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ゆるしてほしーの

こっちゃんに付き合わされ、このんはデ○ノートの鑑賞をしていた。
最所からなのだが、こっちゃんの好きなキャラが出てくる度に彼女のテンションがおかしくなっている。

こ「ああぁあぁぁぁぁッ!!!!!
ニア素敵ッ!!
冷たいその目で自称新世界の神じゃなくて私を見下してぇええええ!!!!!」
「あ、もしもしさっちゃんです?
へんしつしゃが…」
こ「このんさらりと止めてぇえええ!!?
初めてこのんを恐ろしく感じたんだけどっ!?」
「…にへっ★」
こ「天使の皮を被った小悪魔めぇえええ!!!」
淳「黙ろうか」

部屋に入ってきた淳がすっごく笑顔でこっちゃんの頭をアイアンクローしている。
ミシミシいっているのは幻聴だろうか?
そんな状態でも一時停止は忘れないこっちゃんだったりする

こ「アッコさん!痛い痛い遺体痛い痛い!?
ギャァアアアア!!!!メキメキ逝ってるメキメキ逝ってるぅうううう」
亮「クスクス、懲りないねー
淳、それくらいにしないとえげつないものになるよ、それ」
こ「それ!?私それっ!?」
「…こっちゃん静かにしないとてーしするよ?」
こ「ゴメンナサイ」

ようやく黙ったこっちゃんの頭から淳は手を離す。
いったぁ…と頭をさすりながらアニメに目を向ける。

鑑賞を終えた頃にはこっちゃんから逃れるために出ていたケンゾーくんが帰ってきた。

研「ケーキ買ってきたけどいる?こっちゃんいらないね」
こ「ちょ、私返事シテナイ!」
「こっちゃんドリアンケーキあるのっ!」
こ「え?私に食えと?果物の王様食えと?
こっち見んな」

シッシッと手で払う仕草をしながら箱を覗く。
臭いがこないことにこっちゃんは首を傾げた。

こ「……ホントにドリアンケーキとかあるの?
臭わないんだけど」

見た目からもよくわからないためどれがドリアンケーキとやらなのか判断できない。
ケンゾーくんがさまざまなケーキの中からひとつシンプルなケーキをとった。

研「これ俺のだから」
こ「え、
それドリアンケーキ?てかケンゾー氏のかい」
研「ドリアンは焼けば匂わないから。
割りとここのは美味い」

手掴みでぱくっと一口食べるケンゾーくんを眺めてから二人もケーキを選び始める。
どれも飾り付けが綺麗で美味しそうでどれにしようか悩んでしまう。

こ「なやむわぁー…」
「ねー。
…半分こする?そしたら二種類たべれるよ!」
こ「ん!しよしよ
じゃあ、私ゃショートケーキね」
「じゃー、ブルーベリーレアチーズケーキにするのー」
こ「シャレオツっ!
そいやチーズケーキ好きだったわな、このん
ケンゾーくんそれわかって買ったっしょ〜?」

ニヤニヤ笑っているこっちゃんにはもれなくケンゾーくんからの足蹴りがプレゼントfor you されたのだった。

こ「痛い痛い!
てか今日私攻撃(物理)受けまくってない!?」
「こっちゃんがわるいー」

コロコロと笑って二人を見ているこのんに双子は安堵を浮かべていた。
このんがイギリスに旅立つまであと一週間。

傷もだいぶ治ってきたため少しだが車イスから離れて行動できるようになっていた。

それでも、少女の精神まではわからない。
このんはあの合宿から変わってしまっているから。
双子はただ少しでも妹分の気が安定することを祈るしかできない。

亮「…………、イギリスに行く前にさ、好きなところ色々つれて行こうか」
淳「そうだね。明日は海行こうよ
家の中で遊ぶのも良いけどこのんはアウトドア派だし」
「りょっくん、あっくんケーキとらないとこっちゃんがたべちゃうよー」
こ「怖いから食べないし」
亮/淳「「食べたらお仕置きだから大丈夫」」
こ「全然ダイジョブくないッ!!
てか食べないって言ってんじゃんかっ!」

ぎゃいぎゃいと騒いでいればインターホンの鳴る音がした。

「?おきゃくさん」
淳「僕が出てくるよ」

ケーキ残してて、と一言告げて淳は玄関に向かった。
念のため除き穴から確認してみると、意外な人物が来ていた。

ロックを解除してドアを開く。

淳「いらっしゃい
珍しいね二人で来るなんて……

裕太に不二」

不「やぁ、木更津」
裕「すみません……アニキまで」
淳「このん……妹分から世話になったって聞いてるし問題ないよ
玄関で話をするのもなんだし上がって」

お邪魔します、と二人は家に上がる。
リビングにつけばこのんたちは振り返った。
見知った顔を見つけこのんは目を輝かせた。

「不二しゃん!」
不「久しぶり、になるかな
元気そうだね。」

クスッと柔らかな笑みを浮かべれば気の抜けた笑みをへにゃっと返した。
それから隣の見知らぬ人物に首をかしげる。
裕太も初対面なためか兄とどういう関係なのだろうかと不二に顔を向け、説明を求めた。

不「一ヶ月前に大きな合宿があったんだけど、彼女はそのときに臨時マネージャーを引き受けてくれた子だよ。
暁来このんちゃん」
「はじめましてー、なの」

ペコリとお辞儀をすれば「あ、あぁ…」と若干戸惑ったような返事が帰って来た。
戸惑うのも無理はないだろう。
綺麗に座ったまま90度のお辞儀をしたのだから。

こ「わぉ、床スレッスレ。
傷開くから止めろださい。」

ほらほら、とこっちゃんがこのんをまっすぐ座らせる。

「こっちゃんはしんぱいしょー」
こ「『お兄○ゃんは心配性』みたいに言わないで。
でー、男前なにーさんのお名前は?
あ、わたしゃこのんの友人の森本でっす。」
裕「お、おう……
俺は不二裕太だ。
……名字で呼ばれるのはあんま好きじゃねーから裕太でいい」

こっちゃんが代わりに名前を聞いてくれたことでやっとファーストコンタクトは済んだ。

二人に座ってもらい、亮がお茶を出せば不二がなにかを思い出したかのように自分の鞄を探る。
出てきたのは空色の封筒だった。

不「このんちゃんの退院祝いに持ってきたんだ。
たくさん撮ったから現像するのに時間かかったけど、きっと気に入ってもらえると思う。」

それを受け取り中を出せば、一番最初に日吉がこのんの頭を撫でている写真が出てきた。

「!……わかしくん…………」
不「日吉は、この時が一番穏やかな顔をしてる
このんちゃんも、ね」

頭を撫でられ嬉しそうに笑っている自分と、呆れているような笑みを浮かべた日吉。

この時が、自分にとっても穏やかでいられる時間だった。
じっとしばらく眺めてから次の写真をみる。

「あ、越前くんといっしょだ」
裕「相変わらず生意気な面だなぁ」
「越前くん知ってるです?」
裕「試合の相手だった。
ちょくちょく会うんだけどアイツな……」

裕太が越前のことを話してくれた。
試合のはなしや、出掛けた先で会った時のはなし。
とにかく生意気だったと言う裕太の顔はどこか楽しそうだ。

裕「そういえば、日吉と越前の試合は見たのか?」

都大会で越前は日吉と当たっている。
日吉の妹分と聞いているためなんとなく聞いてみた。
このんは一度瞬きをして小さく笑みを浮かべて頷いた。

「…………わかしくんは、しらないと思うけど……みにいったです
……はじめて、みた……」

補欠同士の試合で奮闘していた日吉を、しっかりと目に焼き付けている。
美玲の横で、試合にまけて泣く幼馴染みは自分の知らない人物のように感じた。

不「あ、じゃあ僕らを一度見たことはあるんだね」
「青学は、ちょっとみただけだったから……
がっしゅくでちゃんと名前しったです。」

はじめましてはがっしゅくなの、と笑えば笑みを返してくれた。
不二からもらった写真はどれもが自分と合宿のメンバーだ。
おこさま組で手を繋いで廊下を歩いていたものもきちんと入っている。

「あー!生ハムたべわすれたっ!!」
こ「いきなり声上げたと思ったら生ハムか」
「わかしくんに下剋上したら食べるってきめてたのにぃ」
研「…………日吉先輩、生ハムと同等」
裕「なんつーか……考える基準おかしくねえか?暁来って」
不「このんちゃんだからね」
亮/淳「「このんだから」」
裕「……そうっすか」

三人に言われ何も言うまいと裕太は思う。

不「あ、生ハムなら榊監督と跡部が持ってきてくれるって」
「ふたりともだいすき」
こ「単純過ぎてコワイ」
不「僕は?」
「不二しゃんもだいすき!」
不「ありがと。」

イエーイとハイタッチし合う二人を裕太は思わず口許をひきつらせながら見守る。

亮「ほんと、合宿でこんなに仲良くなって帰ってくるなんてね」
淳「人見知りスゴいのにさ」

優しく笑って頭を撫でてくれる二人にこのんはへにゃりと笑う。
ちょっと自慢気な笑みだ。

「みんな、やさしーの。
それに……わかしくんがいっしょにいてくれたから」

ああなるまでは、大体いっしょにいてくれていた。
何度も心配してくれていた。
それは確かに、日吉自身がしてくれたことだ。

恐らく、事情を詳しくは知らない亮と淳は日吉がこのんを守らなかったことに怒っている。

少女は知っていた。
自分が気を失う瞬間、日吉が自分の服を握りしめていたことを。
あの時、日吉が、大好きな『わかしくん』に戻ったことに。

「……りょっくん、あっくん……
わかしくん……守ってくれたよ」

その言葉に、二人は目を見開く。
このんは双子を見上げている。

淳「……このん……?」
「……わかしくんも怖かったの。
だから……、おこらないでは言わないから
ゆるしてほしーの」

合宿で起きたことを知らない二人だからこそ、それだけはわかって欲しかった。
優しい二人だから、自分のために日吉を責めていることはわかっている。
それでも、日吉を赦してほしかった。

二人はしばらく黙り混んだ。 
不安そうに静寂の中双子からの返事を待てば、
二人は笑った。

淳「……たしかに、僕たちは合宿の詳細を知らない。だから、口を挟めないな」
亮「日吉を責めるのは、僕たちの仕事じゃないかな。
……だから、日吉のことを赦すよ」
淳「その代わり怒るけどね」

ぽん、と乗せられた手は日吉のものより華奢に感じたけれど、確かにたくましいものだった。
やっぱり優しい二人に、このんは笑った。 

「ありがとー……」


ほのぼのとした時間は、アルバムを発掘してきたこっちゃんの手によって終わるのだった。
こっちゃんが双子に笑顔で説教されるまであと10秒……



(このん〜!これ淳さんと亮さんでしょ?!
そでしょ!?)
(あ……このんちゃんが二人の頭を撫でてるね。)
((ちょっとこっちゃんこっち来て))
(え?あ、
ぎゃあぁあぁあああああああ!!!!)
(……これあっくんとりょっくんのくろれきし……)

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