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短編云々


「この付近にも町は無さそう…。今日も野宿か…。まぁ、川が近くにあるから良かったかな。」

「……。」

「はぁ…。もう、いいわよ。私の事、好きにして。」

本当に可愛く無い奴。触らせなかったのは生きた人間のいる町で怪しまれずに宿を探す為なんだろ。死臭がしてちゃ普通の人間は近寄らねぇもんな。
知ってるさ。お前が気を使って、俺を洗ったり…香を焚いて臭いをごまかしてるってことぐらい。
ただ、日が経つと死臭がきつくなる…。明らかに死んだ奴の臭いがしてくる。
そうなってきたら、俺を隣に置きづらいからな…。まともな仕事にありつけなくなる。

「どうしたの?気分、悪いんでしょう?こっちおいでよ。」

可愛く無ぇ。そう、吐き捨てて、力の限りに抱き締めた。相手は苦しそうにしているが、俺の腕の力か?死臭がきついか?どうでもいい。
コイツに触れると、全身の不快感が吹き飛ぶように消える。

俺の命…いや、この屍の身体を動かしているのはコイツの命だ。離れれば離れるほど俺の身体は不快感に悩まされる。逆に、密着すればするほど不快感は消えて快感になる。

「んっ…ちょ、まっ…て…。」

「顔の崩れた屍に弄られて感じてんのか?変態かよ。」

気分が良くなると虐めたくなる。悪い癖だとわかっていながら止められない。
唇を合わせて口腔内を味わうと、甘い。たまに、食べてしまおうかとも思う。しかしながら、コイツに向けられる欲は、食欲ではなく性欲ばかり。身体を繋げば普段の不快感を忘れられるぐらいの快感だ。…生きているとは、素晴らしい。なんて良く言ったものだ。



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あきゅろす。
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