おかしいの…
side?
欲深い娘はギラついた目で、甘ったるい声でワラう。
?「テニス部レギュラーの王子様たちがみーぃんな姫華のことを愛するようにしてッ!あんなチビ女なんか目に入らないくらいに夢中になるようにっ!!」
娘は愚かで実に愉快で不愉快だ。
いいだろう…夢のような現実に溺れさせてやるのも
まぁ、我の忠告をまた聞こうとしなかったことは娘の過ちだ。
あとは好きにやり、好きに堕ちればいいさ……
本物の神はあやつを既に見放した。どう堕ちるか見させてもらおう…
愉快で不愉快な戯曲の始まりだ…
このんはパチリと目を開けた。
外は薄暗いが稽古をする彼女にとってはちょうどいい。
胴着に着替えひよこリュックを背負って、パタパタと昨日稽古した場所に歩いて向かった。
いつもなら先に日吉が待って小言を言われていた。
しかし、今日は彼の姿がなかった。
「?…ひよしくん…どうしたんだろ…?」
寝坊などは有り得ない。
そのことを、幼なじみであり弟子である彼女にはわかっていた。
滅多にないが、体調が悪いなら朝早くに電話してくる。
だからこそ、おかしいと感じた。
「…もう少し…待ってみよ…」
キュッとひよこリュックを抱きしめて師匠を待った。
5分経っても、10分経っても、1時間経っても日吉は現れなかった。
薄暗かった空はもう朝日が合宿所を照らしていた。
「…、くしゅッ…
からだ…冷えてきた、かも……
…ひよしくん…どーしたんだろ……?」
黒い折りたたみ式のケータイをパカッと開けた。
メールも、着信もない。
このんはカチカチとメールを打ってみた。
――――――――――――――
To.わかしくん
――――――――――――――
件名 ?
――――――――――――――
わかしくん、今日は稽古ないのかな?
お寝坊です(°∩°)?
――――――――――――――
しばらく待つも、返事は返ってこなかった。
朝食ギリギリまで軽い自主トレをしながら待ってみたが結局日吉はこなかった。
仕方なく、##name_1#は部屋に戻ることをメールで打ち戻った。
密かな不安を感じながら…
部屋に帰ってシャワーを浴びたこのんが食堂で見たのは、昨日までのことが嘘のような光景だった。
皆が皆、桃百合に自分から話しかけていた。
それだけではない。
一部の者は彼女に抱きついたりしていた。
「……」
このんは目を丸くしていた。
あのベタベタされるのが嫌いな日吉も、その中に混ざっている。
摩訶不思議な光景過ぎた。
「…仲良く、なったのかな…?
でも…へん」
首を傾げながらも朝食を取りに向かった。
桃百合「姫華〜、オムレツ食べたぁい」
謙「俺が取ってきてやるで!」
日「他に何か食べたいものはありませんか?姫華先輩」
桃百合「ホントぉ?嬉しぃ〜vV」
切「姫華先輩ほんっと可愛いッスね!」
丸「当たり前だろぃ!姫華は美人で優しくてそこらへんの女子と違うんだからな」
「……」
皆の様子を見ながらもぐもぐとサンドイッチを食べていた。
ふと、このんは彼らと少し離れた場所で数人見ている者を見つけた。
このんは朝食を持って彼らに近づいてみた。
「こはるさん…、こいしかわ先輩…、かばじ先輩…、滝さん…いぬい先輩…、やなぎ先輩…」
金「あら……、暁来ちゃんやないの…」
彼にいつもの余裕な笑顔はなかった。
他の4人も、どこか混乱したような表情だ。
柳「暁来か…一緒に食べるか?」
「…あい…。」
小「暁来も、あいつらの異変に気付いたんやな…」
5人の近くに座り、小石川の問いに小さく頷いた。
滝は溜め息混じりに呟いた。
滝「明らかにおかしいよね…
みんな昨日はあんなに毛嫌いしていたっていうのに…」
7人共、桃百合を囲む彼らに目をやる。
楽しげに話し、朝食を食べている。食べるペースは明らかに遅い。
あと10分で朝食終了する。だがあのペースでは恐らく食べ終わらないだろう。
柳「…暁来、今日は稽古をしたのか?」
「……今日、ひよしくん…こなかった、です…。」
何故彼が来なかったのか、このんには理解しがたかった。
それを感じとった金色が頭を撫でた。
このんは無言でサンドイッチをかじった。
いつもは美味しい生ハムサンドイッチは、味気がなかった。
乾「いろいろと考えることがあるな…
昼休みに時間を見つけ、話し合おう。」
皆、無言で頷き食事を再開した。
朝食を終えたこのんは部屋で準備をしてから小走りで小屋に向かった。
日吉たちの異変も気になるが、マネージャーの仕事が最優先だ。
「今日は、雪ふらないっと…
日が出てたら…ひなたで干そ…」
天気と気温をチェックしておき、ドリンクを作り始めた。
タオルは昨日干して乾かしておいたものがあるから大丈夫だろう。
10分後に柳たちが来た。
他の部員はまだ来なかった。
樺「…後、10分で…練習が、始まります……」
滝「まったく…みんなどうしたんだろね…
今日相手してくれるかい?樺地」
樺「…ウス…」
柳「では、貞治。ラリーの相手を頼む。」
乾「蓮二がそう言う確率は94.7%だった。
久々にやろうか…」
小「小春、よろしく頼むわ」
金「こっちからもよろしく頼むわぁ…健さん」
彼らが練習についてをしばらく話していれば5分過ぎて桃百合たちは来た。
柳「社長出勤とは…、今までのお前たちからしたら有り得ないことだな…
精市、弦一郎。」
幸「あぁ…すまないね。姫華を待っていたら時間がかかってしまった」
どこにも、いつもの笑顔だが、違和感があった。
幸村が遅刻をどんな理由であれ許す筈がない。例え、自分自身に対しても…
それと、彼は桃百合を酷く嫌っており、彼女の名前を呼ばなかった筈だ。
このような変化に、柳は眉を顰めた。
柳「遅刻すればいつもは弦一郎の鉄拳がはいるのだが?どういう心境だ」
真「今回は俺たちの失態だ。鉄拳する暇があるなら練習を行う。」
柳「…罰則に厳しいお前がそのような言葉を言うとはな…」
皮肉混じりに言い、柳はその場を離れ、乾のもとに向かった。
いつもと違い冷たい柳に立海メンバーはどこか困惑気味だったが、桃百合が近づけば彼のことなど忘れたかのように彼女のもとに集まった。
乾「…蓮二、大丈夫か…?」
柳「貞治…、情けないところを見せたな。
今は練習に集中するとしよう」
乾「…青学も似たようなものだ。共に練習に励もうか」
乾は柳の肩を叩き、励ますように笑う。そのおかげか柳の気は落ち着いたようだ。
このんはその様子を窓からみていた。
昨日までの、楽しげな雰囲気はなく、このんの表情は曇る。
昨日のピリピリした空間もあまりいいものではなかったが、練習に集中する彼らは、このんには楽しそうに見ていえた。
輝いて見えたのだ。
今の彼らにそれはなかった。
「…、美玲さんに…あとで電話、しよ…」
ポツリと呟き、ドリンクとタオルをカートに乗せて小屋を出た。
柳たちがランニングを終えるまであと3分
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