東奔西走
2
「俺とクロアが、トーアの兄弟になってやるよ」
「ホントっ!?」
横で寝てたクロアが欠伸をして不思議そうに俺達を見た。
「ホントだよ。じゃあトーアは兄ちゃんになりたい?弟になりたい?あ、真ん中になれば兄も弟も出来、」
「お、俺、お父さんになりたい!!」
「………、へ?」
□■□■□
「─………ハァ、ハァ、ハァ、……っハァハァ」
ハァハァ息荒くてキモいとか思わないで頂きたい。
今俺は、途轍もなくピンチなのだ。
「やっと…やっと追い詰めたぞ。神涙トーマ」
「ちょ…俺¨トーア¨ですから!トーア!─って近付くなぁ!!」
「もう我慢出来んっ!一滴…一滴でいいから貴様の体液を俺に寄越せっ!」
「ひいいぃぃっ!」
…ハイ。
今の会話で状況は理解出来たであろう。
そう、俺また丸焼きにされそうなのだ!
フツーに朝起きて、
フツーに朝飯食べて、
フツーに学校行く準備して、
フツーに登校しようとしたら、
見知らぬ人に声を掛けられた。
そこからフツーじゃなくなった。だから警戒すればよかったんだけど、西帝の白ラン着てたからお隣の生徒だって事は判ってたし、大丈夫かな〜…って。
何かあって助けてほしいのかな?って、ボランティア感覚で近付いたら、
食わせろ!!!
って叫んで飛びかかってきて。
俺は無い体力を使い逃げに逃げたが、寮の裏の林にある変な小屋の中に追い詰められちった。あははっ…。
さっきからグルグル唸ってるから、たぶんウェアウルフだろう。
俺を襲うのはいつも狼男だ。流石肉食系男子。(色んな意味で)
「神涙…トーマ」
「だから俺はトーアだって─ひいぃっ!丸焼きだけは勘弁〜〜〜っ!」
「怯える事はねぇ…お前も気持ちヨく─」
「いいのかのう?」
「いいのかのう?」
俺が死を覚悟した瞬間、第三者の声が狭い小屋内に響いた。
それは場違いな高い子供の声。…しかも二人?
ウェアウルフもキョロキョロと周りを見回し、声の正体を探す。
「ぅわっ!?」
気付いたら俺とウェアウルフの間に子供が二人立っていた。
二人は俺を見てニッコリ笑い、狼男に振り返った。
「いいのかのう?お主、約束を忘れておらぬか?」
「ヴァンパイアの次期王・紅呀知綺が皆にさせた約束じゃよ。破ったらどうなる?」
「ウェアウルフの長の次男坊は、お主をそう簡単に殺しはせんじゃろうなぁ」
「生き地獄じゃ」
「知綺はどうするかのう」
「あやつだって徹底的に苦しませてから、息の根を止めるじゃろ」
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