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東奔西走
2


「………おい、そこの寝穢い黒猫め!心配の言葉とかないのかっ?!」


痺れを切らした俺がそう無愛想に言ってやると、俺の腹の上で寝ていた奴は漸く顔を上げ俺を見て、



「………随分辛そうだったな。…またあの夢か?燈亜(トウア)」



知らんぷりしてたクセに平然とこう言った。







俺は神涙 燈亜(コウルイ トウア)、15歳。
黒目黒髪のどこにでも居る平凡な人間。



俺の腹の上で丸くなり睡眠を貪っていたのは、クロア。雑種の黒猫で雄。
綺麗な黒毛に透き通った銀色の瞳。近所の猫達の中じゃあ、クロアが一番の美男子だと思う!


そんなクロアは猫のクセに人間の言葉が喋れる。

初めはびっくりしたけど今では当たり前の様になっていて、俺の住んでいるトコは小さな田舎町だから近所にもあっという間に知れ渡り、今じゃクロアはちょっとした人気者だ。





「今年に入ってからもう三度目だぞ。あの夢見るの」


俺の腹から降りて、畳の上で伸びをしながらクロアが言う。


「年々……見る回数が増えてきてる気がする…」


ポツリと誰に言うでもなく呟きながら、夢の内容を思い出した。





いつからだろう?


いつからか見る様になった夢……。





突き刺す様にザンザンと降る雨の中、地面に横たわりピクリとも動かない人が居て。


俺はそれを宙に浮きながら、少し上から見つめている。



雨は酷く、靄がかかったようになっているせいで、地面に横たわっている人の顔は判らないんだけど、辛うじて男の人だと言う事は判っている。


その男の人は、必死に誰かに助けを求める。辛そうな……悲しそうな声で。

そして最後に俺の名前を呼んで、俺は目が覚める。
覚めるとさっきみたいに呼吸が乱れて、汗をビッチャリかいている。




初めてこの夢を見たのがいつかは覚えてないけど、最初はただの夢だと割り切り気にもしていなかった。

けど、だんだんとその夢を見る回数が増えていき、不思議に思うようになった。


と同時に……最近思う事がある。






あの夢の中の男の人は、



¨お父さん¨…、



なんじゃないかって。






俺の母親は神社の神主の娘で巫女をしていた。

俺の父親はイタリア人で神父だった。


その二人が出逢い恋に落た。
だがその恋は許されず、若い二人は駆落ちしてイギリスへ逃亡。そこで俺が生まれ、三人仲良く暮らしていた。



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あきゅろす。
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