No4#再会、罪
宿までの帰り道。
夕日が沈む前に宿に着きたい舞白は帰り道を急ぐ。
後少しで宿に着くところで、宿と建物の間の路地から何か気配を感じ、その気配の方へ顔を向けた。
「人‥?」
そこにいたのは、壁にもたれ掛かり倒れている人。顔は俯いていて分からない。息をしているのか心配になり近寄る。
息はしているようで肩は動いていた。怪我していないか確認しようと顔を覗きこむ。
「!!!」
顔を見た瞬間驚く。倒れていた人─それはつい最近舞白を助けてくれた男だった。
ほっとくわけにはいけないので、宿に連れて行くことにした。一人分の宿代しか払っていないため裏口からこっそり部屋に戻る。
とりかえず男をベットに寝かせ傷の手当てをすることにした。
「ん、…。」
男が目を覚ます。
「悪い、染みましたか?」
「っ、………ここは?」
舞白の事を思い出したのか少し驚く男。しかしすぐ表情は戻る。
「俺が泊まっている宿です。倒れてた所見つけたからからここまで運んできました。」
「そうか、悪い。」
「いいえ。いつかお礼したいって思ってたけど、こんなに早く出来て良かったです。」
そう言いながら傷の手当てを進めていく。
「はいっ、おわり。傷はどこも軽いけど足の捻挫は結構腫れてるから、今日は安静にしててくださいね。」
「‥長居は出来ないんだ。宿の者に姿を見られているなら尚更。」
「何で隠れているかは聞きませんけど、宿の人には見られてないですよ。俺、一人分の宿代しか出してないからそーっと見つからないように部屋まできたんです。」
バレたくないのは俺も同じですよ、そう続ける。
「そういうことなんで、今日ぐらいゆっくりしてください。はい、これどうぞ。」
舞白が渡したものはリゾットだった。男はそれを受け取る。スプーンでリゾットをすくい口に入れた。
「‥‥‥おいしい。」
「本当ですか?よかったです。こっちの世界の味覚って分かんなかったから‥。」
にぃっ、と笑う舞白。
「お前、名前は?」
「前に言ったんですけどね‥。舞白光哉です。あなたは?」
「‥朝比奈璃央(アサヒナリオウ)」
「朝比奈さんね。」
「朝比奈でいい。敬語もいらない。」
「じゃあそうさせてもらう。」
それから会話という会話はなかった。無言で男─朝比奈は食べ続け。それを舞白はただじっと見ていた。
外はもう月が夜の空を照らしていた。
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