東奔西走
18
……それにしても、寮に俺の名前が無いなんて何でだろ?
中等部から高等部へ上がる手続きの書類は、全部遥がやってくれたんだよな…。あの遥がミスする筈ないし……。
あ、今晩のご飯何かな?…あれ?寮ってご飯どうするんだろ?
うわー俺学園から届いた書類読むの面倒臭くて、全部ソウちゃんに頼んじゃったしー。入寮の荷造りも近所の魚屋さんのお福ばぁちゃんにやってもらったしー………。
「……?あれ?もしかして俺、一人じゃ何も出来ない奴なん─ギャアアアァァァッッッ!!!!!!」
校舎へと歩きながら考え事をして、なんかダメダメ人間な自分を垣間見た瞬間、茶色だか黒色だか判らない野球ボールより大きくふさふさした物体が、俺の顔面を直撃した。
「ぬぁっ?!ななな、何?!何が?!」
ぶつかった瞬間、驚いて顔を覆い、直ぐに周りを見回したが、もうその物体は姿を消していた。
「………えー?何だったんだ?驚き過ぎて段ボール落としちゃったし……」
よいしょっと、じいちゃんの口癖の掛け声を呟きながら、砂利道に落下した段ボールを持ち上げると、
「あれ?」
今まで居なかった筈なのに、俺が段ボールを持ち上げるため下を向いた一瞬の間に、俺の目の前に人が現れ立っていた。
さらさらとした綺麗な金髪に緋色の瞳をした、天義先輩に勝るとも劣らない程の超美形。
「……こんにちは」
その人はふっと微笑んで俺に声を掛けてきた。
おぉっ!!天義先輩より愛想バッツグン!王子様みたいだ!
着ている服も、……制服だ!白の学ラン!首元のホックは外していて、そこから覗くワイシャツは黒。
うちの制服とは対照的だ。
うちの制服は黒の学ランに白いワイシャツと、オーソドックスなモノ。
「こ、こんにちはっ!!!」
「大荷物ですね?お引っ越しですか?」
両肩に学生鞄とドラムバッグを掛け、その手に段ボールを抱えている俺を不思議そうな顔で見ている。
「あー、実はそこの寮に今日から入る筈だったんだけど、手続きのミスがあったみたいで…。しかも満室!俺の部屋なーし」
あはは、と笑うと他人事なのにその人は凄く深刻そうな顔をした。
「それは大変ですね」
「あ、いや別に─」
「そうだ!うちの部屋に来て下さい!!!」
そんなに深刻じゃないよ張本人の俺がこんなに気楽に笑っているんだからと、慌てて言おうとしたらその人はそう嬉しそうに叫んだ。
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