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わかってほしいな…

練習が終わり、会議室に向かった。

手塚が戻り、竜崎先生たちの表情は嬉しそうだ。
跡部が録音していた桃百合の暴言を流した。

やはり、先生たちは険しい顔になった。

竜「…あの子やっぱりおかしな子だねぇ…
そりゃあ、部員たちはある意味王子様みたいな見た目だろうけど…ねぇ…」
渡「まるで夢物語でも言っとるみたいやなぁ…


なんとも言い難い空気になった。
彼女の言動は、先生たちにも理解しずらいらしい。

手「…俺は何度か、桃百合のその奇妙な言葉を聞きました。
…しかし、いくら嫌悪を彼女に感じても、何故か身体が言うことを聞かず、数分すれば思考すら侵される感覚がしました。
自分が自分でなくなっていく気分です…」

なんとか抜け出せた手塚だが、まだ感覚が残っているのだった。

静かに考えていた乾が口を開く。

乾「もしかしたらだが…日吉以外、日に日に我々が呪縛と呼んでいるものが強くなっていっているのかもしれない。
時間が経つにつれ呪縛が増して、抵抗する力がなくなっていく…
まるで砂時計のように」
滝「…なら、厄介だね。
どっちにしろ、呪縛がどうあれ彼女は一応危険な存在だって宇治宮さんが言ってたんだよね?このんちゃん」

腕を組み、どこか眉を寄せた滝はチラッとこのんに目を向ける。
肯定するようにコクリと縦に頷き、思い出しながら言葉を紡いでいく。

「…さっちゃんよばないといけないくらい…危ないって、いってたです」

・・・・。


「「「さっちゃんってだれだよ/やねんッ!?」」」

思わずつっこんだツッコミ組(宍戸、一氏、ジャッカル)

に、このんはおー…と気の抜けた声を上げた。

「みんな(かぞくと友だち)のじょーしき…です」
一「身内ネタ出すなやッ!!
で結局誰やねんッ!?」
「けーさつさん…です。」

警察→サツ→さっちゃん
らしい

桑「いや、わからねーよ!!
てか間のサツって不良かよ!」

ごもっとも。
とりあえずこのんがさっちゃんといえば=警察なのだ。

話がそれた為戻す(強制的に)

跡「とにかく…榊監督が戻って来てくださる前にできることはしておくぞ。
警察がくれば、まともな合宿が出来ねぇ…
それに、呪縛とかいうのが治らねェだろうな」

皆頷いた。
かつては敵だったが、今は関係ない。
共に合宿に参加している仲間なのだから

幸「俺たちも手伝うよ。
みんなでテニスをしないと、楽しくないだろう?なぁボウヤ」
越「そうッスね…
てか、ボウヤって止めてくんない…?」

睨みをきかせるが、幸村には効果はないようだ。

渡「こないなことになってしもうたけど、四天宝寺の底力、見せんとな。
とりあえず、育ち盛りなんやから腹ごしらえに行くでッ!」

ガタッと椅子から立ち上がってオサムちゃんは笑った。
その瞬間くぅーと小さな音がした。音がした場所にはこのんがお腹をポンポンと叩いている。

「…おなかすいたの…です」

注目されていることに気付けばそう言い、むぅ…とむくれた。

不「ふふ、かわいい音したね。
みんなで早く食べに行こうか」

このんちゃんも育ち盛りだもんねと頭を撫でればコクコク頷く。

そしてすぐ落ち込んだ
何故か

越「…どうしたわけ?」
「…生ハム…しばらく食べれないのざんねんなの」
金「日吉ちゃんが戻るまで食べへん決めたもんなぁ…」

むー…と考えに浸り、結局しばらく辛いもので我慢するらしい。

実際食堂でコックに頼んでカレーを作ってもらっていた。辛口の
不二が食べておいしいと言う程だ。
切原が食べてむせかえっていた。

幸「あんまり辛いもの食べ過ぎたら身体壊すからね」

かなり辛いカレーを頬張るこのんの頭を撫でる幸村だった。

「とうがらし…1日1グラムだけって決めてる…です。
それいないは、けんこーなのです」

まーいーにーちーひとっつー、まめちしっきーランランラン
と某豆犬の歌を口ずさむ。
最後のふふふ付き

パクッともう一口カレーを食べてふと何かに気が付く。

あの派手なKINGがいないのだ。
なんとなく気になって樺地に尋ねる。

「かばじ先輩、あとべぶちょーはどこか行ったですか…?」
樺「ウス…忍足さんの…ところです…」

そういえば夜あたりに行くと行っていたことを思い出す。
空になった皿をじっと見ながら早くみんなが揃って笑いあっている姿がみたい、と夢見た。

「ゆめみるだけ…ダメ
わたしも、ひっしなるもん」

ギュッと拳を作った瞬間、声がした。
かなり大きな…怒鳴り声

?「なぁ、お前らはあんなんがテニスって言うんか!?
ふざけんなやッ…!!」

いつでもクールで、本音を滅多に出さない忍足の心からの叫び声だった。
?「あーん…?テメーら、あのピンク頭の雌猫が仕事したところ見たか?
見てねぇだろ。
……監督の期待を、氷帝の誇りを汚すんじゃねェッ…!!」

いつも誇り高く、余裕綽々な跡部の、怒りだった。

おそらく集まっているのはフロントだ。
フロントから食堂まで距離があるにも関わらず、大きく聞こえるのは彼らの声がデカく、そして真っ直ぐだから。
夕食を食べ終えてリラックスしていた宍戸と樺地が立った。

宍「…ちょっくら行ってくるぜ
…片付けたのむな」
樺「お願い…します」
「…あい。」

見送ればドアに消える二人。
出てすぐに強い足音がしたのは全力で走って行ったからだろう。

このんは下唇を噛む。
まだ何もできない自分が腹立たしい。

怒鳴り声の応酬にただ耳を澄ます。
普通の怒鳴り声なら耳を塞ぎたくなるだろう。
そうでないのは、彼らの言葉が必死だから。

何よりチームが大切だからだ。

宍「あのピンク頭に構うことが大切なら、さっさと島から出ろッ!!
他人の恋愛に口を挟みたかねーが、現抜かしたお前らのテニスなんざみたかねぇよッ…!!!
長太郎、戻る気がねーなら相棒を止めろ!」
鳳「っ!し…宍戸さん!?」
忍「お前もや、岳人。」
向「クソクソッ!!なんでだよッ!?」

「…わかってよ…」

緩みそうな涙腺を引き締める。
信じているから彼らは敢えて酷く言うのだ。

ポンと、温かい手が頭に置かれた。

真「武を重んじるならば、強く心を持て
アイツらなら大丈夫だ」

不器用ながらも撫でる手は、自分と同じ武人の手で、心強かった

「っ…あいっ!」

残っていたご飯をきちんと噛み、食べればギュッとひよこリュックを抱きしめる。

跡「お前らがその程度だったなら…
今すぐそのジャージを捨てろッ…!!
レギュラーもテニス部も辞めろッ!!!」


一気に…静かになった。
状況はわからないけれど、何かがあったのだろう。

大きな声は聞こえなくなり、どうなったのかわからない。

深呼吸をして、ドクドクと早い鼓動を落ち着かせる。

?「…俺、今のおめーら嫌いだCー」

大きな声でないのに、はっきりと食堂まで聞こえた独特な口調の声。

?「…なんで、こうなったんだよ…
ただテニスしたかっただけなのにっ!
がっくんやおっしーや、跡部や、宍戸や、かばちゃんや、日吉や、チョタや、丸井くんやみんなと…笑ってテニスしたかったのにッ!!
なんでだよッ!!!
なんでバラバラになっちゃうの!?」

丸「…ジロ君…」

芥川の叫び声だった。
震えているのは、彼が泣いているから

誰よりも氷帝が大好きな彼が、泣いている…

芥「嫌だCー…!!
俺、まだみんなとテニスしてーんだよぉ!!!」

悲しそうな嗚咽が混ざった言葉に、悲鳴に、このんは目を開けて河村を見た。

「かわむらさん、稽古おねがいしますッ!!」
河「!暁来さん…」

河村は驚いたような表情になるも、少女の力強い表情にすぐに察した。

河「…うん、行こうか」
海「フシュウゥゥ…片付けはやっといてやる」
「ありがとーございます…!」
滝「いってらっしゃい、このんちゃん」

柔らかい見送りに強く頷けばひよこリュックをしっかり背負って稽古場所に走った。

「強くなりたいッ…です!!」

肩紐に書かれた文字が、握られてクシャリとなった。

氷帝側からの声が消えるまであと10分
このんたちが稽古場所に着くまであと4分


(わかってほしいの)
(みんながないてるんだって)

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