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日和!





 歯を磨く音を聞く耳にコンコンと寮部屋の扉をノックする音が届いた。聞き間違いかなと思いながら扉を見遣るともう一度ノック。そろそろ二十一時になるだろうこの時間帯に誰が来るのか。一考しなくとも思い付く。もはや既定だ。
 溢れ出そうな溜息を我慢し、歯ブラシをくわえながらドアノブを捻った。何の用ですかスクアーロ先輩。

「よ、響」
「…ひぃーほへんはい?」

 開けた入口には銀ではなく金があった訳だが、だからと言って胸を撫で下ろしは出来ない。スクアーロ先輩と並んでディーノ先輩も変態だからだ。
 肌触りの良さそうな半袖ティーシャツとデニムというラフな私服の先輩を一瞥して、

「はひひし、」
「あーまずはうがいしよーぜ。ほらほら、女の子が歯磨きしてる姿彼氏以外に見せちゃいけねーし」

 ディーノ先輩はよく解らない事を言いにゅの肩を掴むと回れ右、部屋に入って来る。ちょっと入って来ないで下さいよ。スクアーロ先輩に似て来たんじゃないでしょうかこの人。
 非難の言葉を吐く為口を開いたが歯磨き粉が喉奥につっかえてしまい危うく飲み込む一歩手前、駆け足で至急洗面台に。前のめりになって水道水を口に含んで注ぎ、最後に二回うがいを。うう…歯磨き粉苦い。

「おーい。大丈夫かー?」
「けほ……すみません、平気です」

 タオルで口を拭い立ってるディーノ先輩に近付く。照明の下でも変わらずきらきらと輝く金髪を少し眩しく思いながら見上げ、再びどうしたのか訊いた。

「いやさ、面白いもん見せてやろうかなって。つか聞かせてやるよ」

 へらっと屈託のない子供らしい笑顔は年より幼く、そう考えるとスクアーロ先輩は年相応か少し老け顔なのかも知れません。ディーノ先輩同様格好いいんだけども。
 取り敢えず立たせたままは気が進まないので座る事を進める。しかし先輩は首を振って断った。入り込んだ話ではないらしい。

「これからちょっと出られるか?」

 そう言うディーノ先輩の穏やかな目がにゅを捉えていて何の用なのかともかく、ちょっとどきりとしてしまった自分に嫌悪。すみませんこのへなちょこ先輩、人の太腿撫でないで頂けませんか。

「悪ぃ悪ぃ。時間帯的に盛っちまってさ。ほら俺も男だろ?思春期の」
「発情期の間違いじゃないですかね」
「ははは。まあ着いて来てくれねーか?絶対損しねーから」

 親しみ易そうなへたれた表情を浮かばせながら頭を掻き、にゅの手を取る先輩に疑心の視線を思うがままにぶつけた。この時間にどこでなにをどうしてどうするおつもりで?
 ほぼ睨むように上目で見、憂慮する感情が伝わったようでディーノ先輩は慌てて両手を振る。

「なにもしねぇよ!響にはスクアーロだけだって解ってるし、手出したら俺スクアーロに殺される!」
「じゃあさっさと前歩いて下さいよ。先程からにゅを見る目が明らかに性的嫌がらせを部下にする上司または先輩特有の目付きでしたよ気持ち悪い」
「ほら行くぜ」
「無視しないで下さいよ変態」

 文句垂れながら一歩半程前を歩く先輩の後ろに付き、今更突っ込むのが遅いと思いますが何でしょうにゅにはスクアーロ先輩だけって。いつからそうなった。先輩か、あのド変態糞鮫先輩が妄言吐いたんですか。だとしたらディーノ先輩諸とも絞める。









火のないところに何とやら




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