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* こわいゆめ
[日吉寄りです。流血表現ありですので、大丈夫な方はスクロール]

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[このんside]

まっくらな世界……

そこにぽつんとわたしはいて、立ちすくんでいた。
右も左も上も下も 、どこをみてもまっくら


目の前に、わかしくんがでてきた。
いきなり、手品みたいに

くるしそーな、かなしそーな、なさけないよーな、こうかいしてるよーな……
そんな顔をしてじめんにひざをつけてる。
どーして、そんな顔をするの?
そんな顔みたくないよ

わたしがわかしくんに手をのばそとしたとき、わかしくんのうしろがキラッてひかった。

それが刃物だと気付いたら、もう……

わかしくんのむねが真っ赤になってた。
たくさん、たくさん流れ出す。

『アッハハハハハハハハハハハハ!!!!』

つんざくよーな笑い声が、まっくらな世界にひびいた。
わかしくんにふれたら、わかしくんないちゃった
わかしくんが、たおれた。

日『っ……このん……
ごめ……ん、な……』

なんであやまるの?
なんでかなしそうなの?

だれかわかしくんをたすけてよ……

こんなのいやだッ……
いやっ……嫌ぁああああああああああッ!!!


抱き締めたわかしくんがどんどん冷たくなってく
わかしくんの目がわたしをうつさなくなっていく。
わかしくんが、いきしてないよッ……

わかしくん、お願いッ……死なないで 










[このんside end ]



勢いよく身体が跳ねた。
まだ夜中の時にこのんは目を覚ました。
身体は冷や汗をかいていて、どことなく震える。

ゆっくり起き上がり周りを見渡すが、今日から使い始めた合宿場の自分と竜崎先生の部屋で、隣のベッドで先生が寝ているだけだ。

何の夢を見たのかはっきりは覚えていない。
それでも、ひとつだけ覚えていることがあった。

──日吉が殺された

冷たくなってく感覚が妙にリアルで忘れられない。

「……っ……
……みず……のんだらねれるかな……」 

目が醒めてしまってもう寝付けそうにない。
とにかく落ち着きたくてひよこリュックを抱き締めながら部屋を出る。

合宿場はなかなかの広さがあるが方向音痴でないこのんは無事にキッチンについた。

もう誰もいないのか真っ暗だ。
だが目が慣れたためか難なく準備してあるお冷やをコップに注ぎ入れ一口飲む。

少しだけ気が安らいだ。

不意にキッチンカウンターが目に入る。
そこには、綺麗な果物ナイフが置いてあった。
装飾の綺麗な、果物ナイフのはずなのに……

「っ……ぁ……」

覚えていないはずなのに、そのナイフが無性に恐ろしく感じた。
この暗さも、急に怖いものに思えてきた。

「いやッ……」

手に持っていたコップが滑り落ちた。








ガチャンッ……

日「?
何の音だ……?」

小説を読み終え寝ようとしたとき、ふと何かが割れる音がした。
よく耳を澄ませてみれば、啜り泣くような声もする。

怪談物の話が好きな日吉にとっては興味を惹くものだ。

怪奇現象らしきものに、日吉は顔に出してはいないが少しワクワクしている。

鞄から懐中電灯を取りだし隣に眠っている鳳を起こさないよう静かに部屋を抜け出す。
泣き声のする方へゆっくり慎重に近づいていく。 
声はキッチンの方だ。

近づいて行くにつれてその声はどこか聞いたことのある物に思えてきた。
それも、最も馴染み深いものに

キッチンにたどり着き、ようやくその声の主を理解した。

警戒を解き、スタスタと歩み寄る。

日「……やっぱりな」

懐中電灯を向けた先に、うずくまって泣いているこのんがいた。
すぐ近くには割れたガラスコップが落ちている。

しゃがみこんで目線を合わせた。

日「……どうした?」
「っ、ひっく……ふ…う……っ」

泣いている理由はコップを割ったからではないとわかっている。
割ったなら、いつもは素直に謝る。

それができないほど弱っているこのんを撫でてやればやっと顔を上げた。

が、更に涙が増えたように思える。

日「はぁ〜……、どうしたんだ?
いい加減話せよ」

このままではらちが明かないし、コップを片付けられない。
話すよう促せば、途切れ途切れに返してきた。

「っ……わか、しくッ……
わかしく、んッ……死な、ない……よね?」
日「…………は?」
「まっかッ……いや……
くらい、とこッ……刃物ッ……わかしく……ころ、された……っ
こわいっ……こわいよお……ッ……」

寝惚けているのだろうかと考えるが、割れたガラスコップは水滴が付いており、水を飲んだ形跡がある。
このんの言葉に疑問をもちつつ周りを見た。

キッチンカウンターにナイフがある。

それを見て何となく察した。


日「夢見が悪かったみたいだな。
……安心しろ。
俺は生きてるし簡単に殺されるヘマはしねぇよ。」
「っ……ほ、んと……?」
日「ああ。
だから落ちつけ。」

そっと撫でられ、その温もりにやっとこのんの精神は安定した。
目の前にいるのはあの冷たくなっていく日吉じゃない。

なみだが止まり、顔を日吉が持ってきてくれた濡れタオルで冷やしながら拭く。
日吉はその間落ちたガラスコップを片付けていく。
片付け終わったころにコックが来た。
食料庫に行ってしばらくここを離れていたようだ。

素直に割ってしまったことを謝れば「手を切っていないか?」と心配してくれた。
しかも飴を渡してくれるといった優しさをみせる。

二人は深く頭を下げてから部屋に戻るため階段を上がった。

「コックさんすてきなひと」
日「明日改めて謝礼しとけよ。
ったく……、お前今から寝られるのか?」
「………………ちょっとねたからだいじょぶ」

普段爆睡してきっちり起きる時間に起きるタイプなので、一度起きたらもう寝れない。
それで朝まで起きていたことがあったため、今回もまたそうなったら困る。
今日から本格的な練習に入るのだから途中で倒れられるわけにいかない。

呆れた顔をしてから日吉は少し悩む。

日「……ちっ
おいこのん。」
「?なーに」
日「俺らの部屋にこい。
鳳が起きるまでに朝稽古の時間には起きろよ。
どうせ、一人じゃ寝れないだろ」

年に一回あるかないかの確率で夢見が悪かった時、唯一このんが安心して寝られる方法だ。
大体はそういうとき母親が一緒に寝てやるのだが、今は合宿

鳳に見つかりさえしなければ変な噂はたたないだろう。

このんはきょとんとしていたがやがて嬉しそうに笑った。
正直一人で寝られたとして、また同じ夢を見るのが怖かったのだ。

「ん……!
ありがとー」

日吉たちの部屋の前に着けば静かに入る。
鳳は寝ているようだ。
ゆっくり扉を閉めれば二人同時にベッドにもぐりこんだ。

日「リュック渡せ。こっちに置く(コソコソ)」
「んー…、はいぴーちゃん(コソコソ)」

布団の中でリュックを外せば日吉に渡す。
リュックを受けとれば自分の荷物の下に隠した。
あまり大きなリュックじゃないため上手く隠せる。
もしトイレで起きた時にバレたらいけないとこのんは布団の中から顔を出していない。

だいたい日吉の胸元の位置に丸まって潜っている。

「かぶとむしのよーちゅー!(コソコソ)」
日「……いいから寝ろ」

遊んでいるこのんにチョップして大人しくさせ、寝やすいよう布団の上から背中のあたりを不器用に軽くポンポンと叩く。

大人しく目を閉じようとしたが不安が込み上げる。

日吉「……、!
このん……?」

布団の中で叩いていない方の手を遠慮がちに握られ日吉は目を丸くする。
普段は滅多に甘えるように自分の手を握ってくることはない。

暴走するこのんを逃げないよう日吉が手を握る(むしろ捕まえる)ことはあるが。

覗き込むと目が合う。
「……にぎってていーい?」

不安そうな顔で言ってくるこのん。
もう握ってるだろうが、と言いたくなるが別に握られていて不便はない。
それで寝てくれるなら大丈夫だろう。

日「……早朝稽古までに起きろよ」

握り返してやれば返事のかわりに安心したように目を閉じた。

数分もしない内にか細い寝息が聞こえてきた。
再び覗き込めば穏やかに眠っているこのんがいる。

フッと頬を緩ませて小さな幼馴染みの手を両手で握ってやった。

不安性な少女が穏やかな夢を見るように……

日「……あったけぇ……」

子供体温のこのんはちょうど良い湯タンポがわりになる。
襲ってきた眠気に身を委ね、温もりを感じながら日吉も目を閉じた。


幼馴染みの師弟が目覚めるまであと5時間……



(最初の合宿の夜……)
(アイツが見て泣いていた夢は『もしこのんが俺を助けなかったら』という正夢だった。)
(俺がそれに気付いたのは、家に帰ってすぐ……
夢に見て思い出した)









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はい
これは本編の番外です。

このんちゃん合宿の最初に悲劇を見てました。
だから素早く日吉を助けることができたのです。
また日吉が冷たくなることが怖かったのです。

まぁ、ぶっちゃけ……
日吉とこのんちゃんを一緒に寝かせたかっただけなんですけどね(°Д°)

ここまで読んで下さってありがとうございました!
まだまだ『のこのこ!』がんばります。

では

あでゅー

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あきゅろす。
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