3-2 本当の伝説を語り終えた老人はお茶を飲み一息入れる。 「その伝説と光怨斬となんの繋がりがあるんですか?」 伝説を聞いたが、今だ大剣との繋がりが分からない。 『伝説は色々な言い方をしたものが沢山が、光怨斬は伝説に必ず出てくる光の戦士が使っていた武器と言われているものなんだ。』 光怨斬を見つめながら、何かを思い出すかのように話を進める。 『受け継がれる武器は'神を越えた才<ゴットオーバー>`しか扱う事は不可能。だからこの大剣は己で主を選ぶんだ。自身に相応しい主を。』 光怨斬は舞白を選んだ。何故、選んだかは光怨斬にしか分からない。 「神を越えた才…?」 さっきの伝説にも出てきた聞いたことのない言葉に、首を傾げる。 『神を越えた才は選ばれし八人の勇者が持っていたと言われる才のことだ。』 才は皆が必ず一属性持っている力。<神を越えた才>は光、雷、風、水、炎、氷、土、闇の八属性の中から各属性で一人が選ばれる力のこと。伝説の勇者たちは全員'神を越えた才`を持っていたという。 「じゃあ、神を越えた才でもない俺がなんでこの大剣を使えたんですか?」 光怨斬を見つめ老人に問う。 『そんなの簡単だろ。神を越えた才を持つ者―お主が紅目の意志を継ぐ光の勇者だ。』 舞白の瞳を見つめながら老人は言う。老人の目は希望を宿していた。 「俺の目は紅じゃないですし…。」 『お主自身で確かめて見ろ。』 鏡を渡され自分の顔を鏡に映す。そこには老人の言ったとおり目に紅を宿す自分の顔が映っていた。 「嘘だろ…。」 舞白の両親は日本人だ。先祖だって紅目を持つ者はいないはずだ。 『光怨斬と共鳴した影響で紅目が戻りにくくなっているんだろう。時期に元に戻るはずだ。』 しかしまた剣を使えばその目はまた紅くなるぞ。そう伝える老人。 「…この大剣は俺に何をさせたいんでしょうか?」 なぜこの世界に来たばかりの舞白を選んだのか。 『それが光怨斬の意志だからだ。』 「意志…。」 *** 『その光怨斬はお主に授ける。』 金はいらんと続ける老人。光怨斬の意志に任せるとのことだ。それに飾りになるより剣として使われる方が本望だろうと言った。 「…わかった。」 『あとこれを使え。』 そう言って渡されたのは大きな布。 『素で大剣を持ち歩けないだろう。それにその大剣には魔力が流れている。この布は魔力を抑える力があるから使うとき以外はこの布で巻いて背中にでも背負っておけ。』 「ありがとうごさいます。」 言われた通り大剣を布で巻いて背中に背負い、布を前で結ぶ。 そして店の出口に向かった。 ドアノブに手をかけ扉を開ける。 『お主!………名前は?』 老人に呼び止められ、問いに答える。 「舞白光哉です。」 『舞白‥‥‥ 負けるなよ。』 「!っはい。」 今度こそ舞白は武器屋を出た。 何に対して負けるなと言ったのだろうか。 魔物に対してか、自分自身に対してか、それとも運命に対してか。 わからない。だったら何にも負けなければいい。 魔物にも、自分自身にも、運命にも。 新たに覚悟した舞白であった。 ──────── ────── 扉の閉まる音と同時に椅子から立ち上がり窓越しに舞白の姿を見る老人はふと空を見上げる。太陽はもう沈み始めていた。 『伝説が動き始めた…。』 先程まで光怨斬が飾られていた壁を見つめる。何百年もただ飾られていただけだった光怨斬が主を見つけた。紅を継ぐ光の子を。この世界にまた光がやってきたのだ。 『次に現れるは──'護りぬく決意` お主ならきっと乗り越えられる。』 窓を開けると心地よい風が頬を掠める。 『…強くなれ、運命に導かれ集いし勇者たちよ。自分自身の闇に屈せず、真実を掴み取れ。‥振りかえるな、歩み続けろ。』 窓を開け舞白に向かってそっとメッセージを送る。 舞白には聞こえてはいないだろう。それでも伝えれずにはいられなかった。 運命の歯車は今、 動き始めた。 . [←][→] [戻る] |