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IF.はい、おしまい


「……、わかしくんの方が強かったよ…『日吉若さん』」

それは、このんの知っている日吉のことだろう。
罵るわけでもなく、怒りをぶつけるわけでもないのに…
その言葉は静に響く。

滝「このんちゃん……」
跡「暁来…」

日吉の顔がやっと上がった。

悔しいような、悲しいような、怒っているような、驚いているような…
複雑に感情が混ざった表情だった。

このんはそれを見ていることができず目を反らす。

「『わかしくん』は跡部ぶちょーに負けても、そんななさけないかおしないの…
下剋上だって…挑もうとするんだよ」
桃百合「若ッ…!!
姫華の言うことを聞けないのっ!?
お姫様である私が命令してるんだから駒らしく動きなさいよぉ!!!!」

喚き叫んでいる桃百合の言葉は、いくつもの感情に襲われている日吉に届かない。
このんを見上げたまま、ガタガタと震えだしている。

何故震えているのか、恐らくは日吉自身もわかっていない。

芥「日吉…早く思い出してッ……」

祈るように芥川が呟く。
それは、皆が望んでいることだ。

皮肉な調子で、向上心が強く、努力家な日吉若

仲間の為に、幼い少女の為に…
帰ってきて欲しい。

「……、『日吉若さん』…
ーーーーあなたはだあれ?」

悲しげに、尋ねた。

日「っ………おれ…は………」








桃百合「あぁもうッ…
何度も………何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もナンドもッ…!姫華の邪魔ばかりしてッ…
チビ女、さっさと目の前から消え失せなさいよぉおぉおおおおお!!!!!」

狂ったように叫び声をあげ、振り上げられた桃百合の手には果物ナイフが鋭い光を放っていた。

皆が固まる。

すぐにナイフを握られた手は勢いのままに降り下ろされる。

幸「ッ…止めろーーッ…!!!!」

すぐさま走り出すも間に合わない。
鋭利なナイフを目前とし、このんが目を閉じた時だった。












日「このんを傷つける奴は許さねぇ」

痛みはくることはなく、ドサッという何かが落ちる音がした。
このんの開いた目に映ったのは、

ナイフを掴んでいた桃百合の手首を捻り上げ、地面に押さえ付けている日吉の姿だった。

「…、……わかし………くん……?」

日吉がこのんを見た。
ひどい後悔に苛まれているような苦しそうな表情で。
だが、すぐにこのんの知っている…あの鋭い眼差しが桃百合に向けられる。

桃百合「わかし痛いわよッ…!
なんで#姫華の邪魔をするのッ…!?
お姫様である姫華の駒なんだからあのチビ女を押さえ付けなさいよぉ!!!
せっかくチビ女の呪縛から助けてあげようとしてるのにアンタ達が勝手に姫華の手から離れて行って…!
あのチビ女を殺せば姫華の王子様に戻れるのよぉ!?
所詮アンタ達は作者に運命を決められたお人形でテニスの技術だって結局は作り出されたモノなんだからぁ!
わかったら喜んで姫華の駒らしく働きなさいよぉッ…!!」

温度が急激に下がった気がした。

言われた本人である日吉は勿論、部員や監督…このんたち全員が桃百合を射殺さんばかりに睨みつけていた。

自分たちの努力を知ろうとせず、自分勝手好き勝手に傲慢な口を言う桃百合を許せないのだ。

「………
煩い

その声は、酷く冷たかった。
桃百合の目が幼めな少女を見る。

桃百合「なっ…」
「煩い。
あなたは煩い。
おひめさまになりたいなら、みんなの邪魔…しないで。
みんなはテニスをしに来てるのに、あなたは何…したいの?
マネージャーの仕事をするためじゃないの?
わたしをコロシタイの?そのナイフで
……いいかげんにしてほしい
流血沙汰でみんながテニスできなくなったらどうしたいの?
かっこいーみんながあなたの望んでるおーじさまになってハッピーエンド?
コロシたらあなたはただの殺人犯だね。
殺人犯なおひめさまっていたかな?
そんなおはなし、ちっちゃい子ないちゃうね。
ね、夢をぶち壊す殺人犯モドキのお姫様モドキさん」

ゆっくりと桃百合に歩みより、ナイフを奪った。
装飾が施された綺麗なナイフだ。
恐らく合宿所のキッチンから奪ってきたものだろう。
コックがこのんに生ハムを切ってくれた時に見たものだった。

美味しい料理を振る舞ってくれたコックのナイフをただの殺人の道具にしようとした。

このんは目の前にいる歪んだ表情の『お姫様』を見下ろした。

「……あなたがしようとしたこと……
みんな見てるからいいのがれできないね。
榊かんとくなら……、
…あった
こーきのーな監視カメラ……
きっとおんせーも記録できるやつだね」
桃百合「ッ……そ、そんなの姫華の神様からの加護でなんともできるわよッ…
姫華は神様に愛されてるお姫様なんだからぁッ!
若たちも、姫華を敬って慕って愛しなさいよぉ!!」

甲高く耳障りな声を上げてそう言う桃百合に苛立ちは絶えない。
とくに苛立ちを露にしている切原や一氏が暴れ出しそうになったとき、遠くにヘリコプターの音がした。

それは段々とこちらに近づいて来ているようだ。

跡「!あれは…宇治宮グループのヘリじゃねーか」
「みれーさん早かったです」

にっこりとこのんは笑った。
日吉もここまで怒っているこのんは見たことないが、この状況で笑顔を見せているということは激怒の部類なのだろうと感じた。

ヘリコプターがヘリポートに降りた。

こちらに何人かが向かって来ている。
そこに、一人女性がいた。

美しい茶のロングヘアーを風靡かせ、どこか上品に歩いている制服姿の女子生徒……宇治宮美玲。
このんに気づけば花が綻ぶような美しい笑顔を見せて丸井や謙也たち健全な男子たちのハートを鷲掴んだ。
桃百合の存在感スルーしているようだ。

このんの近くに来れば抱きついた。

美「間に合ってよかった…
このん、怪我してないわよね?」

心配そうに身体中を見てまわっている美玲にこのんは首を横に振る。

「だいじょーぶなの…
…後ろのひとたち…さっちゃん?」
美「そうよ、警察ね
危ない危険異物は排除してもらうの」

安心した表情でなかなかの辛辣な言葉を吐く美玲に何人か青ざめたのは言うまでもない。

桃「宇治宮さんって人……けっこういい性格してるッスね…」
跡「100人以上いる親衛隊員を支える奴だからな。
あれだけ神経が太くなけりゃ出来ねーよ。」
美「あらあら、私は繊細なのに……跡部部長は酷いですわ」

頬に手を当てて嘆く姿は様になっているが目は愉快そうだ。
跡部の口許がヒクついた。
確かにいい性格をしている。

美玲は漸く桃百合に目を向けた。
このんに向けていたものとは違って絶対零度の眼差しを…… 

それに桃百合は怯みながらも噛みつく。

桃百合「なっ、何よ!姫華に向かってその目は!?」
美「……、別になんでもありませんわ……
ただ……随分醜い方が私の可愛い可愛いこのんを虐めてくださったのだと……」

にっこりと笑みを浮かべながら日吉に押さえつけられている桃百合の顎を掬い上げた。

美「あらあら…、確かに美しい顔立ちですこと……
まるでマネキンのようで不気味ですわ。」
桃百合「なっ……!」
美「綺麗なピンクの髪……ウィッグのようで滑稽な貴女にとってもお似合い♪」

クスクスと彼女は笑う。

どの美しい女神も時には残酷である。
彼女もまた、残酷で冷酷な美しさと慈愛をもち、周りに畏怖の念を抱かれているのだ。

このんは美玲にとっては最も自分らしくいられる居場所。
その無邪気さにどれだけ助けられただろうか……

だからこそ、無意味に理不尽にこのんを傷つける者を赦さない。

だからこそ、目の前の異物をコワシにきた。
優しい少女の大切な者を奪い、傷つけたゴミを

美「大丈夫……安心して?


貴女の情報…洗いざらい解剖したわ
……楽に死ねると思わないで頂戴ね……ねぇ?
桃百合姫華サン?」

嘲笑と軽蔑、嫌悪を最高に美しい笑みで贈る。
桃百合はその笑みに顔を赤くし、その言葉に青ざめた。
思考は追い付いていない。
ただ…、警告を知らせる頭の中のランプが赤く激しく点滅するのだ。










ーーこの少女は危険過ぎる、と…









桃百合はその判断と殆ど擦り切れているプライドでこの状況から抜け出そうと足掻く。


ーー今の自分は拘束されて動けない

ーーならば、どうやってひっくり返す?

ーーそんなの、桃百合のすべての知識を使ったってひとつしかない



桃百合「っ!神様ぁ!姫華を助けてッ…!
助けなさいよぉッ!!!!」


結局は神頼みしか桃百合の頭では考え付くことがなかった。 

















だが、

桃百合の神は現れなかった……

美「捕まえなさい」
桃百合「いやぁっ!いやぁああぁあぁぁぁぁッ!!
離しなさい!!
助けてッ!助けて若ぃいい!!!神様ああぁあぁぁぁぁ!!!!!」

美玲の合図に待機していた警察官が暴れる少女を拘束し、そのままヘリに乗せ、飛び立った。
見えなくなる最後まで、桃百合は神に救いを請いでいた。









 


ヘリのプロペラの音とわめき声が消え静になり、黙ってヘリを見上げていたこのんがいきなり崩れるように地面に座り込んだ。

条件反射で日吉が倒れないように支えたが、すぐにはっとしてゆっくり手を離した。


このんは日吉を見上げる。
何か考えると、
笑った。

「……日吉くん……ありがとー」


命を救ってくれて、思い出してくれて…
その柔らかな笑顔を、日吉は直視できなかった。
自分のした罪を自覚しているから…

だから、このんは静かに笑顔を消した。

「……もう少し、早く思い出してほしかったの…
試合をせずにすめば、よかった…」
日「…ッ!
…わかってる」

反論はない。全て事実なのだから……
このんは、日吉を越したくなかった。
まだ側にいたかった。


ゆっくりと立ち上がり、日吉の目の前に立つ。
このんの手が伸ばされる。





「くるしかったよっ……、バカ『わかしくん』」


このんは、もう限界だった。

途中から必死に強がっていた……
本当は、誰かに思いっきり甘えたくて、もう嫌だと弱音を吐きたかったのだ。

それでも、負けず嫌いな性格と周りの状況でそれはできないでいた。


それも……、もう限界なのだ。

強がりも、負けず嫌いも…………


殺されそうになり、美玲も来てくれて、日吉がもとに戻って……

もう、我慢の限界だった。


このんの頬をいくつも涙が流れ止まらない。
日吉は、抱きついて大泣きするこのんに戸惑いながらも優しく背中を撫でてやった。

不「あーあ、結局日吉か」
宍「暁来にとっちゃ、一番の家族だろうしな。」
白「頑張っとったからなぁ…」

部員たちは日吉に泣きついたこのんに苦笑や笑みを漏らした。

結局、一番は日吉なのだ。

師匠離れしたとしても、家族も幼馴染みも一番は。
近くで優しい笑みを浮かべ二人を眺めていた美玲が歩み寄った。

美「……正直、まだ貴方を赦せていないわ、日吉君。
あなたが一番、この子を傷付けたのだから……」

その言葉に、日吉は苦い顔をしながら頷いた。
それはわかっている、と。

でも、と美玲は続けた。

美「でも……このんにとって一番大好きなのは、悔しいけど日吉君なのよ。
貴方のために、頑張ってたことは電話で聞いていたわ。
だから、……もう傷付けないでね。
女の子はすごく繊細でちょっとつついてしまったら壊れちゃうんだから」

美玲の言葉は柔らかい口調だが、そこに鋭い刃が隠れていた。

『また傷付けたら……覚悟しておきなさい』

そう言っているのだ。
日吉は静かに頷いた。

日「……いつも以上に大泣きしてるコイツみれば、どんだけ我慢してたかはわかります。
俺が、どれだけ傷つけたかも……」

手も足も傷だらけで、洗脳されていた自分のためにどれだけ頑張っていたかわかる。
泣きじゃくって日吉のジャージを濡らしていくこのんに苦笑しながら日吉は美玲に言葉を返す。

日「だから、もう傷付けません
しばらくは、目一杯甘えさせてやります」
美「……なら、お願いね
あの異物はこっちに任せてちょうだい。
あなたたちは、安心してテニスに勤しんでくれれば親衛隊満足よ。
……あらあら、……このん寝ちゃったわね」 
美玲の言葉に下を見れば日吉にすがり付いたまま眠っているこのんがいた。
器用に立ちながら寝ているが恐らくそのままだと倒れるだろう。

日吉は呆れながらも困ったように笑みを浮かべこのんを抱き上げた。

ぐっすり眠ってしまった幼馴染みは身体が冷えていた。
かなり外にいたからだ。

不意に、越前が3人に近付いてきた。

越「……寝てんの?」
美「頑張って、緊張が抜けて、目一杯泣いたから疲れてしまったのよ
今日の午後は私がマネージャーの仕事をするから、温かい部屋で寝させてあげて?」
越「ッス……
……お疲れサマ、暁来」

日吉の腕の中で眠っている少女に苦笑し、涙をジャージの袖で痛くない強さで拭ってやる。

日「……このんを部屋に置いてくる」
竜「その子のことはアタシに任せな
……あんたは練習を始めるんだよ、日吉君」

竜崎先生がヒョイッと日吉からこのんを奪った。
日吉は一瞬唖然とし、竜崎先生をみる。

そして、戸惑いを露にした。
自分は、テニスを否定してしまったのだから……

日「っ……俺は……」
向「だぁあぁあああ!!!クソクソ日吉!!
ウジウジすんなよ気持ち悪い!!!」

いきなり向日は叫び走る勢いのまま日吉の背中にタックルを食らわせた。

日「ぐっ……な、何するんですか!?」

耐えたのは耐えたが、かなり堪えたのか日吉は批難の声を上げた。
向日は睨み付けながら叫ぶ。

向「いいからさっさと走れ!!
今のお前じゃまともに試合できねーだろうが!」

休んでんじゃねーよ!と言う向日に、忍足は苦笑した。

忍「せやなぁ……
ま、下剋上マニアな日吉らしゅうはないやろね
……で、何周走らすん?跡部」

チラッと横にいたキングに目を向ける。
皆の視線が跡部に向いた。

険しい表情で日吉を見ていた跡部は視線をもろともせずずかずかと近付く。

日吉の目の前に来ればアイスブルーの目を鋭くした。
真っ直ぐ見られ、逸らしたくなるが本能的に逸らせなかった。
いや、ここで逸らしては負ける気がしていたのだ。

数秒間の沈黙の後、跡部が口を開く。

跡「……今日一日、合宿所の周りを走ってろ
コートには一歩も入らせねぇ。
わかったらとっとと走ってこい、日吉」
日「!……」

日吉は自分がどうしたいか悩んだ。
跡部の言葉は、テニス部部長としての言葉……
テニス部部員である日吉への罰だ。

自分はあの時、テニスを捨ててしまった。
洗脳でも、捨てたのは自分である。

……それでも……、


日「……ッはい!」

ーーこんなことで辞めたくない

その信念が日吉を動かした。
一度だけこのんと竜崎先生に頭を下げ、この場を走り去った。


幸「……さて、俺たちもコートに向かおう。
もう休み時間は終わる」

ヒラリと肩に羽織っているジャージを翻し、幸村が真剣身を帯びた表情で立海のメンバーに告げた。
それに彼らは頷き歩き出す。

白「ん、俺らも行くで
暁来さん以上に頑張って四天宝寺の底力みせたるわ!」
遠「よっしゃぁああ!!やるで!
美人なねーちゃん、マネージャーお願いな!」
美「あら?
ふふ……、期待されちゃった。
このんくらい出きるかわからないけど、張り切ってやらせてもらうわね」
謙「美人は否定せんのんやな」

まんざらでも無さそうな笑みを浮かべ遠山に応える美玲に謙也は呟く。

それぞれの学校がコートに向かうのを顧問たちは満足そうに見送った。
竜崎先生はこのんの身体をこれ以上冷やすわけにいかないためもう部屋に戻っている。

青学のメンバーも自分たちもコートに向かおうと歩き出した時、ふと、越前は呟いた。

越「……あの人、どうなるんだろ」

















少女の断末魔が響く。
何処かの施設のクライクライツメタイツメタイ鉄の檻の中。
この地獄の先にも地獄があるなんて、今のこの少女に考える暇すらない。

シニガミがワラう。

シ「欲深い人間程愚かなものはないな
……
罪には罰を……
……そうだな…………、愚かな娘にはもう少し命を与えておこう。
屍を踏みにじり再び罪に手を染めた愚かな娘に……」

断末魔がキコエナクなるのはあと何年?何ヵ月?何日?何時間?何分?何秒?

それはシニガミが飽きるまで



















琥珀色の瞳がゆっくり開く。
蒼色は見えず、ただ高級な枕の純白が視界に写り驚いて起き上がった。

このんは自分達の部屋で寝ていたことに気付き、急に不安感に襲われる。


ーー全部夢だった?

ーーわかしくんは……?


気になってベッドから降りた時、ドアが開いた。

竜「!おや、起きたかい
まだ寝ててもいいんだよ」
「……でも……時間……」
竜「宇治宮さんが暁来さんの代わりにやってくれてるから大丈夫だ。
今日はゆっくりしな。」

宇治宮という言葉にこのんの不安感が拭われた。

「…………夢、じゃない……?」

日吉と試合をして勝ったこと、
桃百合に殺されそうになかったこと、
日吉が守ってくれたこと、
宇治宮が駆けつけてくれたこと……


全てが夢でなかったことに安心し、無性に泣きたくなった。

「っ、コート……行きたいのッ!」
竜「!……もう大丈夫なのかい?」
「行きたい!早く……みたい、です!」

全て終わったのを、この目で見たいのだ。
竜崎先生はこのんの体調が気になったが、本人が行きたいなら、と柔らかい笑みを浮かべた。

竜「なら行こうか。
はい、ひよこリュック」

ひよこリュックを渡されれば急いで背負う。
スニーカーを履いて早く早く気持ちが急かす。

廊下を走るように進み、コートが見えてきた時、このんの芦足が不意に止まった。

竜「これ!急ぎすぎだよ
……?どうしたんだい?」

立ち止まった少女に不思議がって声をかければ、振り向いた。


泣きながら、笑っていた


竜「暁来さ……「……みんながいるの……」!」

「わたし、がんばれたよ……!
みんながいるよ!!」

視界の先には真剣に楽しそうに試合をしているみんながいた。
日吉が走っているのも見える。

皆が、いるのだ

それが嬉しくて嬉しくてたまらない。

竜崎先生は目を丸くしていたが、ふと、笑って頭を撫でた。

竜「そうだね、暁来さんが頑張ってくれたおかげで皆がテニスをしてる。
……ありがとう、暁来さん」

ジャージで涙を拭って笑い返す。
コクりと頷けば休憩に入った皆のもとに走った。

皆がそんなこのんに気付き驚いていたが、すぐに呆れた笑みを見せた。




(これで全ておしまい)
(もうひとつの未来ははっぴーえんど)






























「わかしくーーん!」
切「結局日吉かよ!?」
幸「俺のところにも来てよー」
滝「日吉もやるねー」
不「うーん、カメラを持ってきたらよかったよ」

「えへへー」
日「ったく……」
「わかしくん!」
日「なんだ?」


「おかえり!!」

そう笑えば、困った笑みを浮かべた。

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あきゅろす。
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