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ありがとー…

乾が4人を連れてきたので、監督からの伝言を伝える。

「「おかしなことになったことには我々も気付いた。君たちはいつも通りに練習をしながら、彼らの様子を観察していて欲しい。昼休みに会議室に集合し、それを話してもらいたい…」…だそうです…。」

その言葉に、皆考えていた。

金「…せやなぁ…
監督たちとお話せんと難しいかもしれへんし…」
乾「不幸か幸いか…それぞれの学校のブレーンのような存在がこうやって集まれている。
昼休みまでに俺と蓮二でデータを集めていってみよう。」

皆それに同意し、練習にまた入った。

このんも、なにか出きるかもしれないとマネージャー業をこなしながら考えることにした。
しないで後悔したくないと考えたから…

このんはドリンクボトルやタオルを回収しに向かった。
テントには乱雑に置かれたタオルに空のボトル。

昨日までの彼らなら有り得ないことだ。

「…桃百合さんが…置いた、かのーせーも…ありそー…」

このんも薄々彼女のマネージャーとしての資格を疑問に思っていた。氷帝学園女子テニス部のマネージャーならマネージャー業を1から10までこなしていた。
それをみていたからかもしれないが…


「…全国いくテニス部…厳しいって璃乃ぶちょー言った…。
とくに…『みーはー』?にきびしーって…
だから、マネージャー業をちゃんとやる…マネージャーしか…マネージャーにしないって……
…桃百合さんやってない。」

お喋りばかりして、部員たちの妨げになっている。
だが、部長たちは彼女に構っているだけで注意をしない…
ふと、何かに気付いた

「…?あれ……」






昼休みに入り、昼食を持って7人は会議室にいた。

榊「何か、この異変の原因について気付いたことはあったか…?」

皆が食べ終えれば榊監督はそう切り出した。
柳と乾がノートを開く。最初に口を開いたのは柳だ。

柳「…はっきり言って、今日まで我々含め部員たちは彼女を嫌っていました…
仕事を全くしない、練習を邪魔する、同じマネージャーである暁来に異常なまでの暴言をはく…
マネージャーの素質を疑ってます。
なのに…今日になって我々以外の者は180度態度が変わっている……
練習にも…支障があります。」
乾「恐らく、俺と蓮二もノートを見なければあのような状態になってたでしょうね…
他は…どういう理由かまだ曖昧ですが…」

彼らのノートには桃百合のデータが一応記入されている。
彼女の性格を理解しなければ、ベタベタと付きまとってくるからだ。

竜「ふぅ…あの子は一体何がしたいのかねぇ…
アイツらも…一体どうしたのやら…」

竜崎先生もわけがわからないといった表情を浮かべる。
このんは少し黙っていたが、小さく手を上げた。

竜「ん?何かあったかい?」

竜崎先生の言葉に頷く。

「あい…。…データのノート…見なかったら、今しょくどーにみんなみたいに…なってたかも、ですよね…?」
柳「あぁ…。」
「それって…、さいみんとか、幸村ぶちょーのできるくろまじゅつ?…といっしょ、じゃないです…?
目…、ほとんどの人…うつろだった、です…」

先ほど気付いたことについてを聞いてみた。
すると、無口だった樺地も何かを思い出し、口にする。

樺「…跡部さん…、時々…頭を抱えて、ました…。
他の方々も…どこか…ぼんやりしたり、してました…。その行動は…桃百合さんの…前にいない…時です。」
滝「……体調不良にしてはおかしいよね…」

滝は考え込むように顎に指を当ててテーブルをジッと見ていた。
データ組もノートをパラパラと捲っている。

金「…ところで榊監督ぅ、あの子のこと、他になにか情報ないかしら…?
例えば、少し不可解なところとか」

メガネをかけ直し、いつものふざけた表情ではなく、真剣な表情で尋ねる金色。
榊は封筒からいくつかの資料を取り出した。

ほとんど、桃百合のことが書かれている。


榊「彼女のほとんどの資料を集めたが…
たったこれだけしかなかった…」
小「10枚弱…ってところやな…」
柳「…普通なら40枚ぐらいは必要だろうな…
特に、孤児院にいたならいろいろと必要になるはずだ…。」

竜崎先生が一枚とって読んでいた。
柳と乾も、榊監督から許可を得て見る。

孤児院にいた為か、母親の姓のためかわからないが榊ではなく桃百合を名乗っており、氷帝学園中等部の編入試験はオール満点。
編入するまえにいた中学校はとある御嬢様学園…。

榊「私は明日、彼女のいた孤児院と編入する前にいた学園へ話を聞きに行って来る。
仕事でこれなかった四天宝寺の監督が明日来てくれることになった。」

その言葉に、四天宝寺の二人が安堵したような表情を見せた。

小「オサムちゃんが来てくれるんか!」
金「後輩たちの面倒見とる言いよったから、来んかと思ってたわぁ…」
「おさむちゃん…?」

このんはキョトンとした表情で二人の顔を見つめた。
金色が微笑んで頷いた。

金「ウチらの監督でなかなかおもろい人やでぇ!
ちょっと変わったお人やけど…」

そう言われ、このんはオサムちゃんに会うのが少し楽しみになった。
いい人だといいな…とぼんやり思った。

このんの小さな笑みに和やかな雰囲気になった時、ノックをする音が聞こえた。

皆、表情が強張った。

「竜崎先生ー、榊監督、他のみんないますよね?
入っていいッスか?」

聞こえてきたのは生意気そうなアルトボイス…。
榊監督が許可すれば声の主は姿を見せた。

乾「…越前か…」

青春学園中等部テニス部のルーキー、越前リョーマだった。
彼の表情は真剣で…どういう困惑を交えたものだ。

越「…話があるんスけど…いいッスか?」
竜「…あぁ…構わないよ。こっちに来て座りな」

竜崎先生に言われ、このんの隣に座った。
このんは不安そうに彼を見上げれば、越前は視線に気づいて自分の被っている帽子を隣の小さな少女に被せた。

越「…預かってて」

このんに聞こえるぐらいの声で言い、監督たちに向き直った。

榊「それで、話とは…?」
越「……今の状態のことッス…。
…俺、ついさっきまで…あの人しか見えてなかった…
でも、あの人から離れてみて、昨日まであの人を嫌っていたこと思い出したんスよ。」

自分が桃百合に好意を寄せていたことに苛立っているのか僅かに眉を寄せていた。

越「テニスのことを忘れるぐらい、あの人に夢中になるとか…
自分で言うのも嫌ッスけど…あの人を好いていた時に、違和感があったんス。多分、乾先輩たちの様子を見てからだと思うんッスよね…」
乾「…それで少しずつ呪縛のようなものから抜けれた…ということか?」
越「ッス…。
で、はっきり自我が持てるようになったのは、さっきあの人が暁来のあり得ない悪口を言った時ッス…。」

柳と乾はノートに走らしていたペンを止め、越前を見た。
このんもキョトンとして見上げる。

「…わるぐち…?」
越「…暁来があの人をイジメてるってさ…
その言葉も変だけど…おかしいんスよ…。何人かが、暁来を忘れてる…
誰だそれって……」

空気が固まった気がした。
皆の表情が驚愕に満ちている。

滝「何だよ…それ…
このんちゃんのこと、みんな可愛がってたのに…
桃百合が仕事しない分、マネージャーとして沢山働いてたこのんちゃんを忘れるなんて…何だよそれッ…!!」

沈黙を破ったのは滝だった。
妹のように可愛がっている為か、僅かに怒りを露わにしていた。
樺地が宥めたことで落ち着いたが、彼はまさか…と真偽を確かめるように尋ねる。

滝「まさかそれ……日吉も…?」

ぴくっとこのんは肩を揺らした。
カタカタと小さく震えている。

越前は…苦虫を噛んだように顔を歪めながらも……頷いた。

その瞬間、このんの目から涙がこぼれ落ちた。
すぐに顔を俯かせたが、皆にはハッキリ見えていた。

金「暁来ちゃん…」

小さく嗚咽を漏らしながらも押さえ込むように泣く姿は、痛々しかった。
金色や竜崎先生が優しく背中を撫でたり、落ち着くように軽く叩いた。
慰めの言葉は、逆にこのんを傷付けるだけだからだ。

しばらくして、落ち着いたのかこのんは少し腫れた目元を冷たいお絞りで冷やしていた。

「ごめ…なさい……ひっく…」
柳「泣いても仕方ないことだ。
暁来には酷なことだったのだからな…」

ぽんぽんと優しく頭を撫で、言い聞かせる。
このんは目を冷やしながら小さく頷いた。

越「…日吉さんが一番呪縛みたいなの…強いかもしれない…
あの人が一番付きまとってたのは日吉さんだったし」

本心ではないと、不器用ながらも伝えていた。
このんはお絞りと帽子のツバの間から越前を見た。
不安に満ちた目で

越「…あの人が悪口を撒いたから、何か起きそうよね…。」
乾「その悪口を聞いて困惑する者が出る確率78.1%」
柳「その中から直に呪縛らしいものから解ける者が現れる確率86.0%」

データマン二人がノートや越前の話から確率を叩き出す。
乾・柳「「解けた者が桃百合の味方になる確率……0%」」

フッと笑いながら同時に2人は言う。
このんは小首を傾げる。
何故そのデータを出したのかよくわからないからだ。

小「つまり、俺らやソイツらは暁来の味方っちゅーことや。安心しぃ」
滝「日吉も、きっと元に戻るよ。
今はこんなんだけど、皆なんだかんだいって、このんちゃんのこと好きだしね
俺も」

にっこりと笑う滝に、ぱちくりと瞬きをしていたが、へにょっと笑った。

まだ不安は除けないが、このんはやっと安心した。

越前を加えた8人が午後の練習に向かうまであと4分

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