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ペテン師はワラうside仁王

姫華とかいう滅茶苦茶な女が来て2日目…朝食堂に向かえば、なんとまぁ…ほとんどがあの女の虜になっていた。

唖然としたもんじゃ…


柳や乾、氷帝の滝に四天の金色と小石川がなんもなっちょらんかったのは、よぉわからんが…
柳や乾ならデータマンじゃからノートを見て元に戻ったっと言うところか……

嫌じゃが、ピンク女の近くで観察したナリ。

まさか、あんなにちびっ子を可愛がっていた幸村や保護者面していた日吉があの女に夢中で忘れるなんてのぅ……

ちびっ子が泣いて当たり前じゃろう…
初対面でビクビクしていて気が弱いことはわかっとったしのぅ

皮肉だが、それで赤也ややぎゅーたちが元に戻ってくれた。

後は、ちびっ子に一番近かった奴らか…

日吉が一番重傷じゃろうな。
幼なじみ兼師匠兼兄貴分とかいう最も身近な人間だったにもかかわらず、あのピンク女を毛嫌いしていた奴が…あそこまでちびっ子を拒絶し、ピンク女の味方になっちょる。


…流石に酷いのぅ…
ペテン師と呼ばれる俺じゃが、そう思った。

まぁ…赤也と越前が連れて帰ったちびっ子の表情は、吹っ切れたように笑っていた。

弱々しい今までの顔が嘘みたいに…

丸「おい、仁王!」

ブンちゃんの言葉にハッとする。

仁「なんじゃ…」
丸「なぁにボーっとしてんだよぃ。
置いてくぜぃ?」

…ブンちゃんはピンク女の虜になっちょるが、なんだかんだ言って仲間思いじゃな……

でないとわざわざピンク女のそばから、離れた場所におる俺を予備に来んぜよ。

仁「おー、悪かったナリ」

チラッともう一度ちびっ子たちに目を向けた。
こっちにない、やる気に満ちた雰囲気が漂っていた。

…はよテニスをまともにやりたいナリ……





日が変わり、俺はある用事の為に部屋のドアをタイミングを考えて開けた。

思った通り、ちびっ子がコートに向かおうと部屋から出てきて廊下を歩いていた。
…あのオサムちゃんとかいう四天宝寺の監督に髪をボサボサにされたのか、そのままで向かおうとしとる。

…そういえば…、髪をボサボサにされた時は必ずと言っていいほど日吉が直しとったな。

ちびっ子も俺に気づいたが、ただ不思議そうな目をしている。
ほォ…流石はちびっ子じゃな。

どうやら、俺がピンク女から少し離れた場所にいたことを気づいていたようだ。

が、確信が持てないからか俺に声をかけたりはしなかった。
前を通り過ぎようとした時、

俺はちびっ子の髪に触れた。

「…え…」
仁「髪、ボサボサナリ。
少しは整えんしゃい。」

きょとんとした顔で見上げてくるちびっ子に無意識に口角が上がる。

おーおー、サラサラじゃのぅ…

そのまま髪を手櫛で直していけば、元のふわふわした髪型に戻った。
終わればちびっ子のパーカーのポケットに手を入れ、手に持っていた折り紙の鶴を入れる。

ちびっ子なら、うちの参謀にみせるじゃろう。

そのまま散歩に出かけるように姿を消す。

桃百合「あ…!雅治おはよぉ〜♪
会いにきてくれたのぉ?姫華嬉しい!!」

誰がお前なんかに会いに行くか

と思うが、笑顔という仮面を張り付けてこの女が喜びそうな表情にする。

仁「おー、姫華がちゃんと起きとるか心配でのぉ…」
桃百合「ええ〜!?ひっどぉい…!!
雅治すぐ姫華をいじめるんだからぁー!」

妄想もいい加減にせぇよ
とにかく、この女とはあまり話がしたくない。
ちょうどこっちに向かって来てる桃城と菊丸に押し付けるぜよ…

桃「あ…!!仁王さんズリィ!
俺らが一番先に姫華さんに会いに行こうとしてたのに…抜け駆けはいけねーなぁ、いけねーよ」
菊「だにゃぁ…。
まぁいいや、おっはよー!姫華」
桃百合「おはよぉ〜!桃に英二!!」

自分ではにっこり…と笑っているようだが、俺からしたらニヤニヤと下心丸出しな笑みにしか見えんナリ。
この2人はそれに気づくことなく頬を染めておる。

仁「えぇじゃろ?ま、俺が起こしに行く意味はなかったようダニ。
俺は少し部屋に戻ってくるぜよ。」

ピンク女の返事が引き止めようとするが、さらりとかわして部屋に向かう。

散々じゃった……だが、ちびっ子に渡ったアレが柳の手に移れば、ピンク女の楽園は欠ける。
ニヤリと口角を上げ、着いた部屋のドアを開けた。



ピンク女たちと練習時間に遅れてコートに入る。
一瞬柳たちがこちらを見たが、すぐ練習に入っていた。

ちびっ子が、ピンク女に向けて睨み付けたのが少し見える。

…ほぉ…、幸村の試合中の時の目みたいぜよ…。

こっちのメンバーがピンク女とお喋りをしているのを横目で見ていたとき、幸村が驚いたような顔をした。

幸「あれ…?
姫華、ドリンクとタオルがないんだけど……」
桃百合「えっ…!?」

テントにはドリンクやタオルの山はなかった。

なるほどな……まともに練習をせん奴らには出さんってことか
その証拠に練習をこなす柳たちの方のドリンクとタオルは、きちんと綺麗に置いてある。

仕事をこなしていると豪語するピンク女にとっては予想外な展開ぜよ。

姫華「あ…あれぇ…?
お、おっかしぃなぁ〜…ちょ…ちょっと小屋に行ってくるね!」

クククッ…焦り過ぎてどもちょるな

桃百合「ご、ごめんねぇ〜!すぐ作ってくるからぁっ!!」

なんとか笑みを繕って走って行く。

ちびっ子は確か小屋に入っている……どうするかのぅ…?


数分後にピンク女が走って来た。

ククッ…一瞬見えた顔は傑作ナリ。
顔面崩壊状態ぜよ

さっきちびっ子と四天宝寺の監督が出て行くのが見えた。
おそらく、ピンク女にとってかなり気に入らないことがあったんじゃろ。

桃百合「み…みんなぁ〜!」

手で顔を覆い、俯いて泣いているフリをするピンク女。下手じゃのぅ…俺じゃなくても見破れるナリ。
まぁ…今のコイツらにはできんじゃろうが…な

鳳「姫華先輩…どうしたんですか…?」
手「何かあったのか?」

鳳と手塚に次いで俺以外が心配げに尋ねる。
俺も一応近づくがな

桃百合「ひっく、ひっく…
あのねぇ…作ってたドリンクとタオル…違う子が勝手に他の人たちに持っていったからぁ、新しく作ろうとしたら邪魔されてッ…
邪魔だ、とかぁ…役立たず、とか言われてぇ〜…!!」

……それはお前さんがちびっ子に行った言葉じゃろうが

心底呆れながらピンク女を見る。

真「仕事をこなす桃百合の邪魔をするとは…たるんどる!」
幸「ふふ…確かに許せないね」
白「せやなぁ…」

あーあー…簡単に騙されて…

皆が慰めている間に、ちびっ子が入っていくのが見える。

謙「あっ!アイツちゃうか?
今小屋に入っていったで!」

目ざとく四天宝寺の忍足が言う。
…そういえば、氷帝の忍足は…

チラッと近くにいた氷帝の忍足を見る。
奴も気付いたのかこっちに目を向けた。

…なるほど…

氷帝の忍足がどっち側かわかれば、ちびっ子のいる小屋に行ったアイツらの背を追う。

真「おい
貴様、姫華がドリンクを用意しようとしたのを邪魔した挙げ句、暴言を吐いたそうだな。」

怒りの籠もった真田の声が外でも聞こえる。
こっちからはちびっ子の表情は見えんが…

「どーして、『はじめまして』の人に怒られないとダメ、です?
わたしは、今日は桃百合さんに…一言も、口をきいてないの…ですよ」

何故?と怖がる様子もなく真田に尋ねる。

たしかに、真田たちはちびっ子を忘れているから『はじめまして』、で合っとるのぅ

白「せやけどなぁ…、それは嘘やろ?
実際、姫華は傷ついてるんやで…
しかも、俺らのドリンクはなくて柳君たちにはある…おかしゅうないやろか?」
「わたしはウソ、言ってない…です。しょーこ、あるです。
それに…ドリンクとかはがんばってる人に作った、です。」
遠「なんやて?ワイら頑張っとるやないかッ!!」
幸「遠山君の言うとおりだ。
キミは何をみていたんだい?」

ちびっ子の発言で幸村たちが苛立つのが見えた。
…ちびっ子の発言は最もナリ

ジーとチャックの開く音がし、何かを取り出すのが見えた。
…流石は参謀じゃ

「『合宿4日目
10:37と16秒 桃百合についている者たちは2時間7分と16秒遅刻し、やっとやってきた。
俺たちに何の謝罪もなく、反省もない。
11:08と39秒 あちらはやっとテニスを始めたようだが、ランニング・筋トレ・ストレッチ・素振りなどを全く行っていない。
常に桃百合に芸を見せるかのようなプレーを行っているだけだ。
これがお前たちのしたかったテニスなのか?』」

ちびっ子が、何かを読み上げた。
それは、柳のノートだった。

空気が固まったが、すぐにジャッカルの声がした。

桑「こ…これ…
柳のノートじゃねぇかッ!!
なんでお前が……」

困惑

立海の奴らの顔はそれだった。

幸「ッ!!見せろ…!」
幸村がジャッカルの手からノートを取り、ジッと読む。
その表情は、ノートを見た瞬間に変わった。

幸「ッ………、…」

真田も、丸井も、ジャッカルも。
後悔、に。

謙「せッ…せやけど、それ全部嘘やろ?
柳の文字に真似てやればできるもんやろうし…」

四天宝寺の忍足の言葉に、俺は口を開く。

仁「そいつはどうじゃろうかのぅ…」

俺の言葉に、ピンク女の表情がさらに困惑していた。
ちびっ子に向かおうとした時、手を掴んできたから振りほどく。

俺は、ピンク女に最大の拒絶をする。

俺の仲間を侮辱した罰ぜよ…

ちびっ子に近付けば、こっちに満足げな顔を向けてきた。

…ちびっ子も流石ナリ

仁「どうじゃ?
柳は気付いたんじゃろう」

ちびっ子が頷いた。
意味が分かっちょるみたいじゃな。

「でももとどーりにしてもらったの…です。」
仁「おーおー、流石は参謀ぜよ
末恐ろしいダニ」

喉で笑い、幸村たちを見る。

近くにいた真田の肩を叩く。

真「…!…、仁王は…わかっていたのか…?」

先ほどと違って弱々しい声じゃった。
だが、確信をもった言葉に笑ってみせる。

仁「まぁのぅ…
じゃが、こうせんと元に戻らんほど呪縛は強かったナリ。」
真「………否定はせん」
真田たちがちびっ子を見る。

懺悔に満ちた表情で。

ちびっ子は怒ることも、責めることもなくヘニャリと笑った。
いつものように…

「やなぎ先輩たち、まってる…ですよ。」

その言葉で弾けるように幸村たちは柳たちがいるであろうコートへ走った。
桃百合「えッ…
精市、弦一郎、ブンちゃん、ジャッカルなんで…!?」

まだ自分を選ぶと思っていたのか真田たちの突然の行動にピンク女が唖然としちょるぜよ…

俺も走り、すれ違い様に呟く。

仁「ピヨッ」


その時の表情はあまりにも滑稽過ぎじゃった。

さぁて…やっと本当のテニスをしようかのぅ…

じゃが、まだ終わっちょらんが……

(ペテン師は嘲笑う)
(愚かなお姫様に捕らわれていた仲間を解放しながら)
(愉快で滑稽なラストを迎えるために)

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あきゅろす。
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