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みにまむ、りっかいせーなの


ここは歴史ある文武両道を極める神奈川県立立海大学付属中学校。

そこの男子テニス部は全国大会二連覇を成し遂げる王者と呼ばれている。
中でも有名なのは、レギュラーメンバー。


『二年生エース』切原赤也

『四つの肺を持つ男』ジャッカル桑原

『ボレーのスペシャリスト』丸井ブン太

『コート上のペテン師』仁王雅治

『紳士(ジェントルマン)』柳生比呂士

『達人(マスター)』柳蓮二

『皇帝』真田弦一郎

そして、立海大男子テニス部部長
『神の子』幸村精市


彼らはテニスの腕も、ルックスも上なため、ファンクラブというものも存在する。

しかし、それはアイドルを囲むファンのように騒がしく、テニス部のメンバーには有り難くも迷惑な存在だった。

が、とある少女が入学したことによって改革され、ファンクラブは親衛隊となり、騒がしさはなく、親衛隊の隊員が正しくマネージャー業をこなしてくれるため今まで以上に過ごしやすい環境となった。

その少女は、中学校では有名だった。

少女の名前は『暁来 このん』

女子テニス部のレギュラーであり、『皇帝』真田弦一郎の剣道の弟子であり、


学校1小さなみにまむ少女であった。


伶「このんさぁん!
おはよう、今日も小さくて可愛いわぁーVv」

注意、この人は三年の宇治宮 伶美。れっきとした生徒会長であり、親衛隊総隊長だ。
立海大に相応しく文武両道で才色兼備、クールビューティーと名高くミス立海に選ばれた少女だ。
が、はむはむとイクラおむすびを朝ご飯に食べるみにまむ少女の前ではその影は全くといっていいほどない。


「…(もぐもぐゴクン)
おはよーございます、れーみ会長」
伶「今日は特製生ハムサラダを作ってきたの
はいっ」
「あ、ありがとー…です
れーみ会長のサラダだいすきです…」
伶「あぁ…もう可愛いわ…
このんさん、もしテニス部のレギュラーの男共に何かされたら私に言ってね?
いつでも制さ…コホン、叱ってあげるからね!」

このんはキョトンとしたが、なんとなく頷いた。

ホームルーム五分前のチャイムが鳴り、宇治宮は自分の教室へ帰っていった。
宇治宮の勢いに近付けなかったクラスメートたちがこのんに話しかける。
毎日がこんな感じである。

女「おはよー、このんちゃん」
女「会長相変わらずだねー」
男「でもいいんじゃね?」
男「会長の意外な一面見れるし、なんか和むもんな!」
女「あ、わかるわかる!」

ワイワイ騒いでいれば先生が入ってきた。
皆が席に戻る。今日1日は始まったばかりだ…



昼休みになり、このんは伶美特製生ハムサラダと購買で買った生ハムサンドを持って屋上庭園に向かっていた。

丸「おっす!暁来」

明るい赤髪の目立つ三年丸井ブン太がこのんの肩を叩いた。
彼の隣にはスキンヘッドの苦笑を浮かべた同じく三年ジャッカル桑原がパンを持っている。

桑「よ、暁来。
今週も生ハム尽くしか?」
「こんにちは…、ブン先輩にじゃっこー先輩。」

このんはテニス部と仲がいい…
と言っても、彼女が彼らと仲良くなったのはとある合同合宿に参加した時からだ。

丸「お!生徒会長お手製サラダか!!」
「ちょっとおーめだからおすそ分け、するです…。」
丸「マジ!?サンキュー!」
桑「悪いな、暁来」

丸井の態度が図々しいと感じたのかジャッカルはこのんに申し訳なさそうに謝った。
が、このんは小首を傾げる。

「わたし、好きでブン先輩に…おすそ分け、です。
きっと、れーみ会長もみんなで食べたら、よろこぶです…」

へんにゃりと笑えばジャッカルもつられて笑った。
三人でのんびり話していればやがて屋上庭園についた。

ドアを開ければ、先に反応したのは天然パーマの二年切原赤也だった。

切「遅いッスよぉ!
って、このん!!」
丸井の後ろになっていた為切原には見えなかったのか、このんが見えた瞬間驚いたような表情をした。

切「今日は本村と中咲と飯を食うんじゃなかったのか?」
「けんぞーくんは…大会に行ってて、こっちゃんは…おなか痛いから、保健室です…」

仲のいい友人2人がいない為必然的にここにきたのだった。
伶美は生徒会の仕事で忙しいらしい。

それを言われ、見守っていた青髪の三年幸村精市が微笑みかけた。

幸「このんちゃんとは久しぶりに昼食を食べれるね…。おいで」

ぽんぽん、と自分の横を叩く。
このんはてこてこと歩み寄り、そこに正座で座った。

「おひさ、です…。ゆっき先輩」
幸「久しぶりだね。全国大会はどうだった?」
「…たのしかったです」
仁「小学生のインタビューみたいぜよ」

思わず仁王がツッコミをいれた。

「んぅ?」
仁「幸村は楽しかったか?という意味でも聞いたかもしれんが、大会の結果とか聞いてるナリ」
「…………ああっ!」

ぽんっと手のひらに拳を乗せた。

柳「で、改めてどうだった?」

柳が幸村の代わりに尋ねる。
このんは思い出しながら話した。

「えっとね、2位だったの。
すごいプレーをする人と決勝であたって…あといっぽで負けた…です。
でも、自分の悪いとこ…ちゃんとわかって、来年の全国大会までに強くなるです…」

メダルがあるのか弁当と一緒に持って来ていた手提げから箱に収まっているメダルを幸村に渡した。

幸「銀かぁ…
でも、頑張ったね。一年生でしかも個人なら大変だっただろうに…」
切「来年は金を取れよ!」
「色は銀がすき…です。」
柳「…そういう問題か?
まぁ…今年の女子の全国大会はなかなかの強豪揃いと聞いたな。
男子の全国大会並みに強くなったと」

仁「ウチの女子テニス部も今までの歴代女子テニス部より強くなったらしいのぅ…」
幸「親衛隊ができたおかげかな…?
さて、そろそろ食べようか。
柳生と真田は明日の服装検査の話し合いでこれないらしいし」

幸村が話を程よいところで切り、皆昼食に入った。
青空の下、のんびりとした時間は心地よさを感じた。



放課後になり、このんは図書室にいた。
図書委員だからだ。
部活は今日は休みらしく、こういう日は施錠前まで本を読んでいる。

ふと、図書室のドアが開いた。
このんは顔を上げて入ってきた人を見た。

柳生「おや、暁来さん。
今日は貴女が当番なのですね」

茶髪で理知的な柳生比呂士だった。

頷きながら、利用者管理の為のファイルに書き込む。

「やぎゅー先輩は、部活おやすみです…?」
柳生「少し授業に必要な資料を探しに…
幸村君には許可を得て来たんですよ。」

柔らかい笑みを浮かべ、このんの質問に答えた。

「なるほど、です。
パソコンで探す…します?」
立海の本や資料は基本カウンターにあるパソコンに登録してある。
見やすいよう司書の先生が検索すればすぐ見つかるよう設定してくれている。

柳生「えぇ。
よろしいですか?」
「あい。
電源はいってるです。」

柳生は軽やかな指捌きでキーボードやマウスを動かし、資料を検索し始めた。
このんはその横で本の続きを読む。

しばらくすればパソコンから見つかったのか、柳生は本を記入されている棚の場所に向かった。

柳生「これですね…」

目的の資料を持ってカウンターに戻ってきた。
ちょうど読み終えたのかこのんは顔をあげた。

「かりるです?」
柳生「はい、お願いします。」

柳生から資料を受け取り、パソコンの柳生のページにそれを登録した。

「あい。
2週間以内に、返却お願いします、です。」

資料を返す。
柳生は受け取りながら、ふと少女の読んでいる小説に目を向けた。

柳生「『そして誰もいなくなった』…ですか…
アガサ・クリスティですね
貴女も読むのですか…」
「やぎゅー先輩も…?」
柳生「えぇ。愛読しております。
彼女の作品はなかなか興味深い推理小説が多いですから」
「やぎゅー先輩らしいです…
…SFの新しい本入った、ですよ」


ごそごそと近くにあった段ボールの中を漁り、本を取り出した。
柳生「こ、これは…
しかし、よろしいのですか…?」

柳生の知っている作品だったのか(逆光眼鏡でわかりにくいが)どこか目を輝かせている気がする。
このんはコクリと頷いた。

「今日、ちょっと本を読んだら新刊の棚…置くでした。
だから、だいじょーぶ…です」

れんじ先輩にも新しい本渡したです、とへにゃりと笑った。
柳生はそれを見、つられれて微笑んだ。
柳生はこのんを妹のように可愛がっているため、なんとなく微笑ましく感じるのだった。

柳生「では、お借りいたします。」
「あい!
かんそー、読み終わったら教えてくださいです。」
柳生「えぇ、もちろんですよ。
暁来さんも、それを教えてくださいね」
「いえっさぁ!」

柳生にSF小説を渡しながら片手で敬礼をする。
今日はそこで別れた。





このんは図書の仕事を終えれば、さっさと帰った。

帰るのは自分の家でなく、幼なじみの家だ。
両親はこのんが幼い頃から海外出張に行っているため、ほとんど幼なじみの家は自分の家のようなものだった。


真「…ただいま帰りました」
部活を終えた幼なじみ真田弦一郎が帰ってきた。

このんはとてとてと廊下を歩き、玄関に向かった。

「げんいちろーくんおかえりー、です」
真「あぁ、ただいま。
今日は女子テニス部は休みだったな」
「あい。今からおけーこできます…です?」
真「構わん。
道場で待っている」

真田は素早い動作で道場に向かった。
このんは自分の部屋に戻って袴に着替えた。
ちなみに服装は千歳緑(薄く白がかった緑)の着物に黒袴だ。
真田の母が特別に用意してくれたのだった。

着替え終えれば真剣を持って道場に居るであろう真田のもとへ向かう。


真「このん、精神統一しろ。
そうだ…」

真田が見ている中、このんは目を閉じ、静かに日本刀を構えた。

次の瞬間、刀身を煌めかせ、立っている数本の竹を斬り落とした。

斬られた竹が床に散らばる。

真「なかなか素早くなったな…
だが、威力がまだ足りん。筋トレを欠かすなよ」
「…あい。
…ししょーみたいに綺麗に斬れない…」

自分が斬った竹の断面をじっと見つめる。近くにある真田が斬り落とした竹と比べると、このんが斬った竹は少し歪だった。
顔には出さないが、少し落胆したような少女に、真田は優しく頭を撫でてやった。

真「なに、前に比べ綺麗に斬れている。
要は一の積み重ねが重要だ。俺はお前より先に居合いを始めたからお前より上手いだけだ。」

このんは竹を見ていたが、真田に視線を戻した。

「…ならがんばる」
真「あぁ。
っと、そろそろ夕飯の時間か…
今日の稽古はここで終わりだ」
「あい。ありがとーございました…」

ぺこりと綺麗なお辞儀をし、このんは竹を片付け、掃除をしてから道場を出て行った。

母「ふふ…このんさんはほんと煮物が好きねぇ…」
「(もきゅもきゅゴクン)真田おかーさんの煮物…おいしーです」

こんにゃくをもぐもぐ食べ、飲み込んでから真田の母にへにゃりと笑った。
真田の母もつられるように微笑む

母「嬉しいわ。
たくさん食べなさいね」
「あい!」
真「このん、牛肉も食べろ」
「や」
真「…相変わらず即答か。」

全く肉炒めを食べないこのんに肉をススメるも、即答で却下した。
このんは生ハムは好きだが、牛肉が嫌いであった。
それは幼なじみである真田には理解できているが、好き嫌いがあってはならん、ということでススメたのだった。

本人曰わく

「とらうまー」

らしい。
何がどうなって牛肉に対してトラウマなのか真田もまだ疑問に持っていたりする。

夕飯が済めば、このんは真田の甥の佐助とオセロをしていた。

佐「ここいただき」
「…はしっこゲット」
佐「うわっ…端全部とられた…
なら、ここ」
「…あ、とられた」
佐「へへっ…
って、置けないじゃん。」

次置けないとわかれば佐助はパスをする。
このんが最後のコマを置いて圧勝した。

「かち」
佐「このん姉強すぎ
前なんかマス埋める前に真っ黒にされたし」

むすーとしながら言う佐助に、キョトンとする。

「あれ…コツつかんだら簡単…」

コマを全部片付け、一から置いていく。
佐助はそれを覗き込んだ。
先ほどの二人の途中までを再現しているようだ。

「ここ…
置かれたらだいたいは…コッチおくの
だから、ふいをついて…」
佐「あ、なんだ
そういう感謝なんだ…
全然わかんなかった」
「ね」

もう一度二人で対戦する。
先ほどは四分の三は黒だったが、コツをつかんだおかげか佐助の白が半分近くになっていた。

このんはへにゃりと笑った。

「できたね」
佐「うん…!
次は勝つからな!」
真「対戦は終えたか…?」

真田が居間に入ってきた。
髪が濡れているところからして、風呂上がりなのだろう。

佐「濡れたままでこないでよおじさん」
真「ドライヤーなどかけずとも乾く!
それと、おじさんと呼ぶな佐助君」
佐「はいはい、弦一郎」

めんどくさそうに、しかも確信犯なのかさらりと呼び捨てをする佐助に真田がキレた。
相変わらずの二人だ。

真「年上を敬わんかっ!!呼び捨てなど言語道断!!」
佐「いいでしょ別に」
真「いい訳なかろうがっ…!!」

真田と佐助の言い争いが(主に真田が)ヒートアップしないうちにこのんが話しかける。

「…げんいちろーくんげんいちろーくん、次のお風呂つっかえるから…さすけくんいれてもいい?」

わたし後で大丈夫だから、と笑う。
真田は渋々だが佐助に風呂に入るよう言う。

佐「ナイス、このん姉」

親指をグッと立て、佐助は風呂場に向かった。

真田は呆れたように畳に座った。

真「まったく…佐助君は生意気過ぎる…」
「…あかや先輩みたい、だよね…」
真「………違いない」

首にかけていたタオルで髪をしっかりと拭き始める。
このんはオセロを片付け、真田にお茶を出す。

「あい」
真「ああ、すまんな
…?このん、携帯が光っているぞ」

テーブルの上に置いてあった黒のこのんの携帯がランプを点滅させていた。
このんは基本電話以外をサイレントマナーにしている為メールだろう。

携帯を手に取り、パカリと開いた。

「…あかや先輩と、ゆっき先輩とひかる先輩からだ…
あ、こっちゃんとケンゾーくんも」
真「ひかる…とは四天宝寺の財前だったな。
まだ交流があったのか」
「あい。
趣味友達…なの
あかや先輩とゆっき先輩からは『明日もお弁当いっしょに食べよう』…らしいの」
真「今日は本村と中咲はいなかったのか?」
「試合とふくつーでいなかった…
明日お休みするのかぁ…」

カチカチとメールを全員に返した。
短い単語メールだが。
ちなみに絵文字はないが顔文字はちょっと入っていたりする。

「明日もごはんいっしょ…なの」
真「明日は服装検査がある。お前のことだから心配はないだろうが、立海生らしい服装で挑め」
「いえっさぁ!」

ピシッと敬礼し笑う。
真田も頬を緩めた。
佐助が風呂から上がれば、このんはのんびりと風呂場に向かった。




(これがわたしのりっかいでの毎日)
(あした天気になーれ)


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はい、長くなりましたorz
なかなか書くのが楽しかった…!
駄文ですが、読んでいただきありがとうございます…!!謝謝!

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