短編云々 4 「これは、透明標本。薬品で筋肉を透明化させて、骨と軟骨を染色した骨格標本。綺麗でしょ?」 「……うわぁ…キレイ…。」 掴みはOK!こんな所で逃がしはしないよ。 「これは市販のものだけど、こういうのを自分で作ってるんだ。それが今の研究課題。完成したら文化祭や年末の発表会で発表する。それが生化学部の活動。」 「ふぅん…何だか難しいですね。」 「いや、これは僕がやりたいからやってるだけで、他の人はもっと簡単に飼育観察とか、植物育てたりとかしてるよ。」 僕は君の事を観察したい。 「そうなんですか…。私でも出来る、かな?」 そういえば、名前をまだ聞いていないな。 「うん。全然大丈夫だよ。僕も手伝うし、何でもやってみなくちゃね。そうだ、僕は二年の日根昇。君は?」 「私、一年の桂時満です。転校してきたばかりで、だから部活の見学にきたんです。」 都合がいいなぁ。僕の暇つぶしに付き合ってよ。君のこと、もっと知りたい。 「そっか。じゃあ、ここに入ってくれるの?」 入ってよ。逃がしたくないよ。そばに君を置いておきたいんだ。 「…はい。私、運動とか苦手で…。でも、ここなら自分のペースでやっていけそうな気がします。でも…いえ、もう少し考えたら入部を決めますね。」 欲しいなぁ。どうやって僕のものにしようかなぁ。楽しいなぁ…。 「わかった。じゃあ、期待して待ってるよ。」 マスクの下で、顔がにやけるのが止まらない。日常が楽しみになった。 [*前][次#] [戻る] |