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東奔西走
12


声を聞いた瞬間誰だか判った俺は、嬉しさで顔を綻ばせながら足を止めて振り返る。



「っ、采華(サイカ)先輩っ!!!」


目で姿を確認する前に名前を呼んだ。



振り返った先に居たのは、細雪 采華(ササメユキ サイカ)先輩。俺の一つ上の2年生。

透き通った青い瞳に、胸辺りまで真っ直ぐに伸びた綺麗な水色っぽい銀髪。
身長は俺より三、四センチ高い、すっごい美貌の持ち主!


この学園は美形が多くて、平凡な俺なんか埋もれてしまっている。


采華先輩は男らしい美しさより女性的と言うか、中性的な美しさが先輩を神秘的に見せている。


先輩は振り返った俺に優しく笑い掛け、ゆっくりとした足取りで俺に近付いてくる。

近付いて気付いた。先輩の息が少し上がっている。俺を見掛けて走って来てくれたんだろう。



「采華先輩お久しぶりでっす」

「小さい¨つ¨要らない」


敬語がまだ下手くそだと言うソウちゃんが、素早く指摘してくる。



「………〜〜っっ、ああっ!!!燈亜君だぁっっ!!!」


暫く笑って俺を見つめていた先輩は、一瞬泣きそうに顔を歪ませてから、また直ぐ笑顔に戻って嬉しそうな声を上げて俺を抱き締めた。


校門を通過していた1年生は驚いたり、顔を赤らめていたりしている。


「あははっ!先輩だーっ」


嬉しくて俺もぎゅっと抱き締め返したら、ちゅっと言う高い音と共に柔らかいものが俺の頬っぺたに触れた気がした。


ん?


「はいはいはい。采華先輩、大勢の前でセクハラは止めて下さーーーい」


何が触れたんだ?と思った瞬間、ソウちゃんが不機嫌そうな声で抱き締め合っている俺と采華先輩を離す。


顔まで不機嫌だ。どうしたんだ?


「ふふふ。やだなぁセクハラだなんて人聞きが悪い。僕の愛しい子に愛情を示すのは当然だろう?」


ね?、と俺に同意を求めてくるが、俺は何の話をしているのか解らなくて、困って首を傾げた。


「クスッ……良かった。離れてた1年間も相変わらず無自覚だったみたいで」

「良くないですよ。俺はこの鈍感無自覚をそろそろどうにかして欲しいです。
つーかトーアは貴方のものじゃありませんから、愛情示さなくて結構です」


ソウちゃんは苛立ち気に俺の頭を撫でていた采華先輩の手を離す。


先輩達と仲良いのに、たまにこうやって不機嫌になるんだよな。ソウちゃん。



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あきゅろす。
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