どうしよう…
部活が再開され、皆がコートに向かっていた。
廊下を歩いている時、桃百合は部員たちに馴れ馴れしく近寄ってベタベタと触っている。
今は丸井や向日が標的となっていた。
桃百合「ねぇ〜ブンちゃん、がっくん
姫華が応援に行ってあげるからね!!」
丸「応援より仕事しろよ」
顔を引き吊らせながら非難の目を向ける丸井。
このんは日吉の後ろで越前と話しをしている。
幸村や一氏and金色、財前も二人の近くにいた。
財「あ、白石部長が絡まれた」
幸「アハハ、ご愁傷様★」
桃百合に白石が捕まったのに気づいて財前が呟く。
幸村がイイ笑顔で笑っていたのに日吉は白石に同情した。
越「へぇ、英語苦手なんだ?」
「すきだけど、苦手…
スペルすぐ間違えるから…」
越「なんなら、教えてあげようか?ファンタ一本奢ってもらうけど。」
「…Give and take?」
一「発音良過ぎやろ!つかなんやこの空気!!」
のんびりと会話していた二人に一氏が突っ込む。
まぁまぁ、と金色に宥められたが。
「…KY、ひとうじ先輩。」
一「だれがKYや!死なすどッ!?」
睨みつけるように怒鳴ればこのんがどーどーと両掌を向ける。
「…くーき(K)よみましょー(Y)です…」
財「プッ…」
一「あまり変わらんわッ!!
つか財前今笑いどころちゃうわッ!!!」
幸「ナイス、暁来さん」
ギャーギャーやっていると桃百合が幸村たちが後ろにいることに気づいたのかこのんを突き飛ばして後ろにいたメンバーに寄る。
突き飛ばされたこのんは宍戸に保護されたが。
宍「大丈夫か?」
「あい。ししど先輩助かったのです。」
このんはチラッと先ほどいた場所に目を向ける。
自分がいた場所は桃百合が割り込み、越前や日吉たちにベタベタとくっついていた。
あきらかに彼らは顔をしかめている。
「…榊監督に全然似てない…」
少しでも血が繋がっているなら、自分や氷帝のメンバーが尊敬する榊監督に似てくる筈なのに…とぼんやり考えていた。
忍「嬢ちゃんもそう思うん?」
「おっしー先輩…。
あい…」
同じ思いを抱いていた忍足が聞いてきたので頷いた。
「…昼は雪降らないらしい、です…」
忍「あ、そうなん?」
宍「でも寒ぃから厚着してろよ。」
「あい!」
ニヘッと笑って答えていると、冷たく鋭い視線を感じた。
チラッと目を桃百合に向けらればこちらを睨みつけていた。
それは憎悪のこもった視線で、思わず顔をしかめた。
前に切原や一氏が向けてきた『拒絶』の視線は辛く悲しくて怯えてしまうが、『憎悪』は初めてだった為どう反応すればいいかわからなかった。
桃百合は謙也に絡みに行ったのですぐ視線は消えた。
このんは、なんとも言えない不安をピンク髪の少女に感じていた。
コートに着けば榊監督が集合をかける。
榊「まずは20分間のラリーをそれぞれの学校別でやってもらう。
その後、くじ引きで相手を決めてから練習試合する。」
竜「練習試合だからって気を抜くんじゃないよ。
あぁ、マネージャー2人にはラリーの間練習試合の準備をしてもらう。いいね?」
「わかりま「はぁーい♪」した……あい」
言葉を遮られ少しシュンとなっていた。
が、仕方ないと猫耳フードをしっかりかぶった。
それぞれがラリーを始めればこのんと桃百合は小屋に向かった。
中に入り、このんがドリンクを作り始めた時、桃百合はソファに座って携帯を弄り始めた。
「………桃百合さん…、仕事は…?」
顔は向けずしばらくシャカシャカとドリンクボトルを振りながら尋ねる。
桃百合「はぁ?姫華がそんな地味な作業なんでやらなきゃいけないのよ。
姫華はみんなにドリンクやタオルを配ったり、応援するのが仕事なのっ!」
「……応援は…仕事じゃない、です……
ッ…!!」
シャカシャカと振り、次のボトルのドリンクを作ろうとした時、いきなり髪を引っ張られた。
手元にあるボトルを落としそうになるが、なんとか握りしめる。
桃百合「姫華に口答えしないでよ、モブのくせに!」
「ッ…も…ぶ?」
桃百合「だいたい、モブがなんで姫華の王子様たちと気安く話してるの?
馴れ馴れしいって思われてるのがわからないの?
あー!もしかして、アンタ逆ハー狙いなの?だったらすぐにみんなに嫌われるのよ!!真の逆ハー主は可愛くて優秀で神様に愛されてる姫華なんだから!!
アンタは使い捨ての駒でしかないのよ!
せいぜい足掻きなさい!きゃはははっ♪」
このんを床に叩きつけ、いくつか作られたドリンクとあらかじめこのんが畳んでいたタオルをカートに乗せて姫華は小屋を出て行った。
叩きつけられた時受け身を取っていた為、痛みはなかったが、このんは困惑していた。
「…もぶ…?ぎゃくはー…?こま…?
…なに、それって…」
桃百合のマシンガントークにある不可解な単語に聞き覚えは全くなかった。
あの少女が一体なにを言いたいのかわからない。
ふと、通信機独特のノイズの音が聞こえた。
白『暁来さん、聞こえるかいな?
ラリーしとったら桃百合さんが来たんやけど…』
「…あい、聞こえるです…。
桃百合さん…四天ほーじ、いるです…?」
通信機を手にとる。
白石の返事はYES。
桃百合は今財前や謙也にベタベタくっついているらしい。
白『暁来さん、大丈夫かいな…?ドリンクもらったの飲んだけど、あれキミが作ったんやろ?
なのに桃百合さん…自分が作った言い張っとるんや……ぅあッ』
『くらぁ〜!誰と話してるのぉ?』
白『スマン、また後で連絡するわ!』
通信が切れ、このんは上半身を起こし、正座した状態で通信機を見ていた。
「…どうしよ…、わたしが桃百合さん出て行くの…止めなかったから…」
ひよこリュックについているひよこ型時計を見ればもう練習試合が始まる。
このんは立ち上がって急いで残りのドリンクを完成させた。
カートがないためひよこリュックに幾つか入れる。それから倉庫に向かう。
くじ引きをしている間にまだいろいろ準備がいる。
桃百合に言われた言葉を考える暇はない。
跡部から通信が来るまであと5秒…
(おい、桃百合は?)
(…こっち、いないです…)
(チッ…やはりな。そっちの用が終わったら6番コートにこい)
(…あい)
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