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警察を呼ぶ割合、七割。



 窓とカーテンで区切ったことにより遠退く雨音と呼べるか解らない激しいそれを耳に、シーツに散った髪の先を見つめる。あっしの髪にはない艶と光沢の持ち主スクアーロはきっと今頃ヴァリアーや綱吉達の情報を集めてるんだろう。徒労でしかないと思うけれど。
 どんな表情で調べてるのかなーと思って仰向けに寝返ると、ベットが軋む音とお決まりのチャイム音が室内に響いた。誰かが来たのは明白だけれど、十八時過ぎにアポ無しで来る輩など顔が浮かばない。まさしく誰だ。
 再び鳴ったピンポンにはいはい等と無意味に返事しつつインターホンの下へかける。そして狭く青白い画面を視界に入れ、素で「は?」と言ってしまった。
 来客は寒そうに肩を竦めたスクアーロで合っているのだが、まず疑問に上がるのはどうしてこの家を。ストーキングかヴァリアークオリティか(後者であろうが)。
 取り敢えず受話するのは止めて直に話そうと玄関に走り、鍵とチェーンを外すと数センチだけ開けた。

「……」
「……」

 両者無言。いやあっしが声をかけるべきなのだけれど、結構恨みがましいので、ガーゼで手当しておいた脇腹を押さえ軽く睨む。斬られたお返しにしては小物だが。
 とは言いつつもこのままで居てもどうこうなる見込みもないし、出来るだけ淡々と訊く。「何用?」

「…入るのを見てたからなぁ」

 会話が噛み合っていないが疑念は晴らされた。見てたのね。てかストーキングじゃないか。
 あっしはのっぽ野郎を下から上までスクロールするように眺め、その冷涼な姿に苦笑する。まるで水槽(プール)の中へ突き飛ばされたようなずぶ濡れっぷりは周囲の空気まで巻き込んで冷ややかにさせていて僅かセンチ単位であれ扉を開けているあっしは肌寒い。ご自慢の髪から黒革の隊服、それから細長い脚まで目に見える全てが水分を吸い取っており、コートの先や毛先からとめどなくポタポタポタポタポタポタポタポタポタ床へ落ちている。嗚呼この鮫本当に馬鹿だ。

「それで、何です? 見付からない虚しさをぶつけに来ましたか?」

 皮肉らしく用件を問うあっしへ癪に障ったか、スクアーロは水粒滴る剣を扉の隙間に入れた。が、これは目眩ましだったらしく。
 ドアノブを握る手が緩んだ瞬間扉の端に掛けていた爪先を滑り込ませ押し蹴ると驚愕に近しい表情のあっしをフローリングの真上へ押し倒した。
 後ろ手に鍵とチェーンをかける手慣れたスクアーロを見上げるだけのあっしはこの人を見つけた時よりも阿呆面していたかも知れない。きっとひょっとこよりも滑稽だろう。

「てめーの妄言を信じてやってもいい」

 見下す形のまま一瞥くれた彼は簡素な説明もないままに、風呂入れろとだけ言った。







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