┗紅と白と 7 「さ、これで安心です。朝になればいつも通りの白ですよ?」 ですよ?って…こっちはこんなに不安なのに。 「…そんなに、簡単に言われても不安です…」 ため息をつきながら長身の男は話す。 「…大丈夫ですって。私は何体もコクーンを見てきましたが異常事態が起きたことは一度もありません。あれは、そういう生き物なんです。安全性だって立証されていますし、本来なら鎖で縛らなくても時間が経てば元に戻ります。しかしながら、貴女のように危険を感じることもある。だから、私が来たんですから。まぁ、本当は黒くなり始めたらすぐに縛るのが正解なんですけどね…。 コクーンの脱皮が早まったということは、私の予想以上に貴女の白に対する愛情が深いということでしょう。今夜は様子を確認する為にもここにいますから。とりあえず、鼻水も拭った方が良いですよ。」 表情一つ変えずにティッシュを手渡した長身の男。話し方に少し怒りを感じるのですが…これは、心配してくれたと考えても大丈夫かな? 「…ありがとうございます……ズルル!」 その後、私はいつの間にか寝てしまったらしく、朝になると長身の男は部屋から姿を消していた。 慌ててお風呂を覗くと、そこにはいつも通りの真っ白な白がいた。 「う〜…べにこぉ〜。」 「う…、今からほどいてあげるから!」 お風呂場に転がるシロは困り顔で私の名前を呼んでくれた。 …しっかし、脱皮の名残というのか…お風呂場が黒いタールみたいなもので真っ黒だった…。 「べにこぉ!すき!」 鎖を解いた瞬間に抱きつくシロ。包まれるムスクの香り。 私、やっぱりシロが好き。シロがシロじゃなくなったり居なくなったりしたらもう、駄目だ…。 シロからの愛もシロへの愛も確認出来た出来事だった。 だけど、お風呂場のタール状の謎の物質をキレイに掃除するのに二時間半掛かったので、脱皮はもう懲り懲り。そう思いました! .end *前へ [戻る] |