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ランニング!ドリンクくばるの

このんは部屋の前で部員たちと別れてからコートに向かう準備をしていた。

ひよこリュックから服を出し、先に運んであった手提げバックに入れ、中身を軽くする。
そこに自分の水筒と小さな裁縫セット、タオル、財布と渡されたトランシーバーとファイルをいれた。

首に紐のついたメモ帳をぶら下げ、他に必要なものがないかを見ておく

「えっと…、きゅーきゅー箱は小屋…にある…
あと…
…だいじょうぶかな…」

中身をもう一度チェックしていたら扉をノックする音が聞こえた。

切「チビっ子ー、終わったかー?」
「あい、時間…です?」

切原に返事をしながら時計を見る。
集合時間15分前だ。

柳「そろそろ行った方がいいだろう。
ここの屋敷は必要以上に広いからな」

柳もいるのか質問に答えてくれた。
ひよこリュックを背負って扉を開ける。
やはり切原と柳がいた。

切「話しながらコート行こうぜ」

ニカッと人懐っこい笑みを浮かべていたのでこのんもヘニャリと笑う。

廊下を柳と切原と話しながら歩く。

柳「ほう…テニスをしているのか
だからこの合宿に呼ばれたのだな」
切「マジかよ。強いのか?てか身長何cmなんだよ…」

テニスをしているという話しをすれば柳は納得し、切原は目を丸くした。
身長を尋ねられ、最近計った自分の身長を思い出そうと目を泳がす。

「たしか……135…cmです」
切「135!?ちび過ぎるだろ!」

あまりの身長の小ささに声を上げる。
柳に至ってはどこから出したのかノートに何かを書き込んでいた。

柳「越前や遠山より小さいわけだ。
やはり脚力で補っているのか?」

ふむ、と唸ってから顔を向けて尋ねる。

「走ったり、とんだりするの…がんばってます…。
スマッシュ…、あまりやらないです…」
切「あー…やっぱパワーとか足りないんだろな…。ちょい俺の手握ってみ?」

切原に手を差し出され、小さな手でキュッと握ってみる。

切「…もっと強く握れるか?」
「あい」

ギュッと強く握った。
瞬間、切原の顔が歪んだ。

切「いッ…痛ッ!ちょ、離せ」

離してみればこのんが握った場所が少し赤くなっていた。

柳「ほう…、日吉の弟子だけはあるな。古武術を心得ているから多少の握力はあるのか…」

興味深い、と薄く笑って呟く。
このんは赤くなった場所をじっとみてからそこを撫でた。

「いたかった…です?」

不安げに眉を下げる。
切原は苦笑してこのんの頭を撫でた。

切「もう痛くねーし気にすんな
お前握力つぇーな!」

もしかしたら真田副部長くらいるんじゃね?とニカッと笑われ、キョトンとして小首を傾げた。

話しながら歩いたためかコートに着くのが早かった。
コートではそれぞれの部長が集まって話し合っていた。

手「ん…?暁来に切原、柳か…
早いな」
幸「ウチの参謀が呼んでくれたんだよ
にしても、準備早かったね暁来さん」

幸村は目線を合わせるように軽くしゃがみ込んで笑う。
このんもつられてヘニャリとはにかむ。

「柳先輩…ときりはら先輩が…呼びにきてくださったから、早くこれたです…」
幸「ふふ、そっか。
いいなぁ…、柳たち。俺も暁来さんと話したいのに」

二人に向けた笑みが一瞬黒かった為か柳と切原の表情が引きつった。
もちろん、このんには見えてはいないためキョトンと見上げていた。

日「あ…暁来、もう来ていたのかよ」

たった今来た日吉と鳳が近寄ってきた。
このんも二人のもとへ行く。

「柳先輩ときりはら先輩ときたの…
もうはじまる…?」
日「あと5分だ。
ドリンクとかの確認に行ってきたらどうだ?」
「あい!」

ピシッと敬礼のようなポーズをすれば素早い動きで小屋に入っていった。
鳳はほんの数秒間の出来事に唖然としていたが日吉に顔を向ける。

鳳「…足速いね、暁来さん。あっという間に小屋に入って行っちゃったし…」
日「稽古や自分の仕事を行う時は大抵周りが見えてないからな。
そこが課題なんだが…」

師匠らしい口振りに、柳が笑う。

柳「やはり弟子をとると大変か?日吉」
日「…まぁ、そうですね…。自由奔放すぎますから…」

そう悪態をつくも、どこか目は穏やかだ。
幸村がそれに気づいて微笑んだ。

幸「(なんだかんだで日吉君は暁来さんのこと可愛がってるんだな…)クス」

それは跡部も気づいていたのか、日頃皮肉しかたれない後輩の僅かな変化にうっすらと笑みを浮かべた。

時間になればそれぞれの部員たちがほとんど集まった。

榊「まずはランニングだ。
外周を10周、それぞれのペースで走ってもらう。」
菊「なーんだ、時間制限がないなら楽だニャー」
大「そうだな。ほとんどのランニングは時間制限やタイム取りでハードだし…」

「それぞれのペースで」と告げられ、ホッとした表情をそれぞれ浮かべた。
いつの間にか現れたこのんはバケツに入ったドリンクボトルを運んでいた。
バケツには氷水がはってあった。

「外周…5周したら、ドリンクをテーブルに並べておく…です。
終わったら、ちゃんとドリンクのボトルとタオル…渡しにいくです…。」

メモ帳に書いてあることを読む。
彼女の言葉に歓喜の声が上がった。

謙「走りながらドリンク飲めるなんてやる気が出るっちゅー話や」
越「へぇ…アンタが考えたの?」

僅かに口角を上げてこのんを見る。

「…監督たちに、聞いておーけーもらった…です…」
越「敬語、しにくいなら使わなくていい」
「…うい」

ヘニャリと笑う。
その様子を見ていた桃城がからかう。

桃「こいつぅ…、なぁに口説いてんだよ!」
越「なっ…って痛いッス桃先輩…!てか口説いてないし」

小突かれ、痛がる様子を見せる越前。
ちゃっかり否定する。

手「…桃城それくらいにしておけ。
皆、油断せずに行こう」

手塚は桃城に注意し、皆に目を向ける。
当たり前とばかりに皆が頷いた。

榊「それでは、行ってよし」
「あい、スタート…」

このんがひらひらと旗を振った。

白「榊監督のスタート合図…暁来さんがおらんかったらわかりにくいわ…」
忍「…否定はせんで…。あれ…毎回や」

皆それぞれが走り出す。
一番前は謙也と遠山、次に部長組+真田と続いている。
しばらくこのんは眺めていたが、直ぐに自分の作業に移る。
簡易テーブルを運んできて組み立て、紙コップを人数分並べる。
謙也の走る回数を数えてからそれに冷えたドリンクを注いでいく。

謙也や遠山が5周走り終えればドリンクが注がれた紙コップを渡す。

「あい」
謙「ぉ!おおきに!」
遠「おおきにっ!」

実に爽やかな笑顔と無邪気な笑顔でそれを受け取ればさっさと飲んで行ってしまった。

続く部長組にも素早く渡す。

白「おおきに、暁来さん」
跡「なかなかじゃねーの」
幸「うん、おいしいよ」
手「流石だな」
真「うむ、たまらんな」
それぞれ好意的な感想を述べ、また走り出す。

他に続く部員たちにも渡し終えれば、使用済みの紙コップを片付けてドリンクボトルを取りに小屋に戻った。

冷蔵庫に大量に入ったドリンクボトルと綺麗なタオルをカートに乗せてガラガラと押していく。
もうすぐでトップ組が走り終えてしまう為急ぐ。

テーブルの場所に戻れば、ほとんどのものがあと一周といったところだった。

謙也と遠山がほぼ同着で走り終える。

遠「このんちゃんドリンクー!」

まだまだ元気な遠山は渡しにいく前に取りに来ていた。
このんはサッとタオルと冷えたドリンクを渡す。
謙也にも同様にだ。

謙「走り終わった後のドリンクは格別やな!」

いくらかがぶ飲みしプハァ、と息を吐き出す。
部長組+真田がゴールした為カートを走りながら押す。

「あい、持ってきた…です」
幸「ありがとう。
うわぁ、冷え冷えだ」

幸村は走った後なのにそう感じさせないほど爽やかな笑みを浮かべ、タオルとドリンクを受け取り、ドリンクを飲む。

白「この冷たさ…完璧や
んンー!絶頂!!」
「?…えくす…!ッむぐッ」

白石の卑猥用語(違)に首を傾げ意味が分からないとオウム返ししようとすればちょうど走り終えた日吉が口を抑え、財前が蔑んだ目で自分の部長を見た。

日「…その言葉は言うな」
財「…暁来の前でその卑猥用語を言うなんて最悪ッスわぁ…部長」
白「そんな目で見んといて!!」

次期部長二人組の冷たい目線にワッと両手で顔を覆う白石。
更に目線が冷たくなったのは言うまでもない…

「むぐ…むぐ…」

何か喋りたいのか軽くジタバタするこのんに気づいて日吉は手を離す。

「ぷは…苦しかったひよしくん(むしゅ)
あ…ドリンクいる…です?」
財「切り替えの早さは褒めたるわ。
…おおきに」

鼻呼吸をしなかった為か苦しかったのか口から手を離され苦しかったと日吉を軽く恨めしそうにムスッと見たが、一瞬で財前に向き直ってドリンクとタオルを渡す。
その様子に呆れながらも感嘆を上げそれを受け取る財前。

日吉にもドリンクを渡していたが野球のピッチャーように振りかぶって投げたのは仕返しなのだろう。
日「馬鹿か」

あっさりとキャッチされ失敗し、頭をポカリと叩かれた。

が、気にしていないのかさっさとドリンクとタオルを配りに走っていった。

財「…こどもやな暁来」
日「…否定はせん」

なんて会話がされていても知らないのです。
とにかく動いて働きます。

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あきゅろす。
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