネットサーフィンしてると思うけどな」

 あのボスがPCに向かってマウスを回しキーを地道に打ってるなんざ想像したかねぇ。あれがあの顔でPC画面見てんだぞ、あれが食い入るように見るんだぞ、恐ぇだろーが。
 XANXUSの俳諧云々は隅に置いて、俺は何の説明もなしに電車に乗りかれこれ二十分近くこいつを眺めてるんだがもう訊いていいよな? 何で俺が振り回す一日なのにてめぇの行きてぇとこに行くんだ。

「でも行く所決めてなかったんだろう? スクアーロがどこでもいいとか無計画な事言うからあっしの行きたい所に行くんだよ」
「そうだが…」
「不満かい? まあこれの後は好きにしてくれて構わないから、この一時間は付き合って欲しいんだ。だめ?」

 首を傾げて覗き込むちなちは小動物を思わせ、俺の頬を微かだが熱くさせた。
 どこに行くんだと問いても着いてきゃ解るだろうから訊かずに黙り、こいつの用が済んだらどうするかを考えよう。

「あ、ここで降りるんだ。行こう」
「考える暇なかったな」
「ん?」
「何でもねぇよ。俺は着いてけばいいのかぁ?」
「そう」

 結構素っ気のない返事を聞き手を引かれる意味が解らねぇが取り敢えず大人しく着いてく。ちなちは花屋に入ったり和菓子屋で菓子買ったりとまるで墓参りでも行くかのような物ばかり買って行き、つーか墓参りだろこれ。
 墓石が多量に置かれる場の中静かな理由を段々理解してる時引かれる力が無くなった。

「…親御さんのかぁ、この墓」
「そうだよ」

 枯れた花の入る花立てを手にするちなちに俺はどうすればいいんだと訊きたい。何で俺が親御さんの命日に一緒に来るんだ? いや俺が今日って決めたから悪ぃのか。ゔお、俺ってタイミング悪ぃぞぉ。
 洗って来たらしい花立てに買ったばかりの花を入れ供えもんの和菓子を添えると恐らく家から持って来たのだろう線香に火を付ける。

「ん…水かけなくていいのかぁ?」
「絶対しなくちゃならない事ではないからね。それに命日でないからさ」
「は……、」
「あ、今日が命日だって思ったかい? 違うよ」
「…紛らわしい事すんなカスがぁ」

 ごめん、と苦笑ししゃがみ込むちなちに倣い俺もしゃがんだ。

「別に見てるだけでいいのにな」
「一応世話になってるからな。言っとくがお前の奇行、ばらすぜぇ」
「えー?! じゃああっしも変態と俺様がやって来た事チクる!」










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