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ピンクの女の子

午前の練習が終わればほとんどの者はさっさと合宿所の食堂へ向かっていた。

このんは午後の練習試合の為の準備をしていた。
タオルを畳んで山にして置いておき、ガスの元栓を確認し、ドリンクボトルを洗浄機に入れておく。

必要最低限の準備が済めば待っていた日吉と一緒に皆より一足遅く合宿所に向かった。

「ひよしくん、ひよしくん、
おつかれさま」
日「お前もな
つか、それ気に入ったのかよ…」

それとは頭に被ったネコ耳フードのことだった。
あれからずっと被ったままだったのだ。

「にゃーにゃー、ネコさんなの」

猫のポーズをやれば呆れ顔になった。

日「…気に入ったんだな…
猫ならキャットフードか魚食ってろ」
「わたしは、生ハム主食なのー」
日「猫は生ハム食わねーよ。
生ハムを主食にするな」

ムギュ

カプッ

ヒョイッ

「よけたー」
日「普通避ける
頬抓られて人の手噛もうとするのやめろ」
「つねるから、だもん」

むすーとしながら抓られた頬をさする。
痛かったみたいだ

日「あほこのん」
「わかしくんはキノコの子ー」
日「締めるぞ」
「くび?」
日「……」結局頭を叩かれたこのん。

「いーたーいー
…あれ?」

このんが頭を押さえて不機嫌になったとき、何かが聞こえた。
ピタッと止まったため日吉が訝しげにこのんを見た。

日「どうした?」
「……女の子のこえ…
と跡部ぶちょーのこえする…」

耳をすまし、止まっていた足を動かす。
日吉も耳をすましてみた。

日「…食堂からだろうな
言い争ってないか…?」

眉をひそめ、小さく溜め息をついた。
面倒なことになりそうだと思ったからだった。

長い廊下をやっと歩ききり、食堂の扉の近くに近づくにつれ声ははっきりとしていた。

?「〜だから、姫華もマネージャーさせて!おねがい景吾ぉVv」
跡「…さっきから断ると言っている。」
?「なんで?姫華仕事ちゃんとできるよぉ!
みんなミーハーばっかり見てるから信じれないの?
かわいそぉ…
大丈夫!姫華はちゃあんとみんなのサポートするし、ちゃんとみんなをみてあげる!
それに、姫華はテニスできるの♪
ね、いいでしょぉ精市ぃ」
幸「勝手に名前呼ばないでくれないかな?
てか教えた覚えないんだけど(黒笑)」

ドアの前でこのんと日吉は固まっていた。
典型的なぶりっ子は初めてだからだ。

「…しんえーたいのたいちょーさんに電話してくるね…」
日「…あぁ…、
…今入りたくないな…」
「どんな人だろ…?」

このんはドアを音をたてないよう少し開けて覗き込んだ。
そこには、面倒くさいといった表情の仁王や跡部、それからピンクのツインテールの少女がいた。
美少女ではあるが、化粧がされていて、手にはネイルアート、ドアから離れているにもかかわらず香水の匂いがした。
一通りみてからドアを閉めた。

日「どんな奴だった?」
「…ピンクのツインテールで、化粧と香水とネイルアートしてる女の子だった。
かわいいけど、なんかへん…」

うーん…と小さく首を傾げた。
このんはふと思い出した。

「あ…そーいえば、みんな練習してたとき、合宿所の前にいた子だ…」

あのピンクのツインテールは間違いだろう。

日「…それをなんで言わなかった?」
「わすれてた」
日「阿呆」

ケロッとして答えれば頭を叩かれた。
それから溜め息をつかれた。
日「電話するならさっさと行け。
…待っててやる」
「あい!」

ひよこリュックから黒いケータイを取り出し、走っていった。
日吉はその間会話の様子を伺っていた。

?「姫華は榊叔父様の姪なの!だから資料で知ったのVv」
忍「榊監督の?ほんまかいな…」
?「ホントだもん!
それよりぃ、みんなご飯食べるんだよね?
姫華も一緒に食べたいなぁ…だめ?」

日吉は入りたくないな…と思った。
合宿二日目にしてこうなるとは榊監督たちにはきいていない。
初日に臨時マネージャーと合流するとは聞いていた。が、それはこのんのことだ。

日「(面倒なことになった…
もし本当に榊監督の姪だったら厄介だな)」

恐らく残りの合宿でずっといるかもしれない。
とりあえずは様子見だろうが…

パタパタと足音が聞こえた為振り向いた。

日「どうだった?」
「美玲さんいろいろ調べてみるって。
他に何かわかったら電話してって…」

美玲とは宇治宮 美玲という氷帝学園中等部三年の少女だ。
テニス部と深く関わっており、テニス部がよりよい環境でプレイできるように親衛隊を結束した隊長であった。

このんは一人っ子の彼女に妹のようにかわいがられている為こうして連絡できるのだ。

「中はいる?」

ケータイを片付けて尋ねる。

日「入らないと昼飯抜きになるからな…
万全な体勢でじゃないと跡部さんに下剋上できない。」
「げこくじょー」
日「下剋上だ」

日吉が扉を開けた。
このんも後ろについていく。
視線が皆こちらに向いた。
ピンク髪の少女の視線も自然と2人に向いた。

向「おせーぞ日吉に暁来!」
嘩「…お疲れ様…です…。」

嘩地の言葉にへりゃりと笑った。
ふと、嫌な視線を感じた。
このんは気付かれないよう視線を探った。

それは、ピンク髪の少女からだった。
憎悪のこもったねっとりとした視線にこのんは眉をひそめた。

?「あVv若ぃ!
はじめましてぇ!姫華は氷帝学園中等部3年に転入する桃百合 姫華って言うの!!よろしくね♪」

青い瞳で上目遣いをし自己紹介をしたピンク髪の少女桃百合。
日吉は明らかに嫌がった表情をした。

日「勝手に名前で呼ばないでください。」
桃百合「照れなくていいんだよぉv
姫華のことも名前で呼んでいいからね!」
日「謹んでお断りいたします」

完全にこのんのことは無視で日吉に話かけていたので、このんはさっさと自分の昼食を取りに行くことにした。

河「日吉のこと、いいのかい?」
「ひよしくんは、へーき…です。
無視するひとは無視…なのです。」

生ハムサラダやご飯などを取れば日吉の分も取りに回った。

難しい表情の榊が来てこの場をおさめるまであと30秒…

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あきゅろす。
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