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きっときっと

幸村たちは柳たちのもとへ走りよれば、練習をしていた皆が止まった。

ラケットを下ろし、柳、切原、柳生が歩み寄ってて彼を無表情で見つめる。

幸「ッ……すまない…!!蓮二、赤也、柳生!」

幸村が地面に土下座をし、叫ぶように言った。
真田、丸井、桑原、仁王も土下座をする。

周り誰かが息をのんだ。

幸「俺たちは…俺は、王者の誇りを捨てていたッ…!!」
真「許してくれとは言わん。」
丸「また、お前らとテニスがしたいんだよぃ!」
桑「悪かったッ…」
仁「…ピンク女に捕らわれてはおらんかったが、まともに練習に入らんかった…。
悪かった」

周りが柳たちの反応を見る。
柳が前に出て、見下ろす。

柳「……
謝る暇があるなら、さっさとランニングに行ってこい。」

その声に、怒りや悲しみはなかった。
見上げれば、3人はいつもの顔をしている。

切「早く走ってきてくださいよー!
ラリーできないじゃないッスか!」
柳生「遅刻の罰はその後ですよ」

ニカッと笑って首の後ろで腕を組む切原と、苦笑を漏らす柳生の言葉に、唖然としていたが、幸村たちはすぐ複雑そうな表情になった。

自分たちは腑抜けた姿を見せてしまったというのに、責めないのだろうか…と

切「部長たちがあんな風になったのは正直嫌でしたし、ちびっ子を理不尽に責めてたのを見たときは苛ついたッス。
でも、俺もあの女に少しでもベタついたっていう黒歴史ありますし、
何より、あれが部長たちじゃないってわかってたッスから!」

それにさっさと走んないともう練習終わっちゃいますよー!と笑う切原の言葉に、幸村はやがて困ったような笑みを浮かべた。

幸「…そうだな…。
俺たちはまずトレーニングをしてこないといけないもんな」
柳「あぁ、話はそれからだ。」

皆吹っ切れた表情になり、幸村を先頭に走りに向かった。

それとすれ違うようにこのんがドリンクを抱えてきた。
走っている5人を見て嬉しそうに笑う。

「幸村ぶちょーさんたち、たのしそー…」
越「結局テニス馬鹿ってやつなんじゃない?」
「なら、ピンクさん以外テニス馬鹿…なの
わーい」
不「…わーいに感情こもってないね…
でも、良かったね…このんさん」

苦笑気味な不二に頭を撫でられ、コクコクと頷いた。

「みんな…ぜったい戻す…です。
そしたら、いっしょ…テニス馬鹿なのです」

ぜったい、という言葉にこのんの気持ちが現れていた。

「それまで生ハム食べない、です!(グッ)」
越「……重要なの?それ」

拳をギュッと握って意気込む姿に、越前は呆れたように呟く。

柳「ちなみに、生ハムと日吉…どっちか一つ選ぶならどうする?」
「………………………、
………きゅーきょくの選択…なの」
切「…日吉と生ハム同レベルかよ」

久しぶりに同情した切原だった。

午前中の練習が終わり、幸村たちを含めて会議室に向かっていた。
幸村たちはトレーニングが終わった後僅かしかテニスコートに立てなかったが、桃百合の側にいた時よりどこか満足しているように見える。

幸「…、暁来さん、ごめん…
あんな酷いことを言って…泣かせてしまって…
謝るだけじゃ、足りないのはわかってる…」

幸村は恐る恐るといった感じにこのんに謝罪を口にした。
その姿は、大人に怒られる子供のようにみえる。

このんはじっと幸村を見て、琥珀色の目を瞬かせた。
それから、息を小さく吸って口を開く。

「幸村ぶちょーのばーか!
びじーんっ!いけめんさんっ!!」

……

幸「へ…?」

このんの口から出た悪口…というかむしろ褒め言葉にポカンという顔をした。
それを見て楽しそうに笑う。

「幸村ぶちょー、拒絶…した。
でも、また幸村ぶちょーと遊びたい…のです。
それに、自分のイヤなこと、しかえししたらバチあたるです。

またあそぶためには、仲なおり…です!」

へにゃっと笑って幸村の手を握った。
気の抜けた笑みと言葉に、少し泣きたくなった。
優しい…というか、無邪気…というか…

とにかく、ホッとできるような笑顔と言葉に自分に対する憎しみが薄れた気がする。

幸「……ありがとう…こんな俺でも、受け入れてくれて」
「またみんなでトランプ、したいです。
きょーりょく、してくれる、です…?」

小首を傾げたこのんに、幸村は微笑んで頷いた。
またへにゃっと笑うみにまむ少女に、もう忘れないようにと繋がったままの手をしっかりと握りしめた。


会議室に入れば、竜崎先生とオサムちゃんがいた。
こちらをみて、2人は笑った。

竜「おやおや、立海はみんな揃ったみたいだねぇ」
渡「四天宝寺も皆はよ揃わんとな!
そしたらまた流しそうめんやるでッ!」
一「いや、季節違いにもほどがあるやろッ!
つかまた流しそうめんかいッ!!」

オサムちゃんのボケ(?)に思わずつっこんだ一氏であった。

皆が椅子に座り、まず真田が口を開いた。

真「先生方、この度はせっかくの機会を台無しにしてしまい大変申し訳ありませんでした。」

沈黙が会議室を包んだ…

が、すぐオサムちゃんによって消された。

渡「アカンアカン。
こういう時は走ってきてスライディングしながら土下座せんと
もしくはジャンプして土下座やな!」
小「いや、シリアスぶち壊しやないか。
てかそれは四天宝寺のノリやろッ!」
真「…申し訳ないッ!!」
宍「ホントにやるなよッ!?」

またまたオサムちゃんがボケ、真田が忠実に実行したがためにシリアスなど皆無となってしまった。

幸村とこのんが爆笑して声がでていなかったが。

「っ…!…、…!!」
柳生「笑いすぎて酸欠になってますよ。」

深呼吸せぇ深呼吸、とパタパタと腕を上下に動かして笑うこのんの背中を失礼、と言ってから優しく撫でながら言う。

やっと落ち着けば竜崎先生が軽く咳払いをする。

竜「ゴホン、とにかく、今日のことを報告してくれるかい?」
乾「はい」

乾がノートを開き、代表して今日の出来事をわかりやすく伝える。


練習している者たちにしかドリンクなどを用意しなかったこと
仁王がこのんに渡した折り紙(手紙)通りに柳のノートをこのんに渡し、桃百合についていた者たちの目の前で読んだこと。


このんがひよこリュックから柳のデータノートを取り出し、渡した。

「あい、やなぎ先輩」
柳「あぁ、ありがとう」

パラッとみにまむ少女の読んだページを開き、先生たちに見せる。

柳「これが、そのページです。
…いくら桃百合の虜になる力が強くても、仲間としての根性は腐っていない…ということでしょう。」

柳の確信に満ちた笑みに、跡部も頷く。

跡「他の奴らにも、波紋が広がった。
少なくとも、合宿以内になんとかできそうだ
…日吉以外な」

バッと部屋にいるほとんどが跡部を見た。
何故、という視線が

このんは、ジッと目の前を見ている。

金「なして、日吉くんだけなん…?
…あの子の、一番のお気に入りやから…?」
跡「だろうな
一番縛られているのは日吉だ。
どう見ても…な」




「なら、ひよしくんに思いだしてもらうだけ…なの」

静かな口調で、このんは呟く。
小さな声だったが、全員の耳に確かに届いた。

皆の視線が、跡部から小さな少女に移る。

海「思い出して貰うって…どうやって…」

海堂の言葉は確かだ。
強い呪縛に縛られた日吉は、今は桃百合の虜…。
簡単には戻らない。

また、傷付く可能性はある。

「……わたしは、古武術…やってるです。
それは…、ほとんどひよしくんのまねっこ…なの。
わたしが古武術で、全力でたおす……へにゃちょこなひよしくんを…

……下剋上、ですッ…!」

そこにいつもの眠そうな目はなかった。
日吉が跡部に挑む時の目と同じ…その目だ。

下剋上と発した声は、まるで叫ぶように出ている。

滝「…このんちゃんなら、出来るよ」

滝が応えた。
不敵な笑みを浮かべて。

それに続いて切原も何度も頷く。

切「そうっスよ!
ちびっ子、身体ちっこいけど握力かなりあるんスよ!」
丸「へぇ…真田よりか?」
切「いい勝負じゃないッスか?
とにかく、ちびっ子なら勝てるぜ!」

ニカッと笑う切原に、このんは軽く瞬きをしてから笑う。

「あいっ!
でも、まだ勝てないです…。
一人れんしゅーじゃ…
武術…出来る人、いないです…?」

すると、河村が手を上げた。

河「空手だけど…」
「…けいこ、お手伝いして、くれませんか?」
河「うん、俺にもできるなら。」
「おねがい…します」

河村と稽古をすることが決まったようだ。

桑「頑張れよ。
応援しかできねーけど…」
仁「ちびっ子なりに頑張りんしゃい」
「あいっ!
がんばるの…!」

やる気に満ちた表情で敬礼のポーズをした。

「ひよしくんに勝つまで…生ハムきんしれー…なの」

その言葉にツッコミ組(一氏、宍戸、桑原)につっこまれるまであと1秒…


(きっときっと、…ううん、ぜったい戻すの)
(めざせげこくじょーっ!)



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このんちゃんの下剋上計画開始(笑)

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あきゅろす。
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