愛してほしいだけなのに 3 大概の知識はネットから。お陰で最近の流行りもののことや勉強の知識もそれなりに得ることが出来た。 そして、18歳になると仕事を始めることになる。 弟は高校を卒業し大学へと進学した。そして大学へ進学と同時にバイトを始めた。 両親は立派な弟は学業とバイトを両立して頑張っているのに出来の悪い兄はただひたすら何をするわけでもなく生きているだけ、そんな俺にお小遣いはおろか、食事すらまともに作らなくなった。 少なからず、その小遣いに頼っていた俺は困った。このままでは生きていけない。 だから、こんな自分でも雇ってくれる会社はないかと調べた。 そして、見つかったのが女性とお酒を飲み話すだけでお金が貰える…所謂、ホストクラブだった。 対人恐怖症のような俺であったが引きこもっているときも家族に見付からぬよう気を付け、普通に外を出歩いていた。 (近所のコンビニやスーパーなのだが。 因みにその時は普段の金髪だとあまりにも目立ってしまうから部屋を出るときは必ずカツラを被る。) つまり何が言いたいかというと俺は“自分の存在を邪魔に思う人間がいる場所”が怖い、これが最もしっくりくる俺の引きこもった原因で理由だろう。 だから自分を必要としてくれる場所なら部屋を出て行けるのだ。都合の良い引きこもりかもしれないが人間はいつも自分の都合の良いように生きているのだから俺を責めることは出来ないだろう。 異常なくらい自分勝手で我が儘な人間の周りで生きてきた俺なら尚更…。 生きていくために働く。 今の自分は人から必要とされていないが、この先…もしかしたら自分を必要としてくれる誰かが現れるかもしれない。 誰かが自分を愛してくれるかもしれない。 そんな淡い希望を持っているため自らの命を絶つことは考えなかった。 このまま、引きこもったままではそんなことはない、分かっていたが死ぬのは勿体無い気がしてならなかった。この先の幸せを感じずに死んでいくのが。 だからといって、大っぴらに他人と関わることも出来ない。下手なことをして邪魔者にされたら行動範囲が減っていくからだ。 こうして、矛盾だらけの自分の生き方を心の奥底で自嘲気味に笑い無意味な日々を過ごしてきた。 昼は引きこもり、夜はホスト…実に面白いことだと。 たまたま昨日は店の定休日だったため、夜に寝ようと試みたのだが普段の生活リズムが仇を成し、結局寝たのは2時過ぎだった。 今、ふと見た時計にはpm12:38だと表示されていた。起床時刻が普段と然程、変わらない時間で折角の休日が(週休3日だが)勿体無い気分だ。 しかし、今日は仕事がある。このあと、もう一眠りすると決め…その前にやらなければならないことがあったのを思い出す。 昨日は定休日と給料日が重なっていた。給料日といえば今まで働いたお金が得られる労働者にとって待ち遠しい日だ。 俺は得たお金を必ず家へお金を入れることにしている。それは俺の中で決めたルール。 どんな親であっても俺の親であることには変わりないし、部屋や風呂だって使っている。 だからホストを始めてから毎月、最低10万くらい入れている。と言ってもホストなんて毎月の給料が決まっているわけじゃない、不安定な給料。 だが、ホストを始めた時に比べて幾らか給料は上がりつつある。 確かに現実はドラマのように上手くいかず、店のNO.1ホストは俺ではないがNO.5…か10くらいには入るのではないだろうか。(店自体があまり大きくないけれど) それなりに働いて稼いでいるんだ。 手渡しされる給料。今どき珍しいが俺は特別に封筒に入れて貰っている。 理由は特にないが…強いて言えば中身が小学生に近い人間がカードや通帳を自分で管理することはかなり…怖い。 働いてる奴が言うことではないけれど。 封筒から数十枚の諭吉さんがこんにちは。先月はたくさん、指名が入った。 だから普段より少し多めの給料。20人近くの諭吉さんを別の封筒に移し変え、家族に見付からぬよう気を付けながら…こっそりリビングに行きテーブルに置いて再び、俺は布団に入った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |