短編云々 6 不快な音に気が付いて、目が覚めた。 それは、殴る音、叩きつけられる音。そして、途切れ途切れに弱々しい彼女の呻きが聞こえた。 もう少し、耳を澄まして聞けばよりクリアに音を聞く事はできる。だけれども、僕はそれが出来なかった。彼女から酷い仕打ちを受けていたのは聞いていたし、現に聞こえた音で確認もできた。これ以上はもう、沢山だった。 僕は体を横たえたまま、あまり音が聞こえないように耳を伏せることしかできなかった。 しばらくそれに耐えていると、音が止み、引きずる音と共に男が暗い廊下から現れた。もちろん、引きずっていたのは裸のままの彼女だった。 男は無言で彼女を牢へ放り投げると、鍵を掛けて暗がりへと消えていった。 「スス!だ、大丈夫…?」 彼女は体中、傷だらけだった。擦り傷、切り傷はもちろん、蚯蚓腫れや打撲など、殺さずに痛めつけられていたのがわかる。 慌てて彼女を抱き寄せて、布を彼女に掛けようとしたけど、彼女はそれを制止した。 「…いい。大丈夫…だから。布、傷に擦れて痛い…。それに、すぐに治るから。」 「…でも…。」 「…ほら、もう、治ってきたから…。」 彼女は肩の傷口を指差した。 驚いたことに、傷口が金色に輝いていたんだ! それは、光や炎のような明るさとしての輝きではなく、金属の光沢の輝きだった。まるで、皮膚の下から溶かした金が滲んでいるような不思議な光景。そして、みるみるうちに彼女の傷口はどんどん消えていったのだ! 「え、ええ!?すごい…。スス、君って…?」 [*前][次#] [戻る] |