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やくそくげんまん sideこのん

わたしは、今よりちっちゃな時にイジメにあってたの…。
氷帝学園初等部に入ってすぐから。

なんでかわからない…
きょーかしょやノートを隠されたり、ゴミ箱に捨てられたり…、机に落書きされたり……

学年があがるたびに、ひどくなった。

それでも、おかあさんたちにいえなかった。
おかあさんたちは仕事で忙しいから…。

ほとんど、ご近所のわかしくんのお家で過ごしてた。

うんと小さな頃から、わかしくんはおにーちゃんみたいな存在だった。
わかしくんのおにーちゃんも、わたしのおにーちゃんみたいな存在。

ひよしおとーさんはわたしのおとーさんのお友達。

朝起きたらひよしおじーちゃんによく古武術を教えてもらった。

わかしくんは稽古すごく熱心で、わたしのあこがれだったの…。

でもわかしくんに、イジメられてることはいえなかった。
だれかに言ったらもっとイジメるって言われたから…。

いつのまにか、わたしはひとりぼっちになった…。

仲良かったお友だちも、いなくなった。
助けたらイジメられてるから…。

五年生のあのときまで…わたしはひとりぼっちだった…。

その日、いつものようにイジメられてた。
昔みたいに、モノを盗られるやさしいイジメじゃなくて……
5人の男の子や女の子に怒鳴られて、囲まれて、叩かれたり、蹴られたり、殴られたり…。

古武術を習ってるおかげか、ふつうにやられるよりはケガはしなかったけど、痛かった。
寂しかった、辛かった、悲しかった。

なんでわたしなのかなって…何回も考えた。

でも、考えてもわからなかった。
いろいろ言われても、なんでわたしなのか…

いつものように…僅かなてーこーも諦めてたとき…

「――おい、何をしている…?」


わかしくんが現れたの。


「なっ、何にもしてねーよ!」
「コイツが生意気だからムカつくんだよ!!」
「まゆちゃんの好きな男の子に告白されたからって生意気なのよ!暁来は!!」

見つかったからか、みんなあわてたようにいいわけを言う。
わたしはちょっと地面にうつ伏せになってたから、わかしくんの表情はわからなかった…。

また男の子がわたしを蹴ろうとした瞬間、何か落ちたような音がしたの…

びっくりして顔をあげたら、その男の子、地面にたおれてた。
わかしくんがわたしを庇うように立ってて……
男の子を投げ飛ばしたんだ……
それに驚いたのか怖がったのか、わたしとわかしくん以外みんな逃げていった。

しばらく黙ってたけど、わかしくんはゆっくり振り向いて、手を差し出してくれた。

日「……大丈夫か…?」

なんとか立てそーだったから、その手をとって立ち上がろうとしたけど…

「っ…わっ…」

足をたくさん蹴られたりしたから、痛くて立てなかった。

それを見て、わかしくんは眉をよせてた。

日「……なんで…黙ってた…?」

わかしくんは、怒ってた。
なんで怒るのかわからなかった…でも…

日「…バカが…
母さんが心配してたんだからな。お前が稽古以外で怪我ばっかりして帰ってくるから」

しゃがみこんでわたしの頭を叩いた。
いしあたまだから痛くないけど…ホッとしたから…

「っうわああぁんッ!!!!うわぁああぁぁー!!!!!」
日「ッ!うぉっ……
、たく…」

わかしくんに抱きついてたくさん泣いた。
わかしくんはちょっとびっくりしたみたいだけど、ちゃんと受け止めて、優しく頭を撫でてくれた…。

やっと…、安心できたの…

わかしくんはわたしが泣き止むまで、ずっと頭を撫でてくれてた…。

泣き止んだら目がまっかになってて、わかしくんに呆れられたけど、ハンカチを濡らしてきて目に当ててくれた。

やっぱり、わかしくんはわたしのおにーちゃんみたいな存在だって、ちょっと嬉しかった。

お昼休みが終わって5時間目が始まってしまっても、わかしくんはわたしを保健室までおんぶしてくれたの…。

日「…次イジメに遭いそうになったら言え」
「…でも…、言ったらもっとイジメられるの…」
日「いいから言え。
最低限は庇えるし…何より、言わないと迷惑だ」

わかしくんの背中が温かくて…揺れがここちよくて眠りにおちそうになったとき、ぼんやりとわかしくんの呟きが聞こえた。

日「……次は、守るから……」

わかしくんはすごく優しい…
そのまま、わたしは眠りに落ちた。












起きたら、保健室のベッドに寝かされてた。
保険医の和代せんせーが、わかしくんがつれてきてくれたんだっていってた。

6時間目がはじまるギリギリまで、近くのイスに座って見守ってくれてたんだって……

身体はバンソコーやガーゼでいっぱいだった。

和代せんせーがすごく心配してくれて、アメちゃんをくれた。塩梅味だった。

女の子はあんまり傷をつくっちゃダメって怒られちゃった…
よくひよしおじーちゃんに投げ飛ばされてるんだけどな……あとわかしくんにも

和代せんせーは担任のタケちゃんせんせー(34才独身)に6時間目休むこといっておいてくれた。

だから6時間目おわるまで和代せんせーとおはなししたの。
おーきゅーしょちの仕方とか、手当ての仕方を教えてもらった。マッサージの仕方も。
今度おーきゅーしょちやマッサージの本をくれるって約束した。

せんせーはそれでたくさん学んだんだって…。
すごいよねー…


6時間目が終わって、教室にもどろーとしたら、わかしくんが先にきた。
わたしのカバンももってきてくれてた。

タケちゃんせんせーに頼まれたんだって。

今日はそろばんがあるから早く帰ろうって手を引っ張られながら保健室を出た。
もちろん和代せんせーにバイバイしたよ…。


真っ赤なおそらを見上げながら帰ってたら、わかしくんに頭また叩かれた。

日「よそ見しながら帰るな。転けたら放っておくからな」

なんて言いながらも手を握っていてくれるわかしくんはホントに優しかった。
わかしくんのお家に帰ったらわかしくんおにーちゃんとおかーさんがお出迎え。
二人ともわたしのケガみてびっくりしてた。
ごまかそうにもわかしくんがあっさり言っちゃった…

日「このんイジメられてた。
言ったらもっとイジメられるから言わなかったらしい」
「!わかしくん、言っちゃダメなのに…」
日「阿呆。そんなにケガばかりだとさすがに母さんも気づいてる」

そう言われ、わかしくんおかーさんを見上げた。
わかしくんおかーさんは眉を下げて、ぎゅってわたしを抱きしめた。
いきなりでびっくりしたけれど…わたしくんの温かさに似てて…ちょっと泣いちゃった。

次からイジメられたらちゃんと言うことをわかしくんおかーさんと約束した。

わかしくんのお部屋にカバンを置きにいったら、わかしくんが椅子に座ってまた不機嫌そうな顔してた。

日「……俺とも約束しろ。
次イジメられそうになったら俺に言え…。」

わたしはちょっとびっくりしたけど、頷いた。

「ゆびきり、げんまん」
日「……ん」

わたしが小指を差し出せばわかしくんは小指を結んでくれた。
「ゆーびきーりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます♪ゆび切った♪」

ゆびきりをして嬉しくて笑ってたら、また叩かれたけど、わかしくんもちょっぴり笑ってた。
それから二人で一緒にご飯をたべに向かったの。
わかしくんおかーさんのりょーりはとってもおいしい…

久しぶりに、ぽかぽかした気持ちになれたよ。




次の日から、イジメはなくなった。
またなんでかわからないけど、なくなった。

イジメで離れてたお友達も、ごめんねって言って仲直り。

でもわかってるの。
きっとね…、わかしくんが守ってくれてるからイジメはなくなったの。

わかしくんおにーちゃんも言ってたもん。

だから、わたしはわかしくんにお返ししたくて、この合宿にきたの。
古武術もテニスも、わかしくんより下だから…わたしにできるのはお手伝いぐらい……

ちょっとずつ、ちょっとずつ恩返しするの。
今幸せなのは、わかしくんのおかげだから……


(のこのこ頑張ってみるの。)
(わかしくんがわたしを忘れたのは……すごく…寂しいけど…)

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