東奔西走 19 「う、うちの部屋って?」 もしかしてこの人ん家に居候すれと? でも駅からここまで民家どころか建物一つ無かったし、学園の先は寮以外何もない。 寮を過ぎたらこの砂利道はその奥の森に続くだけ。 あれ?そもそもこの人はどこの学校の制服を着てるんだ…? 「うんうん!それがいい!君みたいな美味しそうな─じゃない!えっと、…可愛い子が来てくれるなら大歓迎だよ!!!」 「えっと?俺はどこに連れて行かれるんですか?」 ニコニコと俺を見て笑うその人に訊ねると、その人はきょとんとした。 ……可愛いってこの俺が?…なんと言う分かりやすいお世辞…。つーか男の俺に可愛いなんてお世辞要らないって!! 「どこって……ここですよ?」 まだきょとんとした不思議そうな顔で俺を見つめながら、その人が差した指の先には………、 学園っぽい建物。 「え?あれ?んー?」 落ち着け俺!!ここにはいつも冷静なクロアや、俺の保護者的役割を担うソウちゃんは居ないんだっ!!ゆっくり整理しよう。 この人が指差したのは洋風な感じの学園…っぽい建物。 それは奥の森を背に左側に建っていて、右側に建っているのが俺の通う、東皇学園高等部。 つまりこの人の指差す左側の建物はうちの学園じゃなくて……だからそれはつまり? 「西帝(セイテイ)学園高等部。僕はここの生徒なんだ」 頭がぐるぐるしている俺にその人は笑い掛ける。 「あれ?この学園ずっとここに建ってた?」 「……気付かなかったのかい?こんな狭い道の向かい側…」 まさかと、綺麗な赤い目を驚きで丸くして俺を見る。 …はい、全然。 ここに来た時俺はきっと、丁度自分が通う側の学園が先に目に入り、新しい校舎にわくわくと夢中だった。だから向かいになんてこれっっぽっちも目に入らなかった…。 でも確かに学園に入る門前で、ソウちゃんが向かい側を気にしていたな。流石ソウちゃん。周りを良く見てる。 「うちも東皇と同じ幼等部から高等部までのエスカレーター式男子校でね。何故か高等部校舎だけはお向かいさんなんだよ」 苦笑して教えてくれたその人は、俺の肩を抱いて歩き出す。 「校舎も寮もお向かい。しかも挟んでるのはこんな狭い道だ。ね?うちは全然構わないから、うちの寮においで?うちも満室だけど一つだけ空いてるんだ」 「え?でも…か、勝手にいいんですか?」 [*戻][進#] [戻る] |