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ふぁいと、おー!


切原と越前がこのんを連れて帰れば、試合をしていない桃百合の呪縛から解放された者や元々かかっていなかった者が3人に駆け寄った。

柳「暁来を連れて帰ってきてくれたようだな」
不「無事で良かったよ…」

不二は柔らかく微笑んで言った。
このんも嬉しそうに笑う。

「ごしんぱい、おかけしました…です」

ぺこりと頭を下げる。

滝「気にしないで
このんちゃんにとって、辛い出来事だったんだし…」

不二と同じように柔らかく微笑んでいる滝が優しく頭を撫でた。
それにくすぐったそうに目を細める。

周りの空気や柔らかくなった気がした。

渡「おっ!
キミが暁来さんやね?」

そんな中、傍観していた四天宝寺中男子テニス部顧問の渡邊オサムが声をかける。

このんはオサムちゃんを見上げ、金色を見た。

金「暁来ちゃん、この人がぁ、ウチら四天宝寺の顧問のオサムちゃんよぉ〜。」
「オサム…ちゃん、です…?
…はじめ…まして。
臨時マネージャーできました、ひょーてー学園一年の、暁来 このん…です。
よろしくお願いします…です。」

ぺこりと綺麗に90°腰を折るこのんに、オサムちゃんは苦笑した。

渡「丁寧な挨拶やなぁ…
小春の言った通り、四天宝寺中テニス部顧問の渡邊オサムや。
オサムちゃん言うてな!」

人懐っこい笑みに、このんの表情は和らいだ。
初対面が苦手な癖はあまり出ないみたいだ。

コクリと頷く。

それに満足したようにオサムちゃんはくしゃくしゃとこのんの柔らかい髪を撫でた。

渡「辛い思い、しとったみたいやな…
もう大丈夫やで、
オサムちゃんは毎回コートに来て様子を見とるからな!」

アホなアイツらを元に戻そうな!と励ましてくれるオサムちゃんに、このんの涙腺がまた緩みそうになった。
だが、必死に食い止めて力強く頷いてみせる。

「あいっ!
また…『みんな』をちゃんとサポート…したい、です!!」

このんの言葉に、跡部たちはどこか優しく笑う。

跡「あぁ…、あの雌猫なんかに壊されてたまるか」
海「フシューー…同感です。
あの桃城のバカは一度殴らねーとな」
一「小春と俺がおれば百人力やでぇッ!!
なぁ、小春ぅ」
金「宍戸くぅん!絶対に元に戻そうなっ!」
一「こっ…小春ぅぅうう!!」

なんやかんやで賑やかになった彼らに、このんは嬉しそうに笑った。

越前は歩み寄って、一緒に笑う。

越「良かったじゃん。暁来」
「うんっ…。よかった……。
もうね、逃げないよ…。みんなのテニスまたみたい…。
だから、わたしも…がんばるの」

きゅっと手で力強く拳をつくる。
クスっと笑い、越前は自分の帽子をこのんの頭に被せた。

「あぷっ…
…?」
越「みんなが戻るまで貸してあげる。
頑張るんでしょ?」
「!…あい!」

越前の帽子をしっかりと被り直し敬礼をした。
もう不安の影は消えていた。







練習が終わり、合宿所に帰れば姫華を取り巻く者以外は会議室に集まった。
竜崎先生が先に入っており、榊監督から送られてきたであろう資料を眺めていた。

竜「おや…
元に戻ったのが数人増えたねぇ」

竜崎先生の表情はどこか嬉しそうだ。青学の不二、大石、海堂はそれに応えるかのように頷いた。

大「お騒がせしました。
手塚たちは必ず元に戻してみせます。」
不「他の学校の人たちも、ですけど」
竜「あぁ、そうだねぇ。
せっかくの合宿だ。私らも最善を尽くすよ。
腑抜けた姿なんて、見せるもんじゃない」

腕を組み、うんうんと頷く竜崎先生。
皆を座らせ、話し合いが始まった。

まずは、竜崎先生に榊監督から送られてきた資料を見せられた。

竜「榊監督が孤児院に行ってあの子について聞きに行ったのだけれど…
おかしなことにねぇ…」

資料には、「桃百合 姫華という少女はいなかった」と書かれていた。

跡「『いなかった』…?
どういうことだ…」
宍「こっちの紙に、『桃百合家の女史は嫁いでいない』…って…」

跡部や宍戸が眉をひそめる。
皆も、他の資料を読むたびに疑問が上がっていく。

存在しないハズの桃百合 姫華という少女が何故、ここに存在する…?

全員、嫌な汗が伝う。

「…なんで榊かんとくがしらべて…桃百合さんのじょーほーがふつーにあったんです…?」

ふとこのんが資料を見ながらキョトンとした表情になる。乾もその言葉に同意するように頷いた。

乾「ここまで該当なしなら、榊監督が見たという資料も気になるな。
我々がみた最初の資料ともどこか矛盾がしょうじている。」

彼と柳の姫華に関するデータで、最初監督に見せてもらった資料についてと比較させる。

抜け出した者たちはそれを覗き込み、更に混乱する。

小「…意味分からんなぁ…」

桃百合に関する不信感だけが募る。

「…!…りゅーざきせんせー、電話出てていーですか?」

このんのケータイが光っていた。
ピンクの光を点滅させるそれを竜崎先生に見せ、尋ねる。

竜「ん?誰からかい?」
「えっと…、ひょーてーのテニス部しんえー隊の総たいちょーさんからです。」
跡「!宇治宮か…!
確か、報告していたんだったな」

跡部が反応した。
竜崎先生は不思議がりながらも了承した。

このんが電話に出た。

「もしもし?
……あい、跡部ぶちょーと、ししど先輩がもとに戻ったです。
………え…、桃百合 姫華って人物は市役所に登録されてない…です?
…、………けーさつにそーさ、依頼したんです…?
……あい、わかったです。
また連絡します、です。」

ピッと電話を切る。

大「警察に依頼って…どういうことなんだい…!?」
一「市役所に登録されてないって…ほんまにアイツなんなん!?」

宇治宮との会話で漏れた言葉にそれぞれ反応を示す。
まさか警察沙汰となるとは思っていなかったのだろう。

「えっと…
みれーさんが、こーきのーなハイテクパソコンで調べたら、市役所にまったく登録されてないらしーです。
今すんでるとこも、ホントは誰もすんでいないハズらしくて…
みれーさん不審がって警察に依頼したらしーです。」

先ほどのことを簡単に説明した。

越「…まるでユーレイみたいッスね…」

気味が悪いという表情で呟いた。
海堂がこの言葉で青ざめたのは言うまでもない。

「ホントにユーレイだったら、呪い…かな?」

異常なまでに桃百合に執着してしまうということになんとなく呟く。
考えてみるも、結論は出なかった。
とりあえず、次の榊監督からの連絡を待つこととなる。

このんは夕食を竜崎先生と2人で食べることにした。

不二と滝曰わく、
「あの女がなにかしでかすに決まってるからね」

らしい。
その時の笑顔は今までで最高に黒かったと宍戸は後に語った。



夕食を食べ終え、風呂にはいる前にこのんは一人外で稽古をする。
一人だけでは限られたことしかできないが、やっていないと落ち着かない。

しばらくやると、雪が降ってきた。
気温が下がってきたのだろう。

このんはこれ以上やったら風邪をひくかもしれないと稽古を中断した。

汗を拭き、部屋に入る。
中はやはり暖房がきいていて暖かい。

ふと、人の気配が近づいて来るのを感じた。
大勢で、しかも騒がしい。

桃百合たちだとわかればすぐに隅に隠れた。
何故隠れたかと言うと、部屋から遠い場所であり、人目につきやすい場所だったからだ。

普通の人なら入れないような狭い間に潜り込んでじっと息を殺す。

近づいてくるにつれ、騒がしさが増す。

白「ほんまかわぇえなぁ…
シャンプーの香りもえぇ匂いやし」
向「後でオレの部屋でゲームしようぜ!」桃百合「ありがとぉ〜くらぁVv
姫華がっくんと遊びたぁい!
でもぉ…姫華はみんなのだしぃ〜、みんなでやろぉ?」
鳳「姫華先輩は優しいですね…」
幸「ふふ、じゃあみんなでやろうか。
トランプでいいかな?」
桃百合「うん♪
若もやろうねぇ?」
日「いいですよ。トランプは久々ですけど」

日吉が桃百合に笑いかけている。
このんはその笑顔をみて眉を寄せた。

「(…なんか、わかしくんらしくない笑顔…
不気味…すごく)」

正気な本人にいったら確実にアイアンクローだろうが、異常に笑顔なのが幼なじみからしたら不気味に感じれた。

しばらく観察していたら、桃百合が彼らから離れた。

化粧直しをするらしい。

が、彼らが先に行っても彼女は化粧を直しに向かわずそこにいた。
当たりをキョロキョロとして、先ほどの笑顔より邪悪なものになる。

桃百合「大好きな王子様たちが姫華をめぐって争う姿はホントに楽しいわぁ♪
若も姫華にメロメロだしぃ!
でもぉ…、なんだか景吾がいなくなっちゃうしぃ、周助も亮も近づいてこない……
神様にあんなに可愛く頼んだのにっ!!
あぁ…きっと構って欲しいからわざとなのよ!!
仕方ないよねぇ…なら構ってあげないと♪
そーいえば、チビなモブ女、いい気味ぃ!
萩ノ介が守ったのは予想外だったけど、みんなが姫華の言葉を信じてチビ女を虐めて見てて笑いそーだったわねぇ〜
さっさといなくなればいいのにぃ〜!
でもぉ〜イベントを盛り上げるには利用できるしぃ〜。
トリッパーならトリッパーらしく嫌われてもらわなきゃ♪
あっ!早くお化粧してみんなのとこにいかなきゃっ!!」

嵐のように独り言を吐き、嵐のように去って行った。

しばらくしてからこのんは隅から出てきた。

「……ぜったい負けないもん…」

少女の目には覚悟が宿っていた。
ギュッと手を握りしめ、走って部屋に帰った。

部屋に戻り、それから越前が不二と共に来るまであと5分…


(ぜったいもどすもん)
(ゆーれいさんのすきにさせないからね)

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